【前回】「NHKスペシャル「NEXT WORLD」の取材から見えた、AIと表現の未来【後編】」はこちら
メディアアーティストであり、筑波大学助教として最新のテクノロジー開発に取り組む研究者である落合陽一さん。自らの会社ピクシーダストでは、ものづくりなどのビジネスにも取り組み、最近では広告ビジネスの研究開発もスタートさせている。近著『魔法の世紀』では、人々がメディアの中の現実を共有する「映像の世紀」から、メディア環境そのものに人間の生活や社会が溶け込んだ「魔法の世紀」がやってくると看破し、独特のハイパーな語り口や、先進的な未来の捉え方、明快なビジョンで注目を集めている。今回の電通デザイントークは、電通 クリエーティブ・テクノロジストの菅野薫さんが聞き役に指名され、落合さんが考える「魔法の世紀」について、「現代の魔法使い」と称される落合さん自身にひもといてもらう。
プラズマの妖精が空中を飛ぶ?「魔法の世紀」はすぐそこに
菅野:
今日は著書『魔法の世紀』にも触れながら、落合さんとその仕事をひもといていきます。
落合:
まずは自己紹介をしましょうか。メディアアーティストという肩書になっていますが、最近ハマっているのはプラズマ物理です。液体でも固体でも気体でもない、高エネルギー体の発光物体を光で作ることに興味があります。レンズを並べたり、レーザーを打ったりして作っています。これは、妖精のイメージを超低エネルギーのプラズマで物理的な物質として作ったものです。
イメージみたいに生じる物質=妖精というイメージがあって、それを物理的に作ったら面白いと思って。100兆分の3秒の超時短パルスレーザー(フェムト秒レーザー)を使って、空中にプラズマを作っています。これくらいの低エネルギープラズマなら、触っても比較的安全だし、触ったら反応するようにプログラムしています。
菅野:
触るとどんな感触なんですか?
落合:
ザラッとしています。それか、パチッとする。紙やすりのような静電気と思っていただけたら。こういう物質だか映像だかよく分からないものを作りながら、「映像と物質の境界を超える」というテーマに取り組んでいます。やがて、自分たちの身体も物質なのかイメージなのか分からなくなる世界が来るんじゃないかと思っています。
