コラム

小霜和也の「迷えるデジタルシフト難民のお悩み相談室」

デジタルシフト=マスからWebへのシフトにあらず!真のデジタルシフトを実現するには

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【前回の記事】「デジタルシフト相談室「クリエイターの皆さんのお悩みに答えます」編」はこちら

小霜和也著「急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。」(7月1日発売/宣伝会議)
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新刊『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』の発売を記念して、著者の小霜和也氏が、現場でデジタルシフトに取り組む皆さんからの悩みに答える本連載。

最終回にあたる今回は、味の素 広告部長 名久井貴詞氏と、レシピ動画メディアDELISH KITCHENを展開するエブリーから「MAMADAYS」編集長宮下ゆりか氏、同 ディレクター 塚原文子氏との座談会をお届けします。

広告主、メディア、クリエイティブそれぞれの立場から「デジタルクリエイティブ」への取り組みを語っていただきました。

左から、エブリー MAMADAYS ディレクター 塚原文子氏、エブリー MAMADAYS編集長 宮下ゆりか氏、no problem 小霜和也氏、味の素 理事 広告部 兼 グローバルコミュニケーション部 クリエイティブ統括部長 名久井貴詞氏。

モノを売る広告には、ある「構造」が存在していた

小霜:僕が名久井さんに興味を持ったきっかけは、以前、対談をご一緒にしたときに「テレビCMでABテストをやっている」という話をされたことでした。成功したCMがあったので、その要因を確かめるために、全く違う商品で同じ構造で試してみたと。面白い方だなと。

名久井:「TossSala®(トスサラ)」のテレビCMの話ですね。トスサラは粉ドレッシングとクルトンなどのトッピングが入ったサラダ用のシーズニングです。実は最初のCMは、商品が全く動かなくて、失敗しているんです。その後、全国販売に拡大するタイミングでクリエイティブをつくり直したのが菅野美穂さん出演のCMです。このCMは大成功で、トスサラが売れすぎて、工場の生産が追い付かなくなり、私の会社員人生で初めての“休売”になったほどでした。


そのときに「なぜこのCMはヒットしたんだろう?」と考え、CMのカット割りを調べてみたら、“ある構造”に気づいたんです。その構造を、全く別の商品で試してみたら、また売れたんです。

味の素 広告部 兼 グローバルコミュニケーション部 クリエイティブ統括部長 名久井貴詞氏

塚原:私はママ向け動画メディア「MAMADAYS」のディレクターをしているので、味の素さんのCMはよく研究しています。確かに菅野さん出演のCMから構造がちょっと変わったと思ったんですけど、それが何かはよくわからなくて…その“ある構造”って何ですか?

名久井:人には「知らないことを理解していく順番」というものがあって、それを理解して、その順番になぞらえて情報を出していくとヒットするということです。特にトスサラのような新発売の商品の場合は「お客様は何も知らない」という前提で考えなければならない。弊社の最近のCMを5本ぐらい集めて見ていただくと、その構造がよくわかると思いますよ。

弊社はテレビCMだけではなく、Web動画にも取り組んでいます。以前、海外赴任(赴任先はタイ)していたとき、インドネシアで企画した「Dapur Umami」という料理番組の動画は、今流行りの料理動画の先駆けになりました。


ASEANでは、日本のような料理本が見当たりません。それよりも動画を使いこなします。素材を入れるタイミングなどはレシピ本よりも映像で見たほうが早いですからね。それで日本に戻ってきてからも、「日本でも料理動画の時代が来るからやったほうがいい」と言い続けたんですが、なかなか理解されなくて。やっと帰国から5年経ったタイミングで、料理動画が人気になって、ほらこうなったでしょと。

今では、YouTubeに「味の素KK公式チャンネル(AJINOMOTO OFFICIAL)」をつくり、さらにエブリーさんのレシピ動画メディアDELISH KITCHENで弊社の商品を紹介する取り組みもしています。

宮下:先ほどの「トスサラ」も、DELISH KITCHENでも動画を展開していただいていますよね。


—成功する「テレビCMの構造」は、Web動画にも通用しますか?

名久井:Web動画の構造化は実験中の段階で、まだ答えが出ていません。メディアも日々進化しているので、短い経験からでは考えにくい難しさがありますよね。

小霜:名久井さんは実験好きだから、動画でも法則を見つけて活躍されているのかと思ったら、実は苦労されているんですね。

名久井:Web動画は去年から急激に伸びてきた領域で、考察がまだちゃんとできていないんです。味の素社内での事業部から広告部へのWeb動画の依頼は増え続けていて、今年とうとうテレビCMの本数を超えました。

その中で、1つ面白い例がありました。「香味ペースト」という商品があって、テレビCMとWeb動画を同時に流したんです。テレビはタレントの出演するCMですが、Webはレシピ動画にして戦略を変えました。

通常であれば、テレビCMを流すと売上が上昇し、流さなくなると売上も落ちるのですが、香味ペーストはテレビCMをやめても売れ続けていたんです。それはWebの「秒速メシ」動画の効果ではないかと思っています。「秒速メシ」は、火や包丁を使わず簡単にできるレシピを紹介しています。


販路も、ドラッグストアやコンビニなど、どうやら普段と違うところで売れているのではないかと類推しています。要するに、30~50代の奥さんではなく、FacebookやLINEで「秒速メシ」に接触した20代、しかも男性が買っているんじゃないかと。違うお客さんをつかんだ感覚がありました。

小霜:30~50代の料理の仕方と、20代の料理の仕方が違うという仮設があるとします。30~50代は家族のために料理をし、20代は自分1人のためにする。そう考えると、30~50代にはテレビCMで家族が喜んでいる姿を見せ、20代には簡単で美味しいというアプローチがよいと。そういうことでしょうか?

名久井:そのように予測しています。好評を受けて、今はシリーズ化を始めています。

次ページ 「わかりやすく自分事化できる情報でないと、受け入れられない」へ続く

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