メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

はあちゅうに聞いてみた「電通からITベンチャーに転職して、一番ビックリしたことはなんですか?」

share

——しかし、大手の広告会社に入ってくる人って、それなりに一人ひとりは相当、優秀で合理的な考えの持ち主なはずですよ。だから、効率的に物事を進めていく適性は、きっとあるはずなんです。はあちゅうさんからみて、その2つの業界の意識の違いが生まれる理由って何だと思いますか?

はあちゅう:そうですね…。大きくは、2つあると思います。

1つは、会社の規模があまりにも大きいため、部署や職種が細分化していますよね。だから、自分のお給料が、どの仕事から、誰からもらえているのか、なかなか意識しにくくなってしまっていると思うんですよ。だって、コピーライターやデザイナーからすれば、金を稼ぐ役割は営業さんであって、自分たちはお金を稼がなくても毎月、給料もらえるぞ、っていう意識の人も、いまだにいると思いますよ。これがベンチャー企業だと、せいぜい数十人の社員数なので、全員が稼ぎにいかないと自分のお給料が出ない。

——確かに、電通や博報堂のような大手の広告会社だと神輿の担ぎ手が数千人いますからね。そうなると、自分が担がなくても誰かが担いでくれるでしょ? っていう油断は生じますよね。いわゆる大企業病っていうやつなのかな。

あともう一つは何でしょう?

はあちゅう:個人の評価と、モチベーション維持の仕組みが、全然違いますね。

誤解を恐れずに言うと、広告業界だと、若手のクリエイターが優れたアイデアやコピー、デザインを打ち合わせで出して、それが世の中に出た時に、最終的にはそのチームのCDの手柄になっちゃっていることが多いんですよ。スタッフロールに名前が載ってると言えば載ってるんですけど、世の中的には、リーダーのクリエイターの名前しか出なくて「師匠がいいんだな」みたいな評価で。

これが、ITベンチャーだと、社内の上下関係とか関係なく、「やった人」が純粋に偉い、って評価される仕組みがある。例えばトレンダーズだと、月間のMVPとか、営業成績1位っていうのが、ちゃんと毎月発表されて、若手のモチベーションアップの制度がわかりやす過ぎるくらいありました。もちろん、個人として上手く行かなかったときのリスクも背負うのですが、上手くいったときは、その人の手柄になる、という個人としての成果と評価の比例関係が明快でしたね。

とにかく、広告業界で働く人と、ITベンチャーで働く人の違いは、一人一人の仕事に関する当事者意識が違うと感じました。

——なるほど…はあちゅうさんがおっしゃることは、広告業界にいる僕としては“あるある”の連続なんですが、よく考えてみると、これって一般のビジネス業界では、全部当たり前の話ですなあ…。

今後、アドパーソンが他業界への転職も含めて、“ツブシ”を利かすためにも、最後にこれだけを気をつけておいたほうがいい、という転職のセンパイとしてご意見いただいてもいいでしょうか!?

はあちゅう:まず最低限、自分が今やっている仕事が、世の中的にいくらのバリューがあるのか、いくらで値付けできるのか、そもそも、本当に意味がある仕事なのか。それは日々意識したほうがいいと思います。

これは、友人の話なのですが、とある電通出身のクリエイターに仕事をお願いして「請求書をお願いします」って言ったら、その人、もういい年なのに請求書作れなかったらしいんです。たぶん、これまでは全部、営業さん任せだったんでしょうね。

でも、いろんな業界の人と接してわかったんですけど、広告業界の人はおしなべて、基本的に礼儀正しいし、対人能力は抜群に高いと思います。人としての地力が鍛えられている。個人個人の基本能力は高いんです。

——そりゃ、皆さん日々、クライアントの無茶ぶりとも言えるオーダーに対応してますから、鍛えられてますよね(笑)。しかし、こういった人としての地力って、なかなか頑張っても身につかないけど、ビジネス業界で誰もができている作法やスキルって習得しようと思えばすぐに身につけられそうですよね。それだけで、自分の市場価値が上がるし、同じ広告村の中でも、他の同僚と差別化できる。

はあちゅう:そうなんです。広告業界のクリエイターの人たちの中には、なぜか、打ち合わせの時間や予算にルーズだったり、電話やメールでなかなか捕まらない人を、ある種「カッコいい」と思っちゃう変な文化ありますよね。あれ、広告村から出たら、全然カッコよくないです。ただのダメな人ですよ。

だから、世の中の広告業界の人達は個人としては皆優秀なので、そんな“広告村”の常識を捨てて、ビジネスマンとしての当たり前の意識さえ習得すれば、すぐに自分の価値を上げられると思うんです。逆に言うと、もったいないなあ、とも思いますね。



はあちゅう
ブロガー・作家

慶應義塾大学法学部政治学科卒。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、女子大生カリスマブロガーと呼ばれるかたわら、レストラン、手帳、イベントをプロデュースするなど、幅広く活動。2009年電通入社後、中部支社勤務を経て、クリエーティブ局コピーライターに。2011年12月に転職し、トレンダーズで美容サービス、動画サービスに関わる。2014年9月からフリーで活動中。2015年4月から日テレ「スッキリ!!」火曜レギュラーコメンテーターに。


「電通」に関連する記事はこちら
「はあちゅうさん」に関連する記事はこちら

「「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】」バックナンバー