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コラム

ALL YOU NEED IS BUZZ

#12 バズの未来 -広告が迎える7つの変革-

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バズという存在が、どれだけ広告を変えるのか。
12回に渡り、向き合ってきた中で、
この数年の内にやってくるであろう7つの未来が見えてきました。
連載最終回では、その展望をまとめたいと思います。

未来1:ダッシュボードが変わる

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iメディア情報や売り上げ情報などをリアルタイムに収集し、モニタリングを可能にするマーケティングダッシュボードが、戦略設計や施策効率化をサポートする昨今。今後は、”アイデア開発”の手助けまでしてくれるようになるはずです。

アイデアのヒントは、ウェブ上に無数に点在しています。
ブランドが狙うべき

・ユーザーのインサイト/関心ごとは何か
・解決すべき社会問題は何か
・ファンの中のインフルエンサーは誰か
・コンテンツトレンドは何か
etc…

これら全てを人力で収集するには限界があります。そこで、独自のアルゴリズムでそれらをキュレーションし、アイデアの量と質を飛躍させるモニタリング装置の誕生はもうすぐそこです。それは、誰もが容易にアイデアマンに成り得る時代でもあります。

未来その2:チームスキームが変わる

「マスメディア」以上に「人」が、メディアの中心になる時代、一方的な発信は淘汰され、確かな”コンテンツ”こそが受け入れられる。必然的に、コンテンツ作りのプロがチームに必要になります。
それは誰か?
たとえばそれは、「編集者/リサーチャー」「研究者」「作家/アーティスト」です。

例1)with リサーチャー

※筆者が制作を担当

この映像は、日産キャラバンのメッセージを伝えるために弊社で制作した映像です。
核となったのは、”ご協力頂ける職人の方へアプローチするための、リサーチ”。

例2)with 研究者

この映像は、5-minutes craftが公開した科学実験映像で、1.6億再生もされています。
核となったのは、”研究によるこの現象についての知識”でした。

例3) with 映像作家

昨今シェアされているコンテンツの核として”プリミティブな感覚に訴える映像表現”がよく見られます。言語を飛び越え、一瞬で目を惹くからでしょう。
広告表現においても、映像作家とタッグを組むスタイルは一般的ですが、今後は、これまで広告とは距離のあったプリミティブな表現を追求する作家/アーティストとのタッグに、まだまだ可能性がありそうです。

未来その3:セールスが変わる

バズでモノが売れるのか?マーケティングに関わるほとんどの人の関心事です。
現状、3方向の兆しが垣間見えました。

1.商品ど真ん中でバズをつくる

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※筆者が制作を担当

「幸せだけで、できている。」というブランドメッセージを発信するハーゲンダッツ。
これは、そんな商品のフタを開ける行為そのものが、「幸せ探し」に変わるアクション、”ハーゲンハート”。
ファンの方々が、稀に出現するハートのクレーターを愉しんでくれていることから始まったこの活動体は、SNSを通じて瞬く間に広がりました。この幸せ探しを試してみたいと思った人は、直接購入行動に移る、という距離感の近さがポイントです。

2.バズを強力な営業ツールにする

※筆者が制作を担当

あきらめない人の車いす「COGY」。
これは、ブランディングをお手伝いさせて頂いた、自力で漕ぐ車いすです。右足を踏み出すと、次は自然と左足が動くという脊髄の反射反応を活用し、麻痺などの障害で歩行が困難な方でも、足を動かすことを可能にする画期的な製品です。
150万再生を超えたこの映像を起点として、対企業向けに営業をする際にも、「ニュースで見た」と言ってもらえたり、その場でさっと映像を見せることで、すぐ製品について理解をしてもらえるようになった、という報告を頂いています。

このように、拡散された映像が”強力な名刺”となって、販路を拡大するケースも。

3.バズで長期的なエンゲージメントを築く

車のような高額商品は、バズが直接的に購入につながりにくい商品です。
しかし、バズによって深いエンゲージメントを生み、強いイメージが記憶されたとき、結果的に販売につながる例もあります。

