DJとスナックの意外な共通点?
大谷:めちゃくちゃ用意しますよ。ただし、最初からポップなことをドンドン入れちゃうと、後半ちょっと・・・ってこと、CMでもありません? 徐々に上がっていって、ここがピークで、みたいな感じをつくりたいじゃないですか。漫才やコントのつくりにも似てますね。
権八:ある程度、セットリストは組んでおいて。
大谷:その場で変えます。今日はこんなだなと。自分が楽しいと思ってなかったらダメなんで。先週、クリエイター気質という話がありましたが、おこがましいですけど、そんなノリでやっているのかもしれないですね。CM、ラジオをつくるみたいなノリで。
中村:掴みはちょっとクスッとなったり、ウケたりしたほうが面白いかもしれなくて、2、3曲目で、「おー、きた、きた!」みたいな感じのほうが。
大谷:そういう感じでやって、真ん中は知らなくてもいいんです。それはウケてないんじゃなくて、ここがあるから次ウケるとか。能動的な要素が絶対にないとダメで。またキングコング西野の話になっちゃうんですけど、あいつがスナックに今ハマってるって言うんですよ。うちは母ちゃんがスナックだったんで、「なんで今ハマってるの?」と聞いたら、「今は負荷をお客さんが負う時代だ」と。
西野がスナックに飲みに行ったら「テーブル拭いておいて」って言われたんですって。「なんで拭かなきゃいけないんだよ」と思いつつも、「考えてみたらスナックって不思議だな」と。「置いてる酒はどこも一緒なのに、なんで行く店決まってるんだろう。あっ、スナックは待ち合わせ場所なんだ」みたいな。
今のお客さんは能動的に何かをやりたいんですよ。コスプレや映画館での応援上映が流行ってるじゃないですか。結末がわかってるのに応援に行くという参加型イベントが、SNSでも拡散されていたり。
権八:スナックは待ち合わせ場所。
大谷:そう、あそこはいつもの誰かに会いに行く待ち合わせ場所であって、別に何かのエンターテインメントを見に行くわけではないと。だけど、僕は母子家庭で育って、母ちゃんはお金がなくて、ちょっとマイナスのイメージもあったはず。でも、お客さんにとってはママと話すことで、「私が大丈夫って言うんだから、大丈夫よ」みたいな妙な安心感が得られる場所で。
しかも母性を表す「ママ」を呼び名にしてるって、超絶すごいバランスで成り立ってんじゃないかみたいな話だと思うんです。だから、俺のDJってじつはスナックのママみたいな。肯定してお客さんを踊らせているから、要はテーブルを拭かせてるんですよ。うちにはダンサーやパフォーマーがいて、それはチーママだと。うちはチーママが多いスナックなんじゃないかと言ったら、俺は気づかないうちにお母ちゃんと同じ職業やってるんだなって。
澤本:面白いね。
権八:面白い。僕はスナックってあまり行かないけど、今確かにちょっと流行ってますよね。スナックにハマってる人、結構まわりにいる。
澤本:「だるま」とか?
権八:「だるま」もそうだね(笑)。スナックはカラオケ歌えるじゃないですか。みんなであの空間を共有して、というのもありますよね。
大谷:知らないお客さんが歌ってるものをみんなで盛り上げるって、よく考えたらすごいコミュニケーションの場じゃないですか。それこそ、その人を肯定してるんですよ。その人の好きなものを肯定するんです。だから、僕は手拍子が小さいとチーママに怒る。もっと大きくしないとダメだよ、お客さん気持ちよくないからって。
そういうことをDJでやってるだけというか。それは言われて腑に落ちたというか。スナックって不思議な文化ですから。もしかしたら、待ち合わせをつくるというのがエンターテインメントの本質というか、最先端になってきてるような感じがするんですよ。
権八:待ち合わせをつくる。
大谷:そうですね。いつもの常連さんに会うから、うちのパーティなんかそうですよ。内容とか、何をするかよりも、いつも来るメンバーがいるから来て。あの人達が異常な熱量で告知してくれるんですよ。それで新規のお客さんがそれを見て、ちょっと覗いてみようかなと肯定される。居心地がよかったら次も来るし。アイドルの現場もそれに近いんじゃないかと。
中村:モロそうですね。お客さんが能動的に。
大谷:じつはバンドも一緒なんじゃないかと思うんです。俺達が盛り上がっているところを見せることで、前のほうで踊ってる奴らは「初めて来た奴、どうだ」って顔してるんですよ。あの感じがまさにそうというか。
権八:ちょっと違うかもしれないけど、いきものがかりの水野さんが歌をつくるときに自分たちの思いを伝えるんじゃなくて、むしろ誰もがちゃんとカラオケで歌えるような設計にしてると言っていましたね。みんなの思いを代弁するというとおこがましいけど、自分のエゴをぶつけるんじゃなくてと。作曲もそうかもしれない。
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