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FRACTAブランディングスクール【3】なぜ顧客に選ばれているのか?その本質を見失わない

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顧客目線を「理解」するのではなく、「実行」することの難しさ

勉強会の後半では、グループディスカッションを実施。実際に行われたリブランディングの事例を題材として、「失敗の要因と改善点」を検討するケーススタディを行った。

まずは、とあるメーカーのリブランディングの情報を徹底的にインプット。当時のプレスリリースやCM、施策の効果測定の結果、それに対する経営者のコメントなど、参加者は大量の情報を読み込んでいった。

それを踏まえて検討したのは、
【1】このブランドの顧客はどんな人だったのか。
【2】リブランディングが失敗した要因は。また、それを防ぐポイントは。
【3】リブランディングを行った結果、良かったこととは。
の3点だ。

グループディスカッションの結果、あるチームは、このブランドの顧客を「商品の安全性を重視する層で、特に、商品の内容が変わることに抵抗を感じやすい人たちだったのではないか」と推測した。その上で、失敗の要因を「コアユーザーの『安心・安全なものが欲しい』『いきなり商品が変わるのは不安』という気持ちを置き去りにして、商品や宣伝を一度に変えすぎたのではないか」と分析した。

一方、他のチームは「これまでコアユーザーを惹きつけてきた、ブランドを象徴するワードがあったのではないか」と推測。そして、「その言葉を変えてしまったことが失敗の要因。もともと、このブランドの『何』を好きで選んでいたのかを、もっと正確に汲み取るべきだったのでは」と分析した。

双方のチームに共通するのは「顧客目線」の不在だ。あるチームからは、「リブランディングの前に、店頭で販売する側の意見は聞いていたのだろうか?」と疑問の声があがった。「対面で販売する人から見ると、売り方がガラッと変わる提案に見える。もう少し『売り方』や『お客さまを目の前にしたとき、どう説明するか』といったシチュエーションが視野に入っていれば、このような変え方にはならなかったのでは」といった声もあがった。

実例を通して学ぶことで、ブランドを「顧客目線」で考えることの重要性が実感できる。しかし企業にとっては、「顧客目線」と言うは易しで、自分たちのアイデンティティに立ち返ったり、真の良さに気づくのは難しいことでもある。それを改めて実感するディスカッションとなった。

「企業がどうありたいか」ではなく「顧客が何を望むか」

松岡芳美氏

このケーススタディを通して、「リブランディングして良かった点」を探すとしたら、それはどこだろうか、という松岡氏の問いかけに対しては、「このブランドは、リピート率に自信を持っていたのかもしれない。一度コアユーザーが離れたことで、ブランドの核となる価値を見極める機会になったのではないか」、「企業の『こうなりたい』という意思と、消費者から『こうあってほしい』と求められていたことの違いが分かったはず」など、興味深い意見がいくつも挙がった。

松岡氏は「既存顧客の望みよりも、ブランドとしてどうありたいかを優先したことが、失敗の要因だったと言えます」とまとめた。例えば、イメージキャラクターの選択や、その人の広告・キャンペーンにおける一挙手一投足も、「顧客の望む姿とマッチしているか」を考えるべきだと同氏。社内に「こういうブランドになりたい」という願望があったのではないか。そして、顧客もそう望んでいるはずだと思い込んでいたのではないか。真の顧客の声を聞いていれば、失敗は防げたのではないか、と参加者に投げかけた。

さらに、「このリブランディングは、ブランドの理解だけではなく、企業理念の理解にまでつながったと考えられる」とも推測した。創業以来、一貫して経営トップが発してきたメッセージにこそ、ブランドのアイデンティティがあり、顧客がそのブランドを選ぶ理由があったのではないか、と。それは、長い年月の中で、あるいは日々の業務の中で社員が見失いがちなものであること、また企業理念やブランドの本質を理解するのは、それほど難しいのだということを示しているのではないか、と示唆した。

最後に河野氏は、第1回勉強会で得た共通理解である「ブランディングにおいて最も重要なのは、消費者との信頼関係構築である」ことを改めて強調した。「企業としてどうありたいかではなく、顧客が何を望むかを常に考えなければなりません。ブランディングに携わる人には、自分たちのブランドについて深く・正しく理解し、その上で、顧客に合わせて自分たちを変えていく姿勢が求められています」と河野氏は締めくくった。



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