コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

TBWA\HAKUHODO中村彩子に聞いてみた 「広告会社プランナー、入社4年目の今、思うこと」

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【前回のコラム】「電通・CMプランナー9年目の佐藤雄介に聞いてみた「これからテレビCMができることって、何だろう?」」はこちら

気鋭のクリエイターやメディア業界の人たちは、今とこれからの広告やメディアについてどう考えているの? ACCならではの視点で、これからの広告のカタチについてお聞きしていくシリーズ企画「ACCプレミアムトーク」。今回は、先日ACCのラジオCM部門U-29を受賞した、気鋭の若手女子クリエイター TBWA\HAKUHODOの中村彩子さんに、「U-29クリエイター」の現場の本音について、お話を伺ってみました。

(聞き手・文:博報堂ケトル 原利彦)

——この度はACC2015 ラジオCM部門U-29受賞おめでとうございます。

TBWA\HAKUHODO 中村彩子 氏

中村:こちらこそ、恐縮です!

——今回は、U-29広告会社クリエイターの代表として、中村彩子さんに、今現在、広告業界の現場で思うことや、本音をピュアに語っていただこうと思っております。

中村:いや…私がそんな大役を務めていいのか(汗)。でも、頑張ります。不安ですが、何でも聞いてください!

——承知しました。では、まず最初に、中村さんの現在にいたるご経歴を伺ってもよいですか?

中村:はい。私は高校までは普通に横浜に住んでいたんですが、大学からはカリフォルニアの大学に行ってたんですよ。

——何の縁もないのに、突然、アメリカの大学受験ですか。無茶しましたね。それはまた、何故?

中村:私、もともと絵を描くのが好きだったので、ぼんやり「美大に行きたいな」、とは思っていたんですよ。一方、そんな高校生の頃にたまたま『アルマゲドン』っていうハリウッド映画を観て「何だか、英語話せるとカッコ良いぞ!」って突然、影響受けちゃって。

——英語話せると、もしかしたら地球救えるんじゃないかって(笑)!?

中村:そう(笑)。それで、美術を学ぼうか、英語を学ぼうか、どうしようかなって迷っているときに、たまたま「アメリカの大学に留学しませんか?」ってDMが来たんですよ。それで「これだ!」と思って。アメリカの美大に受験してそのまま進学しちゃいました。

そこでイラストレーションを5年半専攻し、就職をどうしようか・・・って考えるタイミングを迎えた時に、私は日本の広告会社に就職したい、って思ったんです。イラストだけを仕事にしたい、とも思わなくて、広くモノづくりや企画に携われる仕事ってないかな、って思っていろいろ調べているうちに日本の広告会社っていう選択肢は魅力的だぞ、と思いまして。結果、幸運にも博報堂から内定をいただくことができました。

——博報堂に入社してからは、どのような仕事をなされてたんですか?って、でもよく考えたら中村さんは入社4年目ということなので、まだつい最近の話ですね。

中村:そうですね。TBWA\HAKUHODOに来たのが2015年の5月なので、つい最近まで博報堂のクリエイティブチームに所属していました。

私が最初に入ったのは博報堂の塩崎チームです。CMプランナーでクリエイティブディレクターの塩崎秀彦さんがリーダーを務めるチームで、私はコピーライターとして配属されました。今思うと、そこがまた今どき珍しいほどのストイックなクリエイティブチームでして。

業界全体が「これからはデジタルで360度だ!」みたいなムードのなか、粛々とCM制作を極める、いわば職人集団でしたね。当然、私はそのなかの一番下っ端として、コンテとコピーを書き続ける日々です。

——なるほど。でも、同期や後輩が「インタラクティブな広告アウトプットで賞獲った!」とか、「こんなバイラルキャンペーンを仕掛けた!」とか派手なことを言っているときに、そんなトラディショナルな職人集団の一員として働く日々に不安を覚えませんでしたか?

中村:そう、そういう声がいろいろ入ってくるんですよ。でも、私は逆に、今のCM一本で集中してやる環境に打ち込ませてほしい、と思ってましたね。もともと、机の前に座って一つのことだけを取り組むのが性に合ってるんですよ。あと、もう目の前のことをやるしか余裕がなくって。だからそういった同世代の人たちの活躍の声が入るたびに「私に雑念を入れないで。放っておいて!」って思いながら、ただ黙々とコンテを描いてました。

——そして中村さんは今年5月、TBWA\HAKUHODOに異動になったわけですね。では、そんなアメリカの大学→博報堂→TBWA\HAKUHODOと、渡り歩いてきた中村さんに早速、いろいろとご質問させてください。

中村さんが思う「できる広告会社の営業」ってどんな人ですか?

