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コルク代表・佐渡島庸平さんに聞く!今の世の中とマンガとメディアと広告の話。

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スマートフォンを電話だと思っている人はいないよね?

吉良俊彦氏

吉良:佐渡島さんと、NewsPicksの佐々木さんとモータリゼーション2.0の仕事のミーティングで話していた時に、誰からともなく発した言葉が今回の本のカバーに描かれている「スマートフォンを電話だと思っている人はいないよね?」という言葉でした。佐渡島さんはこの感覚をいつ頃から、どんな感じでイメージし始めたのでしょうか?

佐渡島:今の電子書籍は、単なるデジタル化です。多くの企業がデジタル化を進めていると思いますが、一番重要な変化は「インターネット化」なんです。アナログだった誌面がデジタル化して、それがインターネット化した。その先にスマホがあります。今までのニュースサイトはインターネット系メディアが強かったのに、スマホ対応をしなかったせいでうまくいかなくなるという現象がこの20年間で起きている。日本ではまだ多くの企業がデジタル化のところで止まっているのではないでしょうか。

いろいろな産業でデジタル化、インターネット化が遅れているので、明らかなデメリットが見えにくいのですが、リアルだと産業構造の変化に20年かかっていたものが、インターネットやスマホ化の場合には5年とかからないかもしれない。だから、それらが主流になった瞬間に、世の中がガラッと変わって対応できなくなることを、覚悟して備えておかないといけないんです。

マンガという芸術作品、マンガという伝達手法

吉良: PCとスマホってサイズが違うじゃないですか。コルクやマンガデザイナーズラボでは、このサイズの違い、スマートフォンの画面を意識して作っていますよね。次はマンガに対する、コンテンツとしての捉え方についても教えていただけますか?

佐渡島:マンガにはおそらく2種類あって、吉良さんがやっているマンガと僕がやっているマンガは、実は大きく違っていると考えています。僕が手掛けているのはある種、芸術作品としてのマンガです。世の中には、エッセイマンガというジャンルもあります。僕はそういったマンガを否定するわけではないけれど、ある程度芸術作品でありながら大衆的であろうとするマンガをサポートしているんですね。そして、吉良さんは、マンガという伝達方式、つまり絵とセリフの両方を使って伝えていくことの効率的な手法としてのマンガなのではないでしょうか。

吉良:そうですね。より広告的ということです。

佐渡島:マンガは非常に多くの情報量を詰めることができる。しかし、写真では情報量が多すぎるんですね。たとえば写真に吹き出しをつけてしまうと、伝えられることが多すぎてテンポ良く読めなくなってしまいます。だから、あえて情報をうまく減らすことが必要なんです。

マンガ家という職業も、その職種のなかでグラデーションがあっていいんだと思います。デザイナーだって、いろいろなモノをデザインする人、中にはスーパーのチラシをデザインする人もいるわけです。マンガ自体はみんながこんなに慣れ親しんでいるのに、マンガ家という職業だけ幅が狭いんですよね。

吉良:人数も少ない。有名なマンガ家になると、本当に少数です。

佐渡島:そうなんです。でも、マンガという手段を使った情報伝達の効率の良さっていうのは、すごく大事。動画よりも、制作コストが低い。さらに、動画だと背景からの情報が多すぎる。たとえばアナウンサーがニュースを報道している30秒の動画よりも、30秒間マンガを見る方がたくさんの情報を得ることができます。能動的に情報を得ようとする人にとって、マンガの情報伝達の効率の良さはすごく合います。

編集も広告の仕事も、「どうしたら能動的に見てもらえるかを考える仕事」

吉良:最後に、佐渡島さんに書いていただいた「吉良さんは、広告。僕は、編集。違う職種だったはずが、似てきている。」という本の帯コピーの意味を教えていただければ。これは深いですよ。

佐渡島:広告は、「お金を払って」多くの人に情報を伝えるものでした。編集は、「お金をもらって」多くの人に情報を伝える仕事だった。今までは、広告よりも編集者が手掛けたコンテンツの方が高い価値を持っていると認識されていたと思います。しかし、もはや広告も編集して作るものも、情報過多の世の中では、どちらも見てもらうのが大変になっています。

見てもらえないという前提で多くの人に広めないといけないとなると、結局は広告も編集コンテンツを作る仕事も似た仕事になってきます。今はどうしたら多くの人が能動的に見てくれて、見た後にどうアクションをしてくれるか、を考える仕事へと変わってきているのではないかと。そういったことを、吉良さんは、「広告0円」という言葉で表現しようとしているんだなと感じています。

佐渡島庸平(さどしま・ようへい)
株式会社コルク 代表取締役社長
twitter@sadycork

2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを設立。現在、漫画作品では『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『テンプリズム』(曽田正人)、『インベスターZ』(三田紀房)、『ダムの日』(羽賀翔一)、小説作品では『マチネの終わりに』(平野啓一郎)の編集に携わっている。

 

吉良俊彦(きら・としひこ)

上智大学法学部卒業後、電通に入社。 クリエーティブ局、営業局を経て、1985年より雑誌局へ。様々なラグジュアリーブランドをはじめ、各社のメディア戦略およびプロジェクト、スポーツ・文化イベントの企画プロデュースを行う。2004年、電通退社。ターゲットメディアソリューション設立。2011年、マンガデザイナーズラボ設立。
マンガデザイン®プロデューサーとして、「マンガデザイン®」による広告企画の総合プロデュースを手がけ、日本の文化であるマンガをコミュニケーションソリューションとしてビジネスに活用している。大阪芸術大学客員教授、日本女子大学講師。

 

『広告0円』 吉良俊彦・著

新たなメディアとして台頭してきたウェブ&モバイルに加え、OOH、そしてエンターテインメントとしてのスポーツ&ライブカルチャーもまた強力なメディアだと位置づけ、これまでの4媒体(TV、新聞、雑誌、ラジオ)との親和性やこれからのメディアミックスの方向性を考察。「広告0円」と提唱する真意、広告における新たなメディアの在り方、これからの可能性を探る。広告・コンテンツの今を理解するための最良の書。
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