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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

明石家さんまさんにプレゼンするより怖いものはない(ゲスト:角田陽一郎)【前編】

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「オトナの!」は局から予算をもらわずに制作する番組

澤本:さんまさんの番組はそういうのが多いですよね。「からくりTV」とかもそうですしね。

角田:からくりビデオレターは地方で撮ってくるんですけど、あと15分で撮らないと放送に間に合わない!みたいなことをよくやっていました。でもね、その15分で撮ったメッセージこそ、一番面白いものが撮れるんですよ。だから、一般の出演者の方にもちょっと煽るんです。「すみません、おばあちゃん、あと15分で飛行機に乗らないと帰れなくなっちゃうんです」って(笑)。その収録現場での緊張感が高まるほど、笑いの神様が降ってくる確率が高いということをどこかで学んじゃって。

澤本:なるほど。

角田:その緊張感で、想定外のセリフが出てきて、圧倒的に面白くなる。ただ、これは弊害もあって、一回これを身につけちゃうとギリギリまでやらなくなります。

一同:

角田:ギリギリまでやらないほうがむしろ面白いんだみたいな。「オトナの!」のキャスティングは前々日ぐらいに決まったりします。3日前なのに決まってないことがあって、僕はプロデューサーとして、そういうときこそわざと大物を狙うんです。大物じゃない方だと、決まるまでに時間がかかるけど、大物の方はその方が出ると言えばOKなので。

中村:なるほど。そういうことをやっていくと降りてきやすいんですか?神様みたいなものが。

角田:降りてきやすいですね。たとえば、ラジオを聴いているとします。すると、ちょうどイラストレーターの中村佑介さんがイラスト展示をやっていますみたいな情報が流れたりするんですよ。展示をやっているということは番組宣伝でご出演いただけるのでは、ということで問い合わせると、先方も出たいと思っていたらしくて、ちょうどピタッとはまるとか。

澤本:「オトナの!」はラジオっぽいですよね。きちんと決まっている感じではなくて、ハプニングっぽく。対談も言いたいことを全部言ってますしね(笑)。言っちゃいけないことないんじゃないかっていうぐらいに。

中村:そもそもどういうコンセプトの番組なんですか?

角田:これはTBSテレビからお金をもらわないでつくっている番組なんです。通常、プロデューサーはTBSから予算をもらって、その予算内で赤字にしないようにやっていくんですが、この番組には赤字という概念がないんです。

スポンサーさんのところに行ったりして、自分でお金を儲けてきてやるという感じなので。普通、予算は、ラジオは聴取率、TVは視聴率と直結しています。視聴率をとらないと予算が出てこない。ところがうちの番組は視聴率をとる、とらないに関わらず、スポンサーさんと協議して、スポンサーさんから制作費を獲得してつくっている番組なので、究極的には視聴率を気にしなくても番組がつくれるんです。

澤本:それはすごいことですよね。

角田:このシステムでつくっている番組は多分民放キー局で僕らだけだと思います。通常の番組は「この人が出ると視聴率取れそう」「今この人が話題」という方を1~2週間に一度定例会議をやってキャスティングをします。でも、僕らの番組はそういう決め方を一切しない。この人に会いたい、この人は天才だ、子どもの頃から好きだったとか、そういう人しか出さないって決めています。

中村:面白い方法ですね。

角田:一番いい例はミュージシャンの曽我部恵一さんに2014年2月に出ていただいたんですけど、うちの女性ディレクターが結婚して、妊娠して、間もなくディレクターをできなくなるから、最後に私の夢を叶えてくださいと。学生時代から好きだった曽我部恵一さんに出ていただきたいという思いだけで出演していただくと。

一同:へー!

角田:その女性ディレクターは曽我部恵一さんのことを日本で10本の指に入るぐらい詳しいわけです。そんな思いで番組をつくるから、どんなトークをしたらいいかとか、視聴率で選んだ人よりもよほど面白いトークが拾えます。だから、どの番組よりも熱く曽我部恵一さんが話せる番組になります。テクニックというより思いだけでつくっている番組ですね。

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