中村:そうですね…(しばし沈黙の後に)

良い意味で、クリエイティブディレクターに気を遣わず対等に話せる営業さんが、良い営業さんだと思います。

——面白いですね。もっと詳しくお聞かせいただいてもいいでしょうか?

中村:私、最初に博報堂に入った時にちょっとビックリしたんですよ。「CD(クリエイティブディレクター)ってこんなに偉いんだ!?」って(笑)。だって、マーケティングスタッフの考えた戦略や、他のSPスタッフの考えた店頭施策なども、最終的にはCDが全部、会議で仕切って決めていきますよね。

CDはチームの総監督であり、指し示すことが役割なので、当然と言えば当然の話なんですが、しかし一方、結局お買い上げいただくのはクライアントであるはず。そして、そのクライアントの気持ちを一番理解しているのって、日々密に接している広告会社の営業さんだと思うんですよ。

だから営業さんがCDに遠慮したり萎縮していては、良い着地にならないって思うんです。むしろ、営業さんが一番堂々としているくらいのほうが、安心して仕事できるかもしれません。

——僕自身、博報堂の営業出身なので、とても深く納得できます。

ちなみに、そんな営業さんとCDが仕切っていく会議で、中村さんが思う「良い会議」は、どんな会議でしょうか?

中村:ううーん。これが「良い会議」のスタイルとは、はっきりとは言えないのですが、私は、短い時間で、あらかじめゴールに向けて回数を決めてから進めていく会議スタイルが好きですね。

長時間の会議だと、その場にいる皆でコピーやコンテを考えだすことが、たまにありますよね。私、それが苦手なんですよ。その場で「面白いことを言え!」って言われているような気がして(笑)。

そんな時はもう、一回解散しちゃって、一人一人がアイデアを考えて、それでもう一回集まったほうが効率的だと思うんですよね。って、きっと、私が一人で黙々と考える方が好きな性分だからでしょうね。

——そして、では中村さんが思うところの「良いCD」とは、どんなCDだと思いますか?

中村:「決めてくれる」CDですね。ある程度、皆から意見やアイデアを引き出せたら、後は最終的なジャッジを引き受ける役割がCDだと思うんです。

決める作業を大勢でやっても効率が悪いし、最後の判断をバシッと決めてくれるCDが良いです。正解なんて、最後まで誰にもわからない仕事ですから。あ、もちろんCDにもいろんなスタイルの人がいると思うので、これはあくまで私の見解ですよ(笑)。

——しかし、そんな中村さんも、この度ACCでU-29の賞を受賞し、TBWA\HAKUHODOのクリエイティブに異動して間もないタイミングですよね。これからますます仕事が面白くなる頃かと思いますが、それでは最後に、中村さんのこれからの野望をお聞かせいただいても良いでしょうか!

中村:私がいるTBWA\HAKUHODOでは、一分野に偏らない全方位型のクリエイターであることが特に重要視されています。でも、自分としては、まずはCM一本を極めて軸として持つクリエイターになりたい、と考えています。

今、自分を呼んでくれているCDやクライアントは、自分にCMプラニングを期待して必要としてくれていると思うんですよね。だから、まずは、その期待に応えないとな、と。

そして、CMという自分の軸を揺るがないものにした後に、新しい領域にトライしていきたいですね。

と、言いつつ、これまでの人生でも自分は毎度、楽しそうな方に流れてきたタイプなので、10年後の自分がどうなっているかは見当もつかないですけれども!

中村彩子(なかむら・さいこ)
2012年博報堂入社。2015年TBWA\HAKUHODO Disruption Labクリエイティブチームへ配属。博報堂時代から飲料、保険、出版、ゲーム、トイレタリーなど幅広い分野を手がける。TBWA\HAKUHODOへ配属後は日産自動車「”やっちゃえ”NISSAN」などを担当。国際感覚を活かしながらのプランニングが強み。好きな食べ物は、生肉、米。趣味は、樹脂粘土で食品サンプル作り。

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