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企業広報、PR会社、メディアになぜ倫理観が求められるのか? 情報を扱う人の責任を考える

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影響力の裏側には相応の責任がある

尾上:前職のNHKの時から常に言われてきたことですが、影響力がある人や企業ほど一段高い倫理観が求められます。情報を拡散させる手立てを考えるPR会社も同様です。公正や公平を期することは困難ではありますが、そうあろうとする姿勢は大切です。問題がありそうな案件でも、「やっちゃえ」と実行に移してしまう会社もあるかもしれませんが、影響力を自覚し、責任感を持って物事を判断していかないといけませんよね。

玉川:「メディアリテラシー」を高めようという議論がありますが、そもそも言葉の意味を理解している人が少ないのではないでしょうか。これは教育の問題が大きいと思います。

情報を扱う人が勉強するのは当然ですが、一般の方々も、メディアリテラシーを高めることが生活をより豊かにしてくれることをお伝えしたいです。メディアリテラシーの概念が広く普及していくことで、日本全体の知的生産性が向上すると思っています。

金泉俊輔(扶桑社『週刊SPA!』『日刊SPA!』編集長)
1972年生まれ。立教大学在学中にフリーライターとして活動後、1996年扶桑社入社。2001年から『週刊SPA!』編集部。2011年にオンラインメディア『日刊SPA!』を創刊。2013年4月から編集長。編集した書籍に『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』(西村博之著)など。

金泉:ウェブメディアなどの中には、編集者の手を経ずに公開されている記事や、スピン・コントロール(政治的情報操作)と見られる記事もありますからね。いろんな情報が一緒くたになって届けられる中では、個人にも情報を仕分ける力は必要です。

尾上:「パブリックリレーションズ」の意味や手法を誤解しているクライアントも少なくありません。新商品発表の記者会見などでも、クライアントから「高価格帯の商品だから、高級路線の雑誌にだけ来てもらいたい」という要求が出されたこともありました。

戦略としてメディアのターゲットを定めるのは間違っていませんが、特定のメディアにしか対応しないとするのはあまりに都合のいい話です。もしメディアを厳密に選定したいのであれば広告にしたらどうかと、クライアントに申し上げたこともあります。

玉川:表現と言論の自由を支援する立場としては、原則として取材の機会はオープンなのが望ましいと考えます。一方で極端な例ですが、イベント会場などでまったく存じ上げない方が突然、「私はメディアだ」と名乗って入場しようとされる場合があります。セキュリティリスク上の問題があるので、記者の方はメディア付きかフリーランスかを問わず媒体と身元がはっきりしていることが重要です。

金泉:ステマが問題視されるようになり、記事と広告の線引きを明確にすべきという話が出てきています。それは正しいことだと思いますが、その半面普通に取材した記事をステマだと言われたり、Yahoo! ニュースなどが対策を強化することでかえって不自由になっている現状もあります。その一方で、SNSやブログ、まとめサイトなどでは未だにステマが横行している現状があります。

広報は会社の良心として機能すべき

玉川:プロジェクトが始まるまでに現場から相談を受け、法令順守と倫理観に則って進めればミスコミュニケーションによる摩擦は激減するでしょう。僭越な言い方になりますが、広報は会社の良心になるように機能するべきだと考えています。

尾上:広報は社会との窓口といえますからね。

玉川:はい。マクドナルドは、国内の2900店舗でスタッフやクルーを含めて12万人が在籍しています。全国誰もがお客さまという事業ですから、社会という大きな視点で考えなければブランドが成り立たなくなってしまいます。その観点からも、法令順守と倫理観は重視しています。

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『広報会議』2017年3月号 巻頭特集
「「知らなかった! 」では済まされない 広報パーソンの倫理観を考える」

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  • 「法務とコンプライアンス」OK・NGラインはどこにある?
    1.著作権を正しく理解する 5つのステップ

  • 福井健策(弁護士/骨董通り法律事務所 代表パートナー)
    2.クチコミマーケティングにおける

  • 「関係性の明示」とは
    佐藤達郎(多摩美術大学 教授/WOMJ 理事長)
    3.問題表現を防ぐ!

  • 広告・表示を取り巻く法規制と倫理観
    林 功(アドリーガル・オフィス 代表)
    OPINION 企業の信頼を失墜させる

  • 業界構造から生まれたステマ問題
    水島宏明(上智大学 文学部新聞学科 教授)