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『週刊東洋経済』編集長が語る「私のベスト企画」

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『編集会議』の最新号では、「その記事は“売りモノ”になるか――記事で問われるメディアの真価」を大特集。特集によって売上が大きく左右される雑誌には、これまで以上に「企画力」が問われるようになっている。1895年に創刊し、日本最古の経済誌『週刊東洋経済』の西村豪太編集長が選ぶ「私のベスト企画」とは――。

『週刊東洋経済』編集長 西村豪太 氏
1969年東京生まれ。1992年に早稲田大学政経学部卒、東洋経済新報社入社。記者としては小売り、商社などを担当。2004~05年に中国社会科学院日本研究所客員研究員。名古屋駐在などを経て16年10月から現職。著書に『米中経済戦争 AIIB対TPP』(東洋経済新報社)。

「ベスト企画」の出発点

ベスト企画は、「物流が壊れる」(2017年3月4日号)です。いわゆる経済誌らしい特集で「この時期に物流が旬の話題になるだろう」という目算がぴしゃりと当たりました。この号ではもともと、人手不足の問題をテーマとして取り上げたいと考えていたのですが、「人手不足」「働き方改革」といったテーマそのものをストレートに出すよりも、切り口の工夫が必要だと思いました。

うちの雑誌は通常号で690円ですが、それを買ってもらうのは、読者にしてみるとお昼1食分の値段を出す感覚でしょう。なので、買う側はやはり具体的に役立つ情報を求めています。抽象的な政策論よりは、特定の業界に起きている“生の事象”を取り上げるのが良いと考えました。

「働き方改革」については企業での長時間労働が問題視されますが、我々が過剰にサービスを求めていることもその一因なのではないかということでした。その象徴とも言えるのが、宅配便に代表される物流ではないかと。

つまり、我々の社会が追求する利便性は何によって支えられているのかという疑問が、この企画の出発点なんです。ちなみに、タイトルは「物流崩壊」でも良かったんですが、担当したデスクの「動詞で終わる表現にすることで、現況をよりビビッドに伝えたい」という思いから、「物流が壊れる」にしました。

ヤマトのドライバーからの反響

こうした特集は5~6週間でつくるので、この号の場合は年明けから取材などを始めていました。その過程で、「12月の物流各社の業績は相当厳しかった」ということが見えてくるんですね。なので、そう遠くない日に物流業界で大きな変化があるかもしれないという、確信めいたものはありました。

アスクルの倉庫火災は予測不可能でしたが、この号が発売する直前にちょうどヤマト運輸の宅配便をめぐる方向転換が浮上し、日経の1面になって世間の注目を集めたんです。取材過程で「社会問題としてホットイシューになる」との確信が生まれました。

反響という点で言えば、最も印象的だったのは、たまたま小誌を買って読んでくれたヤマトのドライバーさんから、感謝のメールをもらったことです。この特集の署名が入っている記者宛てに送られてきたんですが、よほど共感してくれたようで、A4用紙で数枚になるぐらいの長文でした。

「丁寧に取材してくれてありがとう」という内容で、現場の状況に加え、「本社はこういう改革をやろうとしているが、それはこういう理由でうまくいかないだろう」といったことがロジカルに書かれていましたね。

「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」という言葉があります。雑誌づくりをしていると、本当にその通りだと思うんです。かつて経済誌の定番だった企画が大コケしたり、こわごわ出した特集が大当たりすることはしょっちゅうです。

……「最近感じている“SNSの罠”」「わざわざ雑誌にお金を払ってもらうために考えていること」「たとえ売れなくてもやらなければならないテーマ」「ジャーナリズムに必要な循環とは」など本記事の続きの他、本誌では『anan』『SWITCH』『dancyu』編集長にも「私のベスト企画」を聞いています。

 

『編集会議』2017年春号は「記事論」「メディア×働き方」を総力特集
 

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◇改めて知りたい「ネイティブ広告ハンドブック」
 

【特集】その記事は“売りモノ”になるか――記事で問われるメディアの真価
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◇フローレンス駒崎弘樹「その記事に“意志”はあるか」――記事が社会を動かす
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