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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

名和晃平×後藤繁雄×阿部光史「企業とアートの関係を革新するプロデュース」【前編】

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安川電機のエントランスに登場した「ミューズ」とは?

名和:安川電機のエントランスには、「PixCell」シリーズのフォーマットで制作した高さ5メートルの《PixCell – Double Muse(ピクセルダブルミューズ)》を制作しました。

阿部:ダブルミューズのテーマを教えてもらえますか。

名和:安川電機の工場を見学させてもらったら、ロボットアームが自分と同じ型のロボットアームを作っていたんです。まるで自己増殖しているようで、SFの世界そのものでした。安川電機の自己増殖プラントが世界各地に増えていったら、世の中はロボットだらけになる。そうなったときに、人間と機械の関係や、人間の身体と感性の関係はどうなっていくのか。それが知りたくて、この作品を作りました。

阿部:プレゼンテーションの時に、オキュラスリフトを使ってシミュレーションをしていたのが強烈に印象に残っています。まだ存在していない建物の中に入って周りを見ることができる。安川電機の津田(純嗣)社長も、「ほう!なるほど!」と、面白がっておられましたね。

名和:オキュラスは現実にかなり近い状態でパースペクティブを確認できます。建築の模型もいまはオキュラスで見られるようにしています。

阿部:ほかにも企業からの依頼で制作したコミッションワークの事例を紹介してもらえますか。

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名和:これは韓国の天安(チョナン)にある百貨店前のスカルプチャーガーデンに設置された《Manifold(マニフォールド)》という彫刻作品です。特殊な触感デバイスを使って造形した3Dデータを元に、アルミ鋳造パーツを切削し、約3年かけてつくりました。中心からエネルギーが多次元的に発生しているように見えます。

auのコミッションワークでは、iidaの深澤直人さんデザインの携帯電話が半透明の球体ピクセルに飲み込まれているアートモデルを作りました。

僕のスタジオ「SANDWICH(サンドイッチ)」には、プロジェクトマネジメント、アートプロダクション、建築、グラフィックなどのチームがあって、今80個ぐらいのプロジェクトが動いています。国内外のアーティストや若い作家、美大生、いろんな世代が集まって、30~40人が毎日活動しています。

次は建築チームの仕事を紹介します。世田谷区の個人住宅「KYODO HOUSE」です。古材を集め、「Direction」シリーズのコンセプトを基軸に作りました。レリアンの広尾の新しいファッションブランド「NEMIKA(ネミカ)」では、内装の設計から家具まで手掛けています。

9月には、広島市の神勝寺の境内にアートパビリオンがオープンする予定です。幅約50メートルの屋根が船のような形で浮いていて、その下は庭になっています。船の中には広い海原が広がっているイメージで水面があり、緩やかな波が寄せてきます。そこに反射させた光を見るインスタレーションを作ろうとしています。このプロジェクトでは、アートワークも建築もすべて一緒にコンセプトから考え、設計まで行っています。

電通報でも記事を掲載中

※後編は明日2月6日に公開します


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出演者


後藤繁雄(ごとう・しげお)

1954年、大阪生まれ。編集者、クリエイティブディレクター、京都造形芸術大学教授。広告制作、企画、商品開発、Web開発・展覧会企画など、ジャンルを超えて幅広く活動し、”独特編集”をモットーに、坂本龍一、篠山紀信、蜷川実花らのアートブック、写真集の編集などを数多く制作。東京・恵比寿の写真とグラフィック専門のギャラリー「G/P」ディレクター。G/Pgalleryを通してParis PHOTO(パリ)やUnseen Photo Fair(アムステルダム)などの国際的なアートフェアにおいて日本の若手フォトアーティストのセールス&プロモーションや、篠山紀信や蜷川実花の大型美術館での展覧会プロデュースを次々と成功させる。また三越伊勢丹をはじめとする企業と組み、新しいアートとブランディングの実践を精力的にすすめている。


名和晃平(なわ・こうへい)

1975年大阪生まれ。彫刻家。1998年京都市立芸術大学美術科彫刻専攻卒業。2000年同大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2003年同大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了。2009年京都・伏見区に創作のためのプラットフォーム「SANDWICH」を立ち上げる。2011年、東京都現代美術館で個展「名和晃平-シンセシス」、2015年PACE LONDONで個展「FORCE」を開催。画素のPixelと細胞のCellを組み合わせた独自の「PixCell」という概念を機軸に、ビーズ、プリズム、発泡ポリウレタン、シリコーンオイルなど様々な素材とテクノロジーを駆使し、彫刻の新たな可能性を広げている。京都造形芸術大学大学院美術研究科教授。


阿部光史(あべ・みつし)

1966年神戸市生まれ。クリエイティブディレクター。武蔵野美術大学建築学科卒。電通関西支社、ビーコンコミュニケーションズを経て、電通 東京本社。主な仕事に、アイフル「どうする? アイフル!」、アニメ「豆しば」CD、家庭教師のトライ、キリン、P&G、ネスレ、コロプラ、安川電機「YASKAWA BUSHIDO PROJECT」など。2004年度CM好感度ランキング1位。TCC賞、ACC賞、広告電通賞、NYフェスティバル、スパイクスアジアゴールドなど受賞。趣味はプールと電子工作、電通ギークラボ主宰。