例えば、
日産のTech for Lifeというプロジェクトでは、自動運転技術を日常に活用したら?という視点で、あるプロダクトを生み出しました。

※筆者が制作を担当

結果的には、一連の活動を通して「自動運転といえば日産」というイメージは強固となり、CMと合わせてこの映像を見た人は、購入意向が上がるという結果が出ています。

このように、バズが長期的視点で売り上げに寄与する例が次々と生まれるはずです。

未来4:ブリーフが変わる

バズは、決して万能ではありません。
そのポテンシャルを最大限引き出すためにも、ブリーフの精緻化が必要不可欠です。

これは過去にも紹介したブリーフチャート

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 詳細はこちらの記事へ:バズの依頼 -成功するブリーフ-

バズに何を求めるのか、そもそも本当にバズが必要なのか?といった議論を通じて、目的が定まり、より求める効果が生まれやすくなるはずです。

未来5:プロダクトが変わる

ブリーフチャートに記載したように、バズを生み出す最も直接的な手段は、”広告表現”以上に、”商品(サービス)”そのものです。
例えば…

これらは、そもそもの商品にバズ要素が注入された例。
今後この方向性のアイデアがより開拓されることになるはずです。

 紐解いた記事はこちら:バズの本題 –話題の商品を生み出す12の秘訣–

未来6:マスが変わる

マスメディアとソーシャルの間にある、大きな壁。
その壁はもう、打ち崩れる寸前です。
そもそものクリエイティブの作法や、目的の違いはありますが、
その知見を融合することで新たな地平がひらけます。

例えば、ソーシャル上で生まれた表現手法をヒントにしたり、
自社Twitterアカウントで反応が良かったネタをマスに活用したり、
ソーシャル上で注目されているタレント、自社ブランドのファンであるタレントをマスキャンペーンに活用したり、など、その連携は様々です。

未来7:プラニングモデルが変わる

“バズ”の特徴的な側面として「ローコストハイリターン」があります。
もちろんバズを完全狙い撃ちすることは難しい。しかし、”とりあえずやってみる”トライアル価値は上がりました。広告枠を使わなくても、コンテンツをつくりこまなくても、情報価値さえ高ければ、自ずと「人」が広めてくれる。話題が爆発する可能性がある。

すると、プラニングモデルがどうなるか。より、アダプティブなスタイルが可能になります。これまでのように、数ヶ月かけキャンペーン案を固め、多額のメディア枠を確保した上で施策を実施する従来型のモデルから、
可能性のある施策を小さなスケールで実施し、反応が良くて費用対効果が見込めるものを徐々にマスにスケールさせるローリスク型のモデルが一般化するはずです。
もちろん、そのスケールさせる段階において、マスメディアやiメディアはこれまで同様とても大事なカギになります。

結果的に、予算配分も、キャンペーンごとに固定的に配分するものと、結果を見ながら流動的に配分していくもの、その2つが両立するはずです。

以上、この数年に起こりうるであろう7つの未来でした。

最後に:

ここから先は、未来予測ではなく、個人的な意志の話です。

最も待ち望まれている変革とは、広告に「売上保証投資モデル」が生まれることではないか。それは、

・確実に売り上げを上げる事を約束する“広告”。
・約束できるからこそ、担い手側がその費用を負担する“広告”。
・そして、その責任に応じた裁量と成果報酬を得る“広告”。

これは、“広告”活動を、真の意味で”投資”活動に変えるモデルです。

この“広告”とは、商品開発や販路戦略を含むマーケティング全域に関わることを前提にした活動を指しています。

こんな理想像が果たして成り立つのか。
これまでは到底難しい事でした。
広告の効果は短期的に見えるものは少なく、効果が出たとしても、それが本当に広告の影響かどうか、判断できなかったからです。

しかし今僕らは、「バズ」と「データ」という2つの武器を手にしました。
「バズ」は、ROIを高めるアダプティブなプラニングスタイルを実現し、そして「データ」は、そのROIの検証精度を飛躍させます。
この2つの武器が、一体どれだけ通用するのか。
それはやってみないとわかりません。

すぐできるかもしれないし、
何十年もかかるかもしれない。

しかし、いつか必ず「売上保証投資モデル」は実現できる。
時代は間違いなくその方向へ向かっています。

マーケティングが次の次元に突入したとき、
どんな面白い世界が待っているのか。

僕は楽しみで仕方ありません。
だからこそ、必ず実現したいと思います。


※連載『ALL YOU NEED IS BUZZ』は今回で終了となります。ご愛読ありがとうございました。(編集部)