ことしの薬業界の特殊事情とにらみあわせて
久保田:
ところで、ことしの薬業界の一つの傾向は、御存じのように特売をやつて小売屋へ押しこむことが強行されている。これは、毎年、毎年、ひどくなつている傾向ではあるが、ことしは、年頭から、特に、ひどい。大衆むけ宣伝費を減らしてまでこの特売費に当てている。中には、3割ぐらいも、宣伝費を減らして特売サービスに当てているところもあるという。むろん、小売屋へ押しこんだ商品は、それだけでは、売れたことにならない。ただ、小売屋に預けただけにすぎない。集金に行けば、返品される。ひどいのは、景品だけ取りこんで、返品するのもある。そこで、どうしても、消化しなくてはならない。それが、ことしはたいへんなんだ。つまり、通常以上に押しこんである。いうまでもなく、不景気だから、そういうことになつているんだ。それであるのに、その消化のための大衆宣伝費は特売費に食われて通常よりひどく少いときている。このジレンマに非常な危険がひそんでいる。