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世界的広告賞ONE SHOW、日本勢ゴールド受賞者たちのコメント

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先週、ニューヨークで行われた世界的な広告賞「THE ONE SHOW 2017(ワンショー)」の授賞式では、日本からエントリーした数多くの作品が受賞を果たした。

既報のとおり、44回目を迎えたONE SHOWには今回、73カ国から2万1844作品のエントリーがあり、そのうち23カ国の受賞者に243本のペンシル(70のゴールド、75のシルバー、98のブロンズのトロフィー)が贈られた。

日本からエントリーしたものでは、7作品がゴールドを、17作品がシルバーを、13作品がブロンズを獲得している。メリット(ファイナリストの意味合い近いONE SHOW独自の入賞作品の呼称)74作品を含めると、日本から入賞した作品の合計数は111だった。

ゴールドには、ホンダの「Honda. Great Journey.」がBrandingとCraftの2部門で、パナソニックの「Life is electric」がPackaging部門で、電通の「The Study of Human Being」(広告電通賞展のポスター)がCraft部門で、RC Corp. France-Japonの「The Washi Lingerie Poster」がCraft部門で、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「Gravity Cat」がMoving Image Craft部門で、カモ井加工紙の「mt ex 3331」がImmersive部門で選出された。

今回のONE SHOWで審査員を務めた電通クリエーティブ・ボード エクゼクテイブ・クリエーティブ・ディレクターの古川裕也氏は、「カンヌ、D&ADに比べると、特徴がちょっと見えにくいONE SHOWだけれど、ペンシルを受賞した仕事はひとつのはずれもなくレベルが高かった。どのアワードも競い合うようにカテゴリーの新設統廃合が行われているが、ここでも、Responsive Environments、Intellectual Property、さらに特別賞としてCultural Driverなど、僕たちの仕事の可能性を拡張しようとする新しいカテゴリーが見られた」と話す。

また「全体の一等賞は、The Refugee Nationだった。それに拮抗してWe’re The Superhumans、The Field Trip to Mars、The Swedish Numberなど。けれど、いちばん多く壇上に上がってどのウィナーよりも大きな拍手を浴びたのは、デザイン・カテゴリーで歴史的な数のペンシルを獲得した八木義博・筒井晴子のふたりだった。すばらしい」とした。

以下では、ニューヨーク現地での贈賞式に出席をし、【ゴールド】を獲得した作品を手掛けた日本人受賞者たちのコメントを紹介していく。

ホンダ「Honda. Great Journey.」(Branding/Craft部門)

――電通 クリエイティブディレクター 八木義博氏/同 コピーライター 筒井晴子氏

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「Honda. Great Journey.」は、自動運転で何ができるのかというシミュレーションのプロジェクトです。安全や渋滞の緩和など、自動運転のよいところは議論されています。でも本来、人が移動するということはどういうことなのか。もっと夢や好奇心をくすぐる、わくわくする何かではないのか。“Great Journey”という人類の大移動をたどるという物語で、Hondaらしい投げかけをしました。

「Honda. Great Journey.」はパナソニックの「Life is electric」と並んで、審査でもっとも長く議論がなされた作品だったと思います。3Dプリンタでつくったプロトタイプのシミュレーションと、そのモビリティが走ったであろう景色を旅のステッカーでシミュレーションしたブックと、両方のアプローチが高い表現力で達成されていることに、絶賛の声が上がりました。“Great Journey”というコンセプト、表現力、それをHondaが発言している、新ブランディングであるとことが評価されたと感じます。

このプロジェクトが目指していることが、予想以上に理解されるとともに評価され、「このプロジェクトが本当に好きだ」といろんな人に言っていただけて、うれしかったです。

――もり クリエイティブディレクター 原野守弘氏

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「Honda. Great Journey.」は、スペキュレイティブなプロダクトデザインをブランディング活動として制作し、そのドキュメンタリー映像をジャーナリズムを通じて発表するという仕掛けと、それらをパッケージするグラフィックデザイン群という、大きく2つの要素でキャンペーンを設計しました。

