コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

落合陽一×菅野薫「『現代の魔法使い』が想像する未来と広告」【前編】

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身の回りの「物」が動きだす未来がやってくる

落合:ここまではアートの話をしてきましたが、僕が大学で教えているのは計算機です。電気工学者のクロード・シャノンが1937年に発表した修士論文「継電器及び開閉回路の記号解析」は電気回路のスイッチングを「0」と「1」に置き換えて、デジタル計算機の基礎を作りました。僕は学生のころ、このスイッチと電気の関係にすごく興味があって、この「電気がみえるデバイス」は大学生のときに作った、格子点のスイッチのオンオフの切り替えによって回路が作れる作品です。部品を挿すだけで電子回路がつくれるブレッドボードになります。

 

 

昔は、回路の状態を0と1に変換していたけれど、僕は逆に0と1をどうしたら物理的な状態に戻せるのかに興味を持ちました。それ以来、プラズマや音波を使って同じテーマに取り組んでいます。

シャノンから50年、コンピュータの歴史を見ると、今度はどうマルチメディア化するか、つまり光と音を使って、われわれの視覚と聴覚をどう満たすかが大きな研究テーマになります。

そして、今から約25年前にユビキタスコンピューティングという言葉が生まれます。ユビキタスコンピューティングの祖として知られるマーク・ワイザーは当時の論文で「発達した無線網があれば、われわれはデジタルとアナログの区別なくコミュニケーションするようになる」と書いています。無線が十分発達した今、まさにその状況が生まれています。この場には、ノートでメモを取っている人もいれば、PCのキーボードを打っている人もいますよね。

今では、僕たちはスマートフォンや電子タブレットを手にし、無線は十分に発達し、マルチメディアはいったん成熟しました。色と光に関しては、予算と時間があれば、人間が想像するたいていのことはレンダリングできると分かった。だから、そろそろ違うフェーズに踏み出さなければいけないとみんなが気づき行動に移しはじめたのが、2016年という時代性だと思います。

僕が今やっているこれまでの映像装置を超えていく方法の一つは、より強度を高くすること、あるいは解像度を高くすることです。例えば、先ほど紹介したプラズマで出てくる妖精は、スマホが発するのと本質的には同じぐらいの光の量でできますが、瞬間的にそれを集めることで、触れて光るタッチパネルのようなものを空中に作ることができます。超音波を集めれば、物を浮かせることもできます。われわれの身の回りのものは、やがて動きだすんです。付箋がここのページをめくってと教えてくれたり、そろばんで計算していると、こっちが正しいよと勝手に動いたりする。やがて必要なことはコンピュータが直接教えてくれるようになって、ググって(検索して)調べる必要はなくなるでしょう。

 

音、光、電気、波など、あらゆるものを扱っていますが、全てフーリエ変換(ある任意の時間信号を複数の周波数成分に分解して表現する解析法)を使って計算しています。触れる光を作ることも、ある人にしか聞こえない音を作るのも、計算上は全く同じです。どうやったら対象の場所に波を合成できるかということが、僕の博士時代の専門です。これをホログラムと言います。ちなみに「ホログラム警察」もしていますよ。

菅野:ホログラムって、よく誤解されていますよね。

落合:そうなんです。ホログラムというのは、空間上にある波の位相合成です。決して、プロジェクターから出た光がガラスに映っていることではありません。

菅野:ペッパーズ・ゴーストや、透過スクリーンに映像を出すことを、ホログラムだと勘違いしている人は多い。そういうこと書いている企画書をよく見ます。「アイドルがスクリーンにホログラムで飛びだして…」というような。ホログラム警察って、何をしているんです?

落合:「ホログラム」と書いてあるツイートを検索して、「これはホログラムではない」と全部取り締まっています(笑)。ホログラムは専門用語なので、間違って使われるのはすごく悲しいです。今まではエジソン時代から変わらないような、空間に音と色の広がりしか出せなかったけれど、これからはホログラムで作ったより計算機的な像も出せるようになります。今はエンジニアとコンテンツの作り手が分かれていますけど、どちらにも精通した人材が出てくると、想像もつかないようなアウトプットを出せるようになると思います。

電通報でも記事を掲載中


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落合陽一(おちあい・よういち)
1987年東京生まれ。メディアーティスト・筑波大学助教・デジタルネイチャー研究室主宰

東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年から筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャル、人と機械の区別を超えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。著作に『魔法の世紀』(PLANETS 刊)・『これからの世界を作る仲間たちへ』(小学館 刊)がある。音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」及びフェムト秒レーザーの計算機制御によるグラフィクス形成技術「フェアリーライツ」が経済産業省「Innovative Technologies 賞」受賞、IPA認定スーパークリエータ、 Prix Ars Electronica 栄誉賞/ Laval Virtual Award グランプリ/Asia Digital Art Award優秀賞 / WIRED CREATIVE HACK AWARDグランプリなどその他国内外で受賞多数。2015 年、日本人個人として、ノーベル賞受賞者の中村修治以来二人目となる World Technology Award の IT Hardware 部門を受賞。ホログラム技術のピクシーダストテクノロジーズCEO、ジセカイ株式会社取締役、電通ISIDメディアアルケミスト、など産学連携にも力を入れている。

 

菅野薫(すがの・かおる)
電通 CDC/Dentsu Lab Tokyo グループ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト

2002年電通入社。データ解析技術の研究開発業務、国内外のクライアントの商品サービス開発、広告キャンペーン企画制作など、テクノロジーと表現を専門に幅広い業務に従事。2014年に世界で最も表彰されたキャンペーンとなった本田技研工業インターンナビ「Sound of Honda /Ayrton Senna1989」、Apple Appstoreの2013年ベストアプリに選ばれた「RoadMovies」、東京オリンピック招致最終プレゼンで紹介された「太田雄貴 Fencing Visualized」、国立競技場56年の歴史の最後の15分間「SAYONARA 国立競技場 FINAL FOR THE FUTURE」企画演出など活動は多岐にわたる。JAAA クリエイター・オブ・ザ・イヤー(2014年)/ カンヌライオンズ チタニウム部門 グランプリ / D&AD Black Pencil / One Show -Automobile Advertising of the Year- / London International Awardsグランプリ / Spikes Asiaグランプリ/ ADFEST グランプリ / ‎ACC CM Festival グランプリ / 東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ / Yahoo! internet creative awardグランプリ/ 文化庁メディア芸術祭 大賞 / Prix Ars Electronica 栄誉賞 / グッドデザイン金賞など、国内外の広告、デザイン、アート様々な領域で受賞多数。

 

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