メディアの付加価値を高めるためのポイントを、飲料水の産業化から学ぶ。画像提供: kazoka30 / 123RF 写真素材
コンテンツの供給、加えて広告ビジネスは、「過剰性の経済」ともいうべき段階に突入している。
「過剰性」の対極は、「希少性」だ。希少性を原理とした経済の仕組みは、私たちが慣れ親しんできたもので分かりやすい。需要があり、かつ供給が潤沢でなければ、対価は基本的に下落しない。
だが実際には、その逆の現象にわれわれは向き合い続けている。コンテンツ、あるいはメディアビジネスが、過剰性(つまり、同様のコンテンツが十二分に供給されている状態)の経済の下にあるのだとすれば、メディア運営者、コンテンツクリエーター、周辺の事業者は何をすべきだろうか?
希少性の価値が揺らぐビジネス環境
本稿では、メディアと業界を異にするビジネスに、その解を見い出そうとする論を紹介する。そこからコンテンツの潤沢な供給が引き起こしているのかもしれない、価値下落から反転していく理路を考えてみたい。
※本稿は、2012年に執筆した拙稿「コンテンツに価値を取り戻すために ミネラルウォーター事業に学ぶ5つのアプローチ」を改稿したものです。
希少性の経済から過剰性の経済への移行がもたらす大変化を、見事に喝破したのは『フリー<無料>からお金を生みだす新戦略』を著したクリス・アンダーソン氏だ。
インターネット上では、多くの消費者にとって希少であるべきコンテンツが、無数の同種記事に埋もれてしまうようになってきており、また、話題性のあるコンテンツであれば、おびただしい数の引用記事や複製がそこに連なり、結果としてコンテンツが持つべき価値感が突き崩されている——。