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コラム

AdverTimes DAYS 2016

民間企業出身の自治体広報が集結 PR発想の「地方創生」への挑戦

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「数的根拠」を大事にする

編集部:「そもそも一体何をPRしていいのか分からない」「こんなこと発信してもいいの?」という悩みを抱えていらっしゃる自治体の担当者も多いですよね。切り口はどんな風に見つけていらっしゃいますか。

取出:「ネタづくり」に関しては、やはりPRというのはネタありきの部分は少なくないですから、自ら動いて茨城のネタをつくってしまおう、という活動も必要だと感じています。

最近だとIT業界との連携に力を入れていて、民間と民間、民間と市役所、観光協会などとのマッチメイクを行い、PRできる話題を増やすような活動もしています。

大倉:白川村の場合、まずは観光を入り口に「ヒト・モノ・カネから主体的に選んでもらう地域」というコミュニケーションゴールを設けつつ、様々なアクションを行っています。例えば、観光地としての魅力づくりでは、村の自然や人、文化など、まだあまり世界に発信しきれていない資源の積極的な活用が挙げられます。

編集部:白川村といえば、世界遺産の「白川郷合掌造り」といった強力な観光資源がありますよね。

大倉:やはりそのイメージが強いですよね。村民の数は1700人ほどしかいない小さな村なんですが、白川郷には年間150万人ほどの観光客が訪れるので、よく「(行政が)潤っているんですね」と言われます。実際には観光客の滞在時間はとても短くて、通過型の観光地になってしまっている状態で。

最近だと「CINEMA CARAVAN in 白川郷」という村に滞在するアーティストを招へいするプロジェクトや、国内各地で村民と都市生活者を結ぶ「白川村ナイト」などによって、質の高い交流人口の獲得にも力を入れています。

編集部:絶対的な観光資源がありながら、大倉さんのように様々な地域PRに取り組んでいることに驚かれた方も多いと思います。

大倉:このほか、食の分野では村産の特産物が少ないのですが、地元の飛騨牛を使った「すったて鍋」は「ニッポン全国鍋グランプリ」で優勝し、日本一になっています。とにかく村で生まれたものをいかにブランド化できるか、という視点で常にアンテナを張っています。

取出:ぜひ奥村さんに聞いてみたいのが、横須賀市は1999年と早くから「カレーの街宣言」をされていますよね。民間企業であれば簡単な話だと思いますが、自治体が「カレー」1本に絞り込んでプロモーションに取り組むのは非常に難しいことだと思うんです。

大倉:そうですよね。食も観光も資源はたくさんありますから、カレー単体に絞るというのはかなり思い切ったチャレンジだと思います。

奥村:確かに「どうしてカレーなのか。他にも農水産物はたくさんあるじゃないか」という声は多数あったと聞いています。それらの意見はごもっともなので、その時には行政単独ではなく、行政と商工会議所と海上自衛隊の連携でプロジェクトを進める工夫をしたと聞いています。カレーにまつわる仕掛けを継続して行ってきた結果、2014年にはご当地カレー認知度で全国1位を獲得することができました。

編集部:「日本一」という響きもまた、強いですよね。

奥村:自治体PRにおいて発信力が高まる手法として「数的根拠を示す」ことは有効です。なぜなら、行政はもともと信頼感があると見られている組織で、その組織から数的根拠とあわせて説明されると、より信ぴょう性が増すからです。

編集部:やはりPRに重要なのはファクトですから、強い数字を持ってくると一気にPRが加速すると思います。

奥村:例えば「横須賀市は安心して暮らせる街ですよ」とアピールするとき、公的データを調べて数的根拠とともに「横須賀市は犯罪発生率が県内で最小です」と伝える。そのことで、ぐっと安心して暮らせる街という印象が高まるのではないかと考えています。ここがとても大事だと思うんです。

大倉:「観光としての魅力づくり」と同時に、奥村さんのおっしゃるように「住みたくなる地域づくり」も最重要課題ですね。私自身も他所から来た人間ですから、地元の人の生活を理解することから始めて、移住体験のシェアハウスを設置する取り組みもスタートさせています。移住促進を目的としたコンテンツ化には力を入れていて、多数のプロジェクトを並行して進めているところです。

横須賀市(神奈川県)

自治体PRのポイントと具体策

①宣言に伴う様々な仕掛け:「カレーの街よこすか宣言」など
②数的根拠の発信:数字を出して説明する
③インフルエンサー:「横須賀市こども政策アドバイザー」など

2014年4月、「横須賀市こども政策アドバイザー」として社会的に影響力のある3人を起用し「子どもが主役になれるまち横須賀」を宣言した。子育て・教育政策を強化し市民満足度の向上を目指すとともに、住むまちとしての魅力を発信することが目的。

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