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カンヌならではの「公開審査」とは? — カンヌライオンズ2017レポート

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こんにちは、ADKのニエダと申します。

PR発想とデジタルのアウトプットを武器に、「相棒採用」、「みつかるEテレ」、「FLOWER DRY ALERT」、「着帽手当」、「モーニング at BARBER」などを企画制作しています。

今年のカンヌライオンズのレポートということで、僕が実際に現地を訪れていて、現時点(この原稿を書いている今は6/21の深夜です)でいちばん驚いたことをお伝えできればと思います。

カンヌに限らず、広告祭は受賞作品のボードやビデオをチェックしつつ、気になるセミナーに参加するもの。そんな自分のイメージを裏切ってくれたのが、ライオンズイノベーション、イノベーション部門の公開審査でした。

ちなみにライオンズイノベーションは、実はカンヌライオンズ本体から独立したアワード。その中のイノベーション部門は革新的なテクノロジーと課題解決に与えられるもので、広告キャンペーンだけでなく、プロダクトやプラットフォームが評価の対象となるため、エントリーも広告会社だけでなく、ベンチャーやプラットフォーマーも含めた多種多様な並びに。一種の異種格闘技戦になっています。この公開審査が、とても熱かった……!

この公開審査は、ショートリストに選ばれた作品を対象に3日連続で行われます。セミナー同様、会場には一般パスを持っていれば誰でも出入り可能。審査員も自分たちオーディエンスと同じように座席に着いて、1エントリーにつき20分ほどかけて、登壇した代表者のプレゼンテーションやプロダクト・サービスのデモンストレーションを受けます。

さらにその後、プレゼンテーションと同じぐらいの時間をかけて、各審査員とプレゼンターとの間で質疑応答が交わされます。この部分も完全にオープン。基本は広告祭特有のポジティヴで和やかな雰囲気の中進んでいくんですが、やりとりされる内容自体はシビアなものが多く、時折議論がヒートアップすることも。

またプロダクトもののエントリーの場合は、自分が見た限り全てのエントリーで実際に開発したプロダクトがステージに持ち込まれていて、審査員たちは質疑応答の最中に壇上へと移動し、実際に触れて体験しながら感じた疑問もぶつけていきます。

そこで問われる質問は、例えばこんな感じ。

「今回開発したテクノロジーは、他の領域に拡張できる可能性はある?具体的にはどういった領域?」(NIKE UNLIMITED STADIUM)

「自分たち以外の既存の車椅子製品をどう置き換えていく見込みなの?」(COGY WHEELCHAIR)

「単発施策に見えるけど、継続的なファイナンススキームは構築されているの?」(GRAVITYLIGHT)

テクノロジー自体への質問からコミュニケーションプラン、事業としての継続性の確認まで、同じ「イノベーションを評価する」という視座に立っていても、問われる内容は多岐にわたります。

広告会社で働いていると、競合プレゼンなどで同じお題が複数社に課されることが多いですよね。ただその一方で、自分たち以外のプレゼンテーションやクライアントとの質疑応答を聞くことは原則、ありません。そういう意味でも、カンヌという大舞台にエントリーし、受賞を狙った各社の本気のプレゼンテーションを一気に浴びることができるのは超貴重な機会でした。

また今年のカンヌは現地審査員の定数が大幅に減った影響か、はたまた政治的な問題が一部の国中心に偏った影響か、各部門とも欧米の受賞作の比率が高い印象。そんな状況下で、欧米以外の国々からエントリーしたプレゼンターたちが、自分たちの作品が生まれた背景や意義を、できる限り純度高く審査員に理解してもらえるように腐心するその姿も、日本人として非常に勇気付けられるものでした。

たとえばシルバーを受賞したインドの自動車衝突事故防止プログラム「ROADS THAT HONK」は、インド社会ならではの多言語対応や牛対策の必要性をソリューションに反映したことを、プレゼンテーションの中で情感豊かに説明し、その後の質疑応答での活発な議論を呼んでいました。

ROADS THAT HONK

 

「ROADS THAT HONK」のプレゼンの様子。会場を爆笑の渦に巻き込みながら、インドや周辺諸国に如何に必要なイノベーションだったかを力説

この公開審査時の評価が好結果に少なからず影響したのではないかと思います。

エントリー数とかかる手間を考慮すると、この公開審査を他部門でも採用するのは現実的に難しいでしょう。プレゼンテーション次第で結果が変わり得ることにも賛否両論あると思います。ただ、エントリービデオ偏重とも言われる昨今の広告賞の中で、出品者と審査員とのやりとりを可能にし、審査結果だけでなくプロセスをオープンにするこの試みは広告賞のひとつの未来形とも言えるのではないか、と感じます。

さてカンヌもいよいよ終盤戦。この記事が世に出る頃には、フィルムやチタニウムなど、今年の顔となる作品が決まっていることでしょう。日本をはじめ欧米以外のエントリーがそこにどこまで食い込めるのか。期待しながら発表の瞬間を待ちたいと思います。

贄田翔太郎
アサツーディ・ケイ
コミュニケーション・ディレクター

 

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