3、長い動画は見られないという前提に立っているか
ご承知のとおり、動画は短ければ短いほうが見てもらいやすくなります。ただ、商品の使い方などは、必要なことを伝えるには長めの時間がかかってしまうこともあります。
お客さんが自分で貼る壁紙を扱う「壁紙屋本舗」では、壁紙の貼り方を解説した各種コンテンツがアップされています。お客さんは、「えっ?壁紙って自分で貼れるの?」という人から「実際に壁紙が届いたので詳しく細部まで見たい」という人まで様々です。そこで細部まで分かる動画をつくったところ、20分になりました。それだと長いという人のために、5分のショートバージョンをつくり、さらに「自分でも貼れるの?」と興味を持ってくれたばかりの人に見てもらいやすいように、40秒のダイジェスト版を用意しました。これは「早回し」風のつくりになっているものです。まずは短いものを見てもらい、それで興味が高まったら長いバージョンを見てもらうという「接客設計図」の視点は参考になります。
4、作り手の「熱」が伝わるか
動画に限らず、コンテンツで誰かを魅了する秘訣は、「熱のこもった深く濃いコンテンツを、常軌を逸して発信し続けること」です。
動画に関して言えば、クラウドファンディングのプロジェクトではページトップに動画があるほうが、成功確率は高くなる傾向があります。そもそも動画があるだけで、ないものに比べると「プロジェクトオーナー(チャレンジャー)の本気度が高いのだな」と分かるからです。
さらに、プロジェクトオーナーが語る姿を見ることで共感しやすくなったり、「この人なら信用できそう」と思いやすくなったりします。
通常のEコマースの場合でも、「熱の伝導」がキモなのは変わりません。
「しげとし珈琲」では、おいしいコーヒーの淹れ方に関する動画が何通りもアップされています。中でも個人的にオススメなのが、「本気でおいしいアイスコーヒーの作り方」という動画。カクテル用のシェーカーを使うという珍しさもありながら、本当においしいのです。私がその動画をFacebookで紹介したところ、早速実践した人たちが「本当においしかった!」とコメントしていました。
動画を見た人が「やってみたくなって、実際にやってみて、ハッピーになれる体験をする」というのは、大きな価値を提供しているといえます。そのような体験をさせてくれる作り手に対しては、興味と信頼が芽生え、そこからコミュニケーション量が増えていくうちに、「この商品を買うなら、この店しかあり得ないでしょ!」という関係性ができあがります。
このように動画を活用して「違い」を生み出し、共感者や仲間を増やすことができる人や企業にとっては面白い時代になっています。
仲山進也(なかやま・しんや)
楽天大学学長
仲山考材 代表取締役
「次世代ECアイデアジャングル」主宰
慶應義塾大学卒業後、シャープを経て、1999年に社員約20名の楽天へ。初代ECコンサルタントであり、楽天市場の最古参スタッフ。2000年に「楽天大学」を設立、楽天市場出店者4万1000社の成長パートナーとして活動中。企業の価値づくり、チーム作りに関する新著『あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか 13のコラボ事例に学ぶ「共創価値の作り方」』(宣伝会議)が9月1日に発売。
新刊『あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか
13のコラボ事例に学ぶ「共創価値のつくり方」 』発売中!
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