【前回のコラム】「私を変えた凄い人たち —5人目 太田恵美さん」はこちら
今回、このシリーズの3人目で紹介した岡康道さんについて、全面的に書き直したいと思います。
短いコラムの中で恩人から教えて頂いたことを紹介する構成であるがゆえに、
いくつかのことを紹介してしまうと、恩人の人物描写がおろそかになるというジレンマがありました。それは、構成力も含め、私の筆力の問題なのですが…。
岡さんは、豪快で、繊細で、戦略家で、破壊者で、知的で、ワイルドで、自分勝手で、後輩思いで、と多岐に渡って二律背反の魅力の溢れるユニークな方なのに、前回のコラムの岡さんはまったく面白くないのです。
これでは恩人に対して失礼なので、もっと血の通った岡さんを描きたいと反