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【参加者レポート】これからのエージェンシーに必要なのは「マネジメント・アイデア」

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「宣伝会議」12月号(11月1日発売)に、ニューヨーク視察研修ツアーのレポートを掲載します。視察から見えてきた米国広告ビジネスの今、そして日本の広告界がめざすべき方向性を5つのキーワードで捉えます。こちらも、ぜひご覧ください。
デルフィス トータルプランニング室 室長 朝岡 幹雄 氏
2002年、デルフィス入社。新型車広告キャンペーンの戦略立案から販売店インナー教育まで、トヨタ自動車のマーケティング業務を川上から川下まで手がける。

視察研修ツアー参加の目的——出発前は、自分自身のスキルアップの糸口を探すことだと考えていた。きっと、訪問する各エージェンシーの方々から最新のキャンペーン事例や苦労話を聞くことで、たくさんの刺激を受けるのだろうな、と。しかし、ニューヨークで過ごした一週間で、その思いは良い意味でまったく裏切られた。

日々、我々広告マンは、斬新な「クリエイティブ・アイデア」や、売上に貢献する「プロモーション・アイデア」を、汗と涙にまみれながら考えているのだけれど、今回の視察研修を通じて、あることを確信した。

それは、社員個々人が良質なアイデアを生むためには、その土壌となる社内環境づくり、いわば「マネジメント・アイデア」が極めて重要だということ。すなわち、マネジメントレイヤーがアイデアに溢れていてこそ、クライアントに対して素晴らしいパフォーマンスを発揮できるのだ。

印象的だったのは、TBWAにおけるCDO(チーフ・ダイバーシティ・オフィサー)というポストの存在。あえて多様な人種・価値観を融合させた組織づくりを促進することで、より質の高いクリエイティビィティを発揮できる環境をつくっている。CSRの観点もあると思うが、米国ならではの先進的な取り組みだと感じた。

TBWA\WorldwideのCDO、Douglas Melville氏。

また、GREYは「企業文化こそがクリエイティビティの源泉」と明言。毎週木曜の午前中は打ち合わせを禁止して社員一人ひとりのインプットを促すルールや、会社に対して疑問や要望を投げかける「ASK GREY」という制度など、職場を自由でオープンな環境にしていく仕組みが随所に見られた。

GREYニューヨーク本社社長で、ワールドワイド CCOを務めるTor Myhren氏。「企業文化こそがクリエイティビティの源泉」と言い、社員一人ひとりのクリエイティビティを最大化するためのルール・制度について紹介した。

そして何より、今回訪問した企業に共通していたのは、遊び心とアイデアに溢れたオフィス環境だ。まずは自分たちが楽しく仕事をするというマインドこそ、良質なアイデアの源泉だろう。

また、もう一つの共通項として、どのエージェンシーも「企業理念」を大変重視していることが挙げられる。私の感覚では、事業会社に比べ、広告会社は自社の明確なポリシーが希薄な印象があるが、米国のエージェンシーでは、クライアントに対する提供価値を明確に定義しており、人材代謝が激しい業界でも、企業文化や思考指針が定着している様子がうかがえた。

訪問企業の一部。ストックフォトサービスのShutterstock(写真左)と、トレンド予測サービスのWGSN(写真右)。多くの企業が明確な理念やビジョン、行動指針を掲げ、それを全社員に浸透させることを重視していた。

このように、思いのほかマネジメントレイヤーの刺激が多く、自分の視点を一段高くすることのできた、大変有意義な視察研修であった。