今回の金賞2つは、BrandingとCraftのそれぞれの部門で一つずついただいており、企画者として非常に嬉しく思います。株式会社もりは、“クライアントの未来研究所”でありたいと考えているのですが、その成果が世界レベルの賞で認められたということは、今後の自信にもつながりました。

他に受賞したいずれの作品も、勇敢なクライアントさんの存在が非常に大きいです。会場でも、どのようにクライアントを説得しているのか、という質問をたくさんいただきましたが、実はあまり細かくは説明していないんです。お任せしますよ、という感じで発注いただいていまして、細かいチェックのようなものはほとんどありませんでした。

そうした信頼をいただくことが、今回の受賞の最大の原動力になっています。そして、それに応えられたということで、非常にホッとしているところです。最後になりますが、関係者のみなさん、他の受賞者のみなさん、おめでとうございます!

パナソニック「Life is electric」(Packaging部門)

――電通 クリエイティブディレクター 八木義博氏/同 コピーライター 筒井晴子氏

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商品を広告するプロモーショナルなことだけではなく、企業が何を考え、何を愛して事業に取り組んでいるかを伝えるブランディングを目指しています。それがデザインにできることだと考えています。もしも、電気の姿を見ることができたら――、人の想像力を信じる新しい「投げかけ」の表現を目指して制作しました。

受賞できたのは、表現に必要な(過不足ない)クラフト力と、新しいブランディングの達成という両方の力だと思います。審査しているときにも多くの議論が生まれましたが、カテゴリーごとの評価というよりは、このプロジェクト全体にゴールドを与えられたと感じています。受賞することによって、多くの人がこのプロジェクトを目にし、あれこれ想像して、新しいムーブメントが始まるといいなと思っています。

電通「The Study of Human Being」電通広告賞展のポスター(Craft部門)

――電通 クリエイティブディレクター 八木義博氏/同 コピーライター 筒井晴子氏

コンセプトは“The Study of Human Being”です。アドバタイジングは、どれだけテクノロジーの進化によってその手法が変わってたとしても、「人」を表現するものである。そんなコンセプトをつきつめた表現です。

受賞できたと思うポイントは、“The Study of Human Being”と写真表現。見る人に物語を感じさせる隙間のある表現だったからだと思います。審査中はポスターをじっとみている、審査員の滞在時間の長いポスターだったと感じます。評価がはっきり分かれる作品だと思っていたので、よいほうに評価をいただけて本当によかったです。

――電通 アートディレクター 小野恵央氏

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「広告電通賞」は日本で最も歴史のある広告賞です。「優れた広告は、鋭い観察眼で人間を見つめ、その心理や習性を深く洞察した上で生み出される。それは時代の流れによって広告の在り方が多様化しても変わらない、普遍的な価値である。」というコンセプトのもと、ビジュアルを開発しました。

単調で安易な表現はつまらないが、難解になっても伝わらない。目を引く鮮度のある表現、心を留める奥行きのある思想、その両方が大切だと考えます。世界の多様な広告やデザインに造詣が深く、人種も嗜好性も異なる審査員の方々に選んでいただけたことで、普遍的な価値があったと認められたようで、嬉しく思います。

RC Corp. France-Japon「The Washi Lingerie Poster」(Craft部門)

――博報堂 アートディレクター 永松綾子氏

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フランスを拠点に日本人デザイナーが展開している下着ブランドのポスターを制作しました。リヨン産のシルクはとても柔らかくて軽い。その素材の良さと日本の感性が光る商品の魅力を、一枚の薄くて軽い手漉き和紙で表現しました。

日本独特の緻密で繊細なクラフトが受けたことが、今回の受賞につながったのではないかと思います。本当に薄いので、ぜひトラベリングワンショーで実物を見ていただきたいです。

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また、日本からエントリーした作品で、ゴールド・シルバー・ブロンズを受賞した作品一覧は以下の通り。

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