【前回】「松尾先生、人工知能と広告の未来はどっちですか?【後編】」はこちら
今回の電通デザイントークは編集者の菅付雅信さんをお招きして、写真をめぐる「いま」を俯瞰します。トークセッションのメンバーは、電通からドリル、そしてPARTYを経て「もり」を設立し、世界の広告賞で審査員を務める原野守弘さんと、写真専門誌「コマーシャル・フォト」編集長の上松清志さん、2016年にカンヌ、NYADC、D&AD、ワンショーと受賞ラッシュし、写真への造詣も深い電通のアートディレクター上西祐理さんです。誰もが写真を撮る時代だからこそ、プロの目線で写真を批評し、写真を真に「見る」とはどういうことなのか語り合います。
フィルムへの回帰が起きている
菅付:
2010年代の写真はデジタルの浸透によって、2つの領域で大きな変化が起きています。まず1つ目は「写す道具のデジタル化」、そして2つ目は「見せるメディアのデジタル化」です。
写す道具のデジタル化は、なんといってもスマートフォンが象徴的です。iPhoneだけを見ても、半年前の統計では世界で約10億台が売れています。スマートフォンにはカメラが付いており、ほとんどの人が常時、カメラを持って生活しているわけです。
見せるメディアも変化しました。僕らのメインデバイスであるスマホで写真を見せ合う機会も増えています。広告の世界でもデジタルサイネージが普及し、有名なニューヨークのタイムズスクエアも昔はプリント広告が中心でしたが、今はほとんどデジタルサイネージに代わっています。
一方で、こうしたデジタルの普及に対して「フィルムへの回帰」という反動が起きていますよね。
上松:
はい、コマーシャル・フォトの読者のプロフォトグラファーに対して「フィルム撮影に興味があるか」と調査をしたところ、20代や30代に「非常に興味がある」「フィルムで撮影してみたい」「実際にフィルムを使っている」という人が多くいました。仕事では圧倒的にデジタルの依頼が多いようですが、特に最近フィルムに興味を持つ人たちが目に付くようになりました。


