メーカー発信の言葉は信用されにくい
五味田:まず、おいしさに対する消費者の認識についてです。「オールブラン」には、ドライフルーツ入りの「オールブラン ブランフレーク フルーツミックス」といったおいしくて食べやすいラインナップも揃えているにもかかわらず、消費者の中には自然由来の食物繊維量が非常に高い「オールブラン オリジナル」のイメージが強く残っている方が多いようです。
「オールブラン オリジナル」は食物繊維による機能性は非常に高いものの、味が素朴で独特なところがあり、そのイメージが強く残っているために、「オールブランって食物繊維の効果はあるけど、あまりおいしくないよね」「本当に困ったときは頼るけど、毎日食べるものじゃないよね」と思われる傾向がありました。
もうひとつの課題は「効果効能」の伝達です。これは豊富な自然由来の食物繊維による効果が期待できるのですが、ご存知のように広告にはいろいろな表現上の規制があり、私たちから直接伝えることが難しい内容でした。
藤崎:確かに、広告だけでは解決しづらい課題ですね。
五味田:実際に実感された方の声が一番強いというデータもありました。そこで、もっと消費者に近い方々から、ご自身の実感を込めて「おいしさ」や「効果効能」を伝えてもらう方法はないかと考えて、アンバサダーにたどり着きました。
例えば、おいしさに関しては、いくら企業が「おいしいですよ」と言ったところで、なかなか消費者の心には刺さりません。ユーザー調査をみても、「どのブランドもメーカーもおいしいと言っているので、本当においしいかどうかわかりません」というコメントが多く見られます。これは、効果に関しても同様です。規制に触れないようにしながらどの企業も健康にいいことをアピールしていますが、消費者に届いているかどうかは別です。
五味田:私たちが伝えたいことをアンバサダーの方々を通じて伝えていくと、「この人が言っているのであれば、本当においしいかも」「食物繊維の効果を私も実感できるかな、試してみよう」と思ってもらえるのがすごく魅力的だと思います。
藤崎:実際のどのようなプログラムを行ったのでしょうか。
五味田:大きく分けると4つあります。
一つ目は毎月実施しているモニター施策です。これは簡単にいうと3種類の商品をアンバサダーに送付し、食べた感想をブログやSNSで紹介してもらうというものです。商品と一緒に「ワタシスッキリブック」というハンドブックを同封しています。
これはブランドとして伝えたいことをわかりやすくまとめた冊子で、アンバサダー限定の非売品です。内容は食物繊維の話や、お医者様の意見、エクササイズの提案やレシピなど、アンバサダーさんのライフスタイルを意識したものになっています。コンパクトな割に読み応えもあります。
商品とハンドブックを一緒にお送りすることで、アンバサダーのみなさんは、商品の内容をよく理解したうえで、味についての感想やコメントを投稿していました。今は食に対するニーズが多様化してきていて、「オールブラン オリジナル」のような素朴な味を好む方もいますし、「オールブラン ブランフレーク フルーツミックス」のように甘酸っぱいフルーツが好きな方もいます。味については、アンバサダーが気に入った商品について、正直な気持ちをそのまま書いてもらっています。それが商品情報と相まって、肯定的なクチコミが生まれました。
藤崎:狙い通りだったわけですね。
五味田:効果に関しても、食べてみてお通じがよくなった、といったコメントを自主的に書いてくれています。もともとの課題だったおいしさと効果については、この施策でかなり伝わったと思います。
二つ目が、アンバサダーイベントです。よりインフルエンス力の高い方をお呼びして年に4、5回おこなっています。弊社の管理栄養士やブランド担当者が、オールブランについて解説するコーナーがあったり、「ブランでスッキリ!委員会」の料理研究家 柴田真希先生のお料理コーナーがあったりする体験型のイベントです。学びのパートと、日々の実践のパートのメリハリを重視していますが、回を追うごとに内容の質が高くなっていて、とてもいいイベントに育ってきたと思います。
藤崎:料理はみんなで作るので、一体感が出ますよね。
五味田:はい、参加者同様に柴田先生も実際に「オールブラン」のファンですので、イベントの最後はみんなが一体になってとても仲良くなります。しかも、続けてきて良かった点としては1回目から回を追うごとにどんどん進化していることです。初めは単純なお料理でしたが、次第に一緒に焼いたり、季節性を取り入れたり、クリスマスやバレンタインなどを意識したものにどんどん進化してきました。そういう要素が加わることで、アンバサダーさんが自身のブログやSNSで紹介しやすくなっていると分析しています。
このように「オールブラン」のファンの方と触れ合う機会は、企業としては、あるようでなかなかありません。また、社員がファンをイメージしながら仕事ができるかもとても重要です。そこで、社内の他部署の人にも参加を呼びかけファンと触れ合う機会にしています。
実際のところ、アンバサダーが、イベント後にSNSやブログに上げている記事を見ていてもとても質が高く、広告換算した金額も高く算出できています。
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