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グラフィックデザイナーからUXデザイナーに転向した三児の母―博報堂アイ・スタジオ 白石葵さん

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【前回記事】「40代で出産、ベテランコピーライターで新米ママの本音—アサツー ディ・ケイ 神戸海知代さん」はこちら

クリエイティブを一生の仕事にしたいと考える人に、今後のキャリアを支援するプロジェクト「しゅふクリ・ママクリ」。今回のゲストは、デジタルクリエイティブで数々の実績をもつ博報堂アイ・スタジオのUXデザイナー 白石葵さんだ。現在は、双子の長女・次女と、長男を育てる3児の母。多忙を極める白石さんの出産までの道のりを聞いた。

グラフィックデザイナーからWebの世界へ

——これまでのキャリアを教えて下さい。

まず、私が博報堂アイ・スタジオに入社したのは2003年9月です。学生時代は工業デザインの分野で視覚伝達デザインや人間工学を学び、その後、グラフィックデザイナーとして印刷関連の仕事に就きました。Webの世界に飛び込もうと思ったのは、構造やユーザビリティが大きく関わってくるWebの方が、自分の強みが活かせると思ったからです。大学時代に、使い勝手の良いデザインやコミュニケーションについて勉強していたので、役に立つかもしれないと。

当社ではインフォメーションデザインという、視覚的にカッコイイだけでなく、ユーザーの使い勝手がよくなるデザインも考えていく「情報デザイン部」という部署が2005年に立ち上がりました。その部署に異動してからは、インフォメーションデザインを勉強する比率が増えましたね。

博報堂アイ・スタジオのUXデザイナー 白石葵さん

とはいえ、使いやすいデザインについて本格的に専門性を高めようと思ったのは出産後です。育児をしながら、となると勤務時間は当然短くなります。そんな中で「あの人に仕事を頼みたい」と思われるためには、今までより専門性を突出させて、「自分にはこれができる」という「看板」がないと駄目だろう、と思いました。

——情報デザイン部では具体的にどんなことをするのでしょうか。

分かりやすい例を出すなら、ユーザーテストですね。これは、コンピュータを操作する時の画面表示や言葉などの表現による操作感・UI(ユーザーインターフェイス)を改善するために行う作業です。具体的には、ターゲットに近い人にアプリやサイトを使ってもらい、それをビデオ撮影して、何が使いやすい(または使いにくい)のか、どこに問題があるのか、といったことを洗い出しています。以前はこのテストをするコストが高かったため、クライアントも尻込みしてしまい、本当に有益な提案ができないこともありました。

今ではオンラインですぐにテストをすることができるので、コストが下がりましたね。サイトのリニューアルに際しても、テストの結果を元に、実際のユーザーの行動に基づいた提案ができるようになりました。

現在、私は昨年新設された「データドリブンクリエイティブ部」という部署にUXデザイナーとして所属していますが、ここではデータに基づいたアウトプットをするため、先ほどのユーザーテストだけではなく、アクセスログ解析や聞き取り調査など、定量的なデータと定性的なデータを合わせてWeb戦略の立案や設計、サイトの改善課題を見つける業務を行っています。

バックオフィスからクリエイティブに戻れたきっかけ

——結婚と出産、復職までの経緯を教えてください。

結婚する以前からずっと、子どもは欲しいと思っていました。ただ、仕事とのバランスもあり、簡単に出産へ踏み出せたわけではありませんでした。2007年に双子を授かり、そのタイミングで34歳の時に結婚しました。

しかしその後、切迫早産のため2ヶ月半入院し、出産後は24時間必ずどちらかが泣いているという双子の育児に、心身ともに疲弊していました。長女・次女が9ヶ月のときに復職を決めたのですが、もう今までのような働き方はできないと、すっかり腹をくくっていました。お客様の要望に100%答えられないならプロとして失格だ、と思っていましたから。クリエイティブの仕事を一切諦めたいと会社に掛け合ったところ、バックオフィスである広報の仕事に就かせてもらうことになりました。

ところが広報として復職してからも、ありがたいことに制作陣の方から「こんなことできないか」と、たくさん声をかけていただけたのです。そこで、試しに広報をしながらお手伝いをしていたところ、案外できてしまって。「みんながサポートしてくれるから、私はまだやれる」「以前よりも効果効率を考えて動くことができている!」と気付けたのです。どうせやるなら全力でやりたい、と、クリエイティブに戻ることを決めました。

職場で産休に対するネガティブな風当たりを感じることも無く、その後1年経たないうちに再度産休に入り、長男を出産しました。そのため、先に生まれた双子の長女・次女たちとは1歳半しか離れていません。一緒に働いているスタッフの方々には、いつもやさしく気遣っていただいて、本当に助けられていますね。

会社の制度にも支えられています。博報堂アイ・スタジオでは、子どもが病気になった時に取れるお休みなどが充実していて、小学生未満の子どもが2人以上いたら10日間、1人だと5日間もらえます。私は勤続年数が長く、有給休暇も多い方だと思うのですが、子どものトラブルがあると、有給も足りなくなってしまうのでありがたい制度です。

続きは、『しゅふクリ・ママクリ』「「双子の子育て」へ続く」へ続く


白石葵
大学では工業デザインを専攻、視覚伝達デザインや人間工学を学ぶ。 印刷会社に入社し、グラフィックデザイナーとして働き始めたが、インターネットの可能性を感じ、知り合いの会社でWeb制作部門を立ち上げる。その後、一社を経て、博報堂アイ・スタジオにWebデザイナーとして入社。IAとして調査分析や情報設計などを手がける。双子出産により育児休業するも、その後広報室を経て、クリエイティブ職に復帰。UXデザイナーとして調査分析や情報設計などを手がける。
●日本人間工学会認定 人間工学専門家
●HCD-Net認定 人間中心設計専門家
●WACA 上級ウェブ解析士