——11月にスタートした「鶴屋ラララ大学」とは?
岸:鶴屋の従業員は日々の業務で、担当している商品や分野について専門知識を深めていきます。気がつくと、その商品のことが好きになっていて、好きだからこそ、より詳しくなっていくわけです。僕も現場の方と話すたびに、その博識に感心させられます。でも、こうした知識は残念ながら売場で話すと、セールストークとも受け取られてしまいます。お客さまにとって役に立つ情報であるにも関わらず、です。もったいないわけです。だったらいっそ売り場ではなく、講義としてお客さまに届けてはどうだろう。そんな発想から生まれたのが「鶴屋ラララ大学」です。従業員が先生。お客さまが生徒の大学です。クリックひとつでものが買える時代、「何を買うか」よりも「誰から買うのか」が大切になります。鶴屋という百貨店の価値は「人」にあることを、鶴屋ラララ大学を通じて体現しようとしているのです。このプロジェクト、注目すべきは「講師をやりたい」と社員自らが立候補して成立していることです。もちろん教壇に立つまでは猛特訓ですが、そんな講義は、お客さまから大好評をいただいています。
久我:「進んで組織の先頭に立とう」という気運は4年前の鶴屋には皆無でしたから、社内のムードが大きく変わってきているのを感じます。失敗を恐れず進んでチャレンジし、もし失敗してもそれを乗り越える。社員にはそういう経験を積んでもらえたらと思います。その積み重ねが新しい鶴屋をつくっていくと思うのです。
経営とは、企業文化そのもの。ですから、企業文化をつくる要を担っている岸さんは、私にとって「経営の一部」だと思っています。
岸:ありがとうございます。大変光栄です。「鶴屋ラララ大学」は、4年にわたって組んできた企業風土づくり、すなわち「人」づくりがベースにあるものですから、もし他社が真似しようとしても、一朝一夕にはできないと思っています。
久我:鶴屋が誇るべき文化の一つに、「社員が勤勉である、非常によく働く」ということがあります。社員が日々まっすぐに業務に臨むことこそが、ブランディングにつながっているのだとも思います。
岸:プロジェクト全体を通して、私が外部から何か新しいものを“提供している”という感覚はほとんどありません。鶴屋に本来眠っていた価値や魅力を、掘り起こしている、呼び起こしている感覚が一番しっくりきます。働く人も、扱う商品も大きく変わっていませんが、4年前とは明らかに“違う会社”になっている。「熊本の一番店」に向け、着実に歩を進めています。僕が介入せず、完全に“自前”で自己革新を遂げられる企業となる日は、決して遠くないと思っています。
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