コラム

小霜和也の「迷えるデジタルシフト難民のお悩み相談室」

デジタルシフト=マスからWebへのシフトにあらず!真のデジタルシフトを実現するには

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わかりやすく自分事化できる情報でないと、受け入れられない

—MAMADAYSには、「成功する動画のフォーマット」はありますか?どんなクリエイティブだと、最後まで見てもらえる動画、再生数の高い動画になるのでしょうか。

宮下:MAMADAYSに限らず、DELISH KITCHENなど弊社の4つのメディアすべてに共通することですが、「視聴時間に比べ情報量が上回っていること」を大事にしています。レシピ動画なら、冒頭に出来上がりのシズルカットとタイトルを見せ、どんな料理をつくるのかを出す。つまり、オープニングの2、3秒で「この動画を見たらあなたは何を得られるのか」を伝える。視聴者はSNSのフィード上で流し見しているので、まずお客様に対する価値提供から入ることが重要だと思っています。

エブリー MAMADAYS ディレクター 塚原文子氏

塚原:私は去年の12月まで広告会社でCMプランナーをしていて、今年の1月からMAMADAYSでブランドコンテンツを担当しています。MAMADAYSは、「ママの課題解決」を謳って人気を博していましたので、最初はブランドコンテンツでもママの課題が入ったオリジナルコンテンツに近い作りが好まれるだろうと考え、企画していたんです。

でも、クライアントの中には「ストレートに商品紹介をしてほしい」という方も少なくありません。「それならば」と、どちらも作って配信し、比べてみたことがあります。すると自分の予想に反して、ストレートな商品紹介の方が人気で再生数が多かった。それを見て、「なるほど」と気づいたんです。

お客さまは「見たいものを見たい」というだけであって、オリジナルコンテンツもブランドコンテンツも区別なく、「何が言いたいか」がわかりやすく表現されている動画を好む。だから、ブランドコンテンツなのに、微妙にオリジナルコンテンツみたいな風味で商品紹介も中途半端な動画は、「何なの?」という感じでパッと飛ばされてしまうんです。

小霜:テレビCMでもそれは同じで、長年テレビCMの定形フォーマットだった「面白い話+最後に商品紹介」というフォーマットが通用しなくなっていると感じます。要は「商品が何なのかさっさと言ってくれよ」ということです。わかりやすい、シンプルなものが好まれるようになっています。

僕がCMのクリエイティブを担当したキリンのノンアルコール・ビールテイスト飲料「零ICHI(ゼロイチ)」は商品と「○」と「一」の記号を出しっぱなしにして、徹底してわかりやすさを追求しました。放映後のCM調査ではかなりの高評価だったようです。


名久井:少しでもわからないことがあるとCMの評価はすごく下がりますよね。弊社でもアフリカのガーナで乳幼児のための栄養改善サプリを展開しているというCMを、CSRの意味も含めて流しましたが、日本のお母さんたちはほぼ無反応でした。

「都民ファースト」も「アメリカファースト」もそうですが、わかりやすく“自分事化”できない情報は受け入れられなくなっているように思います。ゼロイチのCMはわかりやすかったし、「一番搾り」の製法で作ったノンアルコールビールと聞くと、飲んでみたくなりますね。

小霜:そのくらい記号化しないとダメだと思いました。スライス・オブ・ライフの手法では視聴者に届かない気がして。記号が常に真ん中に出てくるぐらいの図々しさがないと、スルーされちゃうんじゃないかと。

塚原:情報が世の中に溢れていますしね。MAMADAYSでは動画のタイトルも毎回自分たちで考えますが、今までのCM畑の発想を持ち込むとうまく行きません。普通に「簡単」「らくちん」とシンプルに言っている方が伸びる。痛いほど毎日それを実感しています。

エブリー MAMADAYS編集長 宮下ゆりか氏

宮下:ユーザーも賢くなっているので、遠回しに伝えようとするとかえって「広告だ」と倦厭されます。遠回しに意図を感じる動画は避けられてしまいます。

広告コンテンツでも、ターゲットであるママへ「(動画を視聴すると)あなたにとって何がどういいのか」と得られる実利をダイレクトに表現すると再生数は伸びます。咀嚼しやすく、結論のメッセージが頭に残り、アクションしやすくなるからです。シェア、コメントもしてもらえます。すごくシンプルな論理です。

小霜:今はサムネイルとテキストだけで動画の内容を伝えられないと、見てもらえませんよね。これまでの動画は作るまでがクリエイティブの人間の仕事で、サムネイルやテキストは運用する人がつくっていましたが、それではいけないと思っています。

先日作ったWeb動画でも、最初はテレビCMの感覚で、ラスト3秒でブランドロゴを出そうと編集していましたが、いや、Web動画の場合は他の動画への誘導のリンクも出す必要があるなと思い直し、エンディングを6秒に変更しました。でも、こんなつくり方をしているチームはまだ少ないと思います。

塚原:「そういうきめ細かな仕事をやっていかないと」と思いますが、現状、そこを両立できるポジションの人は広告業界にいないですよね。MAMADAYSでは、編集長の宮下自身が動画をずっと制作してきましたし、サムネイルや投稿文も動画制作者が自分で考えています。投稿してからも視聴者の反応を見ながら、投稿文のちょっとした文言を変えるなど改善しながら運用しています。

小霜:エブリーのようにメディアでもあり自分でもコンテンツも作っているところだと、一貫して考えられるので、制作と運用とのすれ違いもありませんよね。

次ページ 「「デジタルシフト」という言葉が誤解を招いている?」へ続く

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