若手書店員が考える、書店の「編集力」

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書店で本を売っていくためには、これまで以上に書店員の力が問われている。売り場を活性化させ、売上につなげる――。そのために、現場では日々どのような「編集力」が発揮されているのか。青山ブックセンター本店で書店員を務める益子陽介氏に聞いた。

書店員は何を編集するのか。それはもちろん、本の並びです。アイデア発想の本の隣に『六法全書』を置くわけにはいきません。ただ、それはあくまで大前提。これからの書店員は本を「メディア」と捉え、書店という場所に存在するあらゆる「メディア」を編集する必要があると思います。

書店員は日々、本と向き合っています。私が勤める青山ブックセンター本店は表参道と渋谷の中間地点にあり、書店の場所柄を踏まえ、お客さまの好みを考慮して本の並びを決めています。担当しているビジネス書で大事にしているのは「提案性」と「検索性」とのバランスです。

マーケティング、ブランディング、企画など、当店のお客さまには創造性に関する本を求められる職種の方が多くいらっしゃいます。アイデアや意外な出会いを求めて来店されるお客さまのために、いかに好奇心を刺激できるかを考え、こんな本がありますよと「提案」する気持ちで並べています。

一方、実務書や資格書などは「検索」のしやすさが鍵です。出版社ごとにシリーズを取り揃え、わかりやすく並べます。並べるジャンルによってそのバランスをいかに取るか。書店員の力量が問われるところです。

「検索」という言葉からはAmazonが思い浮かぶかもしれません。ほしい本が決まっているのならAmazonを使うほうが便利です。ですので、書店では意外な本との出会いをいかに楽しんでもらえるかを第一に考えるべきだと思います。

ただ、隣り合う本同士の関係性、いわゆる「文脈」に固執してしまうと、その文脈だけが本を並べる際の基準になってしまい、棚の視野を狭めてしまいかねません。しかも、その並びが見事であればあるほど、それを組み替えるのは難しくなるものです。

福岡にあるブックスキューブリックの大井実さんが著書で書かれているように、その本が本来持っている価値、その本が自分のお店のテイストやお客さまの好みに合うのかどうかをフラットな視点で見極める力もまた問われるのだと思います。

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本の並びに限らず、書店を構成する要素は他にもあります。雑貨、ギャラリー、カフェ、イベント……。それらすべてを「メディア」と捉え、一つひとつがその書店のイメージにどう結びついているのかを意識することが大切だと思います。

あえて言えば、ブランディングです。特に大切なのがイベント。本との出会いを立体的なものにし、読書体験を拡張してくれるものだからです。

加えて、書店員自身も重要なメディアです。書店員がインプットをしつづけ、学び、変化していくことは書店それ自体の変化に直結します。イベントという非日常の体験、書店員という常に変化しつづける存在、本を始めとしたあらゆる「メディア」。これからの書店員には、それらを俯瞰して編集する視点が求められるのではないでしょうか。

ここ数年、書店の閉店がよく話題になりますが、あらゆる書店がその危機にさらされています。活字離れではなく、人口自体が減っているのでそれは避けられない問題です。好みもどんどん多様化する中、書店の競争相手はもはやあらゆるコンテンツだと言えます。

だからこそ、いいものはいいと声を上げ続けたい。最終的には、理屈ではない「想い」の込もったコンテンツだけが生き残ると信じています。

編集者も営業担当者も書店員も「メディア」です。メディアの本分が「伝えること」である以上、その一冊をその一人に届けていくことでしか何も変わらないと思います。

青山ブックセンター本店
益子陽介 氏

1986年生まれ。広告代理店勤務の後、横浜「BUKATSUDO」で本屋講座を受講。2015年12月より青山ブックセンター本店に勤務。ビジネス書、新書を担当。

 

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