「マス」に最適化した時代の終焉
では、昨年のWELQ騒動を起点に、ネット広告は「目の前にいる1人」の気持ちを本気で考えられているか、というテーマを考えました。何名かの方からフィードバックを頂きましたが、この延長にある議論として出てくるのが、ネット広告だけでなくマス広告においても、「顧客の気持ち」を考える重要性が忘れられがちではないか、という点でしょう。
昨年は特に、企業が実施した広告に対して、視聴者が怒りを感じ、炎上騒動になるというケースが明らかに増えた年でした。そういう意味では、テレビCMなどのマス広告をつくる際にも、「視聴者の視点」で考えることの重要性は明らかに高まっていると言えます。ただ、ここで難しいのは、マス広告と顧客視点が往々にして「相性が悪い構造」になりやすいという点です。
このたび、『
』という書籍を宣伝会議から刊行させて頂くことになり、その中でもマス・マーケティングと「顧客視点」の相性の悪さについて書かせて頂きました。
マス・マーケティング時代は、マス広告の影響力が非常に高かったため、すべてが大量生産大量消費に最適化されていった時代と言えます。「マスマーケット」に対して、「マスプロダクション」した製品を、「マス広告」を通じて売り込む。マス・マーケティング時代は、企業活動全体がこの「マス」というキーワードに最適化されていた時代と言えるでしょう。しかし、そうした顧客に対して企業側が極端に有利な時代は、インターネットやソーシャルメディアの普及により終わりを告げようとしています。