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オムニコム・グループのヘルスケア特化の広告会社、CDMが日本に進出

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オムニコム・グループ傘下にあり、ヘルスケア領域に特化した広告会社のCDMが、5月15日にCDM 東京を設立した。CDMにとってアジア初進出であり、東京が世界で9番目のオフィスとなる。

またCDM 東京は、同じくオムニコム・グループに属するPRエージェンシーのフライシュマン・ヒラード・ジャパンとのジョイントベンチャーの形での船出となる。今後の新会社立ち上げを視野に、CDM 東京設立の経緯、さらに日本のヘルスケア市場の動向をCDMのCEOであるカイル・バリッシュ氏、CDM 東京のアダム・ワイス氏、 フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長の田中愼一氏に聞く。

—CDMの事業概要とは。

カイル氏:CDMは1984年に米・ニューヨークで設立されたヘルスケア領域に特化した広告会社で、東京を含む世界9都市にオフィスを展開し、1200名以上のスタッフを抱える。主要クライアントは、グローバルでビジネスを展開する医薬メーカーだ。医学博士の学位や薬剤師の資格など、専門知識を持ったスタッフも社内に抱え、専門性が求められるヘルスケア領域のコミュニケーション活動をサポートしている。

現在、売上の約8割が医療従事者向けのコミュニケーションで、残りがコンシューマー向けのコミュニケーションであり、専門家も相手にできる高度な学術的、科学的知見が強みだ。

—ヘルスケア領域に特化した広告会社の中で、CDMの強みはどこにあるのか。

カイル氏:ヘルスケア領域のコミュニケーションは、競合との戦いも激しくなっている。コンペに参加をすると5~8社の競合企業と戦わざるをえないこともある。その中で私たちが強みとするのは独自の価値観だ。

私たちは、「Substance(本質を捉えること)」「Style(洗練性を追求すること)」「Conviction(信念を持つこと)」「Grace(品位を重んじること)」の価値を基軸に据えた提案を行っている。

—なぜいま、このタイミングで東京オフィスを開設したのか。

カイル氏:世界の大手製薬メーカー25社のうち、4社が日本に本社を構えるなど、日本のヘルスケア市場が、世界の中で2番目のマーケットであること。さらに近年、日本の大手製薬メーカーのグローバル化が進んでおり、これまでグローバルで多くの医薬メーカーのマーケティング活動をサポートしてきた私たちの知見が、活かせると考えたからだ。

また医薬品の世界同時承認の流れが加速していることも日本に着目した理由のひとつだ。以前であれば新薬はまずアメリカで上市され、ヨーロッパ、オーストラリアと続き、その後に日本で上市された。

そこで日本のマーケターは、他国のマーケット動向を見ながら戦略を考える余裕があったが、そのタイムラグがなくなりつつある。欧米と同時に日本のマーケターも戦略を企画・実行しなければいけない状況と言える。そこで、私たちの支援が生きる場があるのではないかと考え、約1年前から東京オフィスの開設を企画し始めた。

—なぜ、ヘルスケア領域の広告会社であるCDMが、日本ではPRエージェンシーと組んだのか。

カイル氏:PRエージェンシーとのジョイントベンチャーという形式は日本が初だ。両者が力を発揮することで、PRと広告の橋渡しができるエージェンシーになると考えている。

田中氏:私たちの立場から言うと近年、ヘルスケア領域の売上げが大きく伸びており、全体の約3分の1を占めるに至っていることが背景にある。CDMが得意とする製薬メーカーのみならず医療機器メーカー、医療機関、医療系のベンチャー、さらには食品や飲料など一般消費財メーカーもヘルスケアのコミュニケーションに力を入れており、いま日本でこの領域のPRに対するニーズは非常に伸びている。

PRエージェンシーである私たちの機能と、CDMが得意とする医療・医薬に関する高度な知識や広告・クリエイティブ力を合わせれば、クライアントが求める、より統合化されたコミュニケーション戦略を企画・実行できると考えている。

—ヘルスケア領域の広告・コミュニケーションを担える人材は、育成が難しいのではないか。

アダム氏:私は、かつてNYのCDMで8年間、勤務をしていたことがあるのだが、CDMは人材が流動的な広告業界において、珍しく社員の定着率が高いところが特長だ。ヘルスケアの広告会社にはデータ、サイエンス、アートを理解し、文章・言語能力も兼ね備えた社員が必要だ。最初からすべての能力を兼ね備えた社員は少ないが、社員の定着率が高いCDMは、仕事を通じて社員がスキルを身に着けていける土壌があると考えている。

—直近の日本市場での展望とは。

カイル氏:2020年の東京五輪は、日本のグローバル化がさらに進展する大きなきっかけになると考えている。さらに1964年の東京五輪の時と同じように、日本のビジネス、社会、そして日本人の意識にも大きな変革を及ぼすはずだ。

田中氏:社会全体が変容することを踏まえ、多くの企業がいま、2020年をひとつの節目に、その後も生き残れる企業になるための戦略策定を急いでいる。成長産業であるヘルスケア領域も同様で、私たちが支援できる余地は大きいと考えている。