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デジタルコミュニケーションでつながった日本とヨルダンの笑顔の輪

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2016年6月20日「世界難民の日」にスタートした国連UNHCR協会「つなごう難民プロジェクト」。プロジェクトのサイトやイベントを通して、日本の人たちに難民問題を身近に感じてもらい、難民と笑顔でつながることを目的としている。

前列左より、国連UNHCR協会 朴景任さん、サイバーエージェント 末永剛さん、流石組 南流石さん、流石組 村越義人さん、サイバーエージェント 安藤啓一さん、後列左より、国連UNHCR協会 鈴木夕子さん、サイバーエージェント 箸尾拓哉さん、サイバーエージェント 山本純さん、国連UNHCR協会 小川由紀夫さん、サイバーエージェント 杉本卓さん、サイバーエージェント 奥泉将章さん、ドローイング&マニュアル 唐津宏治さん。

難民問題を若者にも伝えたい

難民問題は日本でも報道されているものの、日本人にとっては遠い国のできごとであり、これまではネガティブなイメージで訴求されることが多かった。「まずはこの問題を自分に近いものとしてとらえてほしかった。そのため、明るい側面を打ち出しながらターゲット層を広げ、若年層にもアプローチをしたいと考えました」と、国連UNHCR協会 朴景任さんは話す。

協会では若年層に訴求するべく、Webを使った施策は必須と考えていたものの具体的な取り組みに着手していなかった。また本国でもWeb を使った施策はなく、打開策を求めて声をかけたのが、Webに強いサイバーエージェントだった。

依頼を受けたサイバーエージェント 箸尾拓哉さん、 杉本卓さんは、若い人たちに難民支援への興味を喚起するためにはSNSが有効と考え、そのアテンションとして言葉がなくとも通じる、ダンスなど身体を動かすことに行き着いた。それを受けて同社の末永剛さんは「動き=ダンスが必要ならば、ダンサー・振付演出家である南流石さんの力を借りよう」と、モーションクリエイティブカンパニー流石組(さすがぐみ)にコンタクトを取った。

これまでに幅広い世代とのダンスプログラムを国内外で実践してきた南流石さんは、プロジェクトへの参加を即決。「私は人を楽しませることや人の心を温めることが生業。今回のプロジェクトでも、私がやることはこれまで同様、国境言語世代を越えた“ 優しさ”を提供することと思い、参加を決めました」。その後はチーム全体で“ 優しさの輪”を広げていくためのアイデアを考えていった。

辿り着いたテーマは「見て、聞いて、話そう」で、「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿から動きのヒントを得ている。流石組の村越義人さんは「三猿の思想は日本だけでなく、アジアの多くの国に共通するもの。これをベースにすることで日本と遠く離れた中東の難民とも心の中で繋がることができるのではないかと考えました。私たちのテーマは三猿をダブルミーニングで真逆の意であえて捉え、直接難民の方と触れあうことで日本人にも身近に感じてもらうきっかけをつくろうと考えました」と話す。

モバイルサイト(日・英)

このテーマの実現は、国連UNHCR協会にとっても大きなチャレンジとなった。従来は本部から送られてくる報道写真などを使っての広報だったが、今回は何もないところから企画し、アウトプットまでを日本でつくりあげた。さらにこのプロジェクトを実現させるために、南流石さんを含むチームでシリア国境に近いヨルダンの難民キャンプを訪れることになったのである。

サイバーエージェントチームが訪問したのは、8万人を収容するヨルダン最大のザータリ難民キャンプ。撮影期間2日というタイトなスケジュールの中で、キャンプ内でワークショップを行い、個人の家なども訪問。滞在中に、約40カ所を回った。ディレクター 鈴木陵生さん、唐津宏治さんは80組を超える人を撮影した。

「現地はかなり厳しい状況でしたが、ワークショップを通して、子どもたちの元気な笑顔に出会うことができました。しかし、この笑顔はこれまでのつらいことを乗り越えた上での笑顔であることを私たちは理解し、日本に伝えていくべきだと思いました」(南流石さん)。

PCサイト(日)

仕事ではなく自分ごととして取り組む

プロジェクトのサイトではヨルダンでのワークショップなどの動画を公開した他、動画ジェネレーターを導入。自分あるいは友人などを撮影した動画を投稿すると、難民キャンプで撮影した人々の映像とランダムに合成され、笑顔の輪でつながった一つの映像が完成する。ローンチ後、中高生からの評判がよく、積極的に動画がアップされたという。

「世界各国のUNHCR事務所に情報をシェアしたところ、明るい側面からアプローチする方法は初めてだと驚かれました」(同協会 鈴木夕子さん)。

ヨルダンでのワークショップの様子

サイバーエージェントチームはWeb 周りだけではなく、同協会の活動の一つである街頭での啓蒙と募金活動のための立体的なチラシ、イベント用の顔はめパネルの制作など、リアルでのコミュニケーション施策にも取り組んだ。

同協会 小川由紀夫さんは「サイバーエージェントと組んだことでテクノロジーを利用したコミュニケーションの新たなアプローチを発見することができたと思います。今回、スタッフの皆さんは難民問題を自分ごと化して取り組んでくれて、イベントなどにも積極的に参加してくれました。だからこそ、当初の課題を解決するコミュニケーションを構築できたと思います」と振り返る。

プロジェクトサイトはこの春で一度クローズする。しかし、「私たちの思いは期間で区切ることはないから、これからもプロジェクトの活動を続けていきます」と南流石さんとサイバーエージェントのメンバーたちは話している。

動画ジェネレーターで動画を上げるまでのステップ(英)