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仕事よりも子どもが大事、だけど遅くまで働く—博報堂クリエイティブ・ヴォックス 太田麻衣子さんインタビュー

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【前回記事】「フリーのCMディレクターが考える「母親として働くこと」—舟越響子さん インタビュー Vol.2」はこちら

クリエイティブを一生の仕事にしたいと考える人に、今後のキャリアを支援するプロジェクト「しゅふクリ・ママクリ」。今回のインタビューは、博報堂クリエイティブ・ヴォックス代表取締役社長の太田麻衣子さん。「仕事よりも子どものほうが大事なのは明らか」と断言する太田さんが、それでも出産後に夜遅くまで仕事をしていた時の心情や周囲のサポートについて語った。

子どもの方が大事なのは明らか

——入社したての頃から出産前後までのワークスタイルを教えてください。

私は1987年、男女雇用機会均等法が施行された翌年に博報堂に入社しました。今は博報堂クリエイティブ・ヴォックス所属です。博報堂にはコピーライターとして入社し、ラジオCMやテレビCMを手がけるようになりました。当時はインターネットもない時代で、コンテを切るのもすべて手作業でしたね。

最近のお仕事 ポカリスエット「夏の親子」篇

その後結婚して、30歳の時に娘を生み、1年間の育休を取得しました。男女雇用機会均等法が施行されてすぐの世代だったので、「出産・育休を経て復帰する人」といったモデルケースを社内で見る機会はあまりありませんでした。ただ、子育てだけの生活ではなく、「働いて収入がある状態ではありたい」と思っていたので、当然のように育休後は仕事に復帰しようと思っていました。

復帰して嬉しかったのは、私の復帰を待ってくれている人たちが、オフィス内に席を用意してくれていたことです。会社としてもきちんと席を用意してくれていたのですが、他にも私の席を勝手につくってくれている人までいて、本当に嬉しかったです。

そうして期待されて働きはじめると、やはり帰宅は遅くなります。「子どもがいるから早く帰る」ということに、どこか自分の中でスッキリしないものがあり、周囲の人が「早く帰った方がいいよ」と促してくれても「大丈夫です」と言って仕事をしていました。

——子どもは保育園に預けていたのですか。

はい。最長22時まで預かってもらえる無認可の保育園に入れていました。さすがにその時間まで預けることは無かったのですが、19時や20時に迎えに行き、帰って寝かせてからまた会社に行かなければならないこともある生活で、子どもとしては、起きた時にママがいないということが何度かあって、寂しい思いをさせたかもしれません。

育休からの復帰後も働き方は基本的に変わりませんでした。夜の会合にも行きましたね。とはいえ、仕事ばかりを優先していたという訳ではありません。早く帰れるときは帰っていましたし、仕事よりも子どもの方が大事なのは明らかです。ただ、それでも仕事を優先すると決めたこともあります。そういう時は、自分で納得するためにも良い仕事をしなければと思っていました。そうしないと仕事をする意味を見失ってしまいます。

周りの助けと自分のミッション

——他にも、周囲の人からのサポートはありましたか。

子どもが小さい時は、本当にいろいろな人に助けてもらいました。ベビーシッターを頼むこともありましたが、保育園のお迎えを、客室乗務員をしているママ友に助けてもらうこともありました。私のお迎えが遅くなると「連れて帰ってご飯も食べさせたし、明日まで預かるよ」と言ってくれて。そうは言っても、きちんとその日中に迎えに行きましたけどね。困っていると助けてくれる人が出てきてくれるものです。

ただ、何と言っても一番助けてもらったのは私の母です。当時、母は私の地元である富山に住んでいたのですが、私が仕事で手一杯になると上京してもらい、しばらく東京にいてもらうこともありました。

母は東京へ来ることが楽しかったようで、私も身内なので安心して頼める、ということもあり、双方にとって良い関係でした。父は富山でほったらかしにされていましたが(笑)

10年ほど前に父も仕事を引退し、母が東京に来ている間は父が1人で寂しいのでは、という話になり、うちの娘から「一緒の方が楽しいよ」と手紙で誘ってもらい、両親も東京で暮らすことになりました。

みんなが集まって、助け合って暮らしていけば何とかなると思っています。今もみんなで楽しく暮らしていますよ。

——家事はどうしていましたか。

夜は遅くなることが多いので、子どもが小さい時から、晩ご飯を一緒に食べることはほとんどできませんでした。そのかわり、週末は家族みんなで食べるようにしています。

2014年、家族3人で川下り!

また、ご飯は毎朝3食分作ることをミッションとしていましたね。中学と高校はお弁当があったので、朝ご飯とお弁当、晩ご飯を同時に、同じメニューで作りました。朝はできたての暖かいご飯を食べて、昼はお弁当箱で、夜は電子レンジで温め直してという3種類の食べ方です(笑)

娘も晩ご飯については、私がいないことにすっかり慣れています。その代わりという訳ではないのですが、早く帰ったときはたくさん話したり、同じテレビ番組を見たり、とにかく一緒に過ごす時間を作るようにしています。お風呂は今も一緒に入っていて、ガールズトークをします。私に「母として」というか「人として」もっとしっかりして欲しいみたいで、「社会人なんだから、そういうことは先に言おうよ」とか「いい大人なんだからちゃんとして」と、娘によく怒られています。

続きは、『しゅふクリ・ママクリ』「会えない時間が長いからこそ」へ続く

太田 麻衣子(おおた・まいこ)
クリエイティブディレクター。博報堂クリエイティブ・ヴォックス代表取締役社長。コピーライター、CMプランナー、クリエイティブディレクターとして広告制作を本業としながら、 出版・TV企画制作の仕事にも携わる。 TBSのミニドラマ「階段のうた」の脚本を担当し、2012年度のギャラクシー賞を受賞。著書「きいてアロエリーナきいてマルゲリータ」(小学館)「8月のキリンノート」(小学館) 「Bath Views」(TOTO出版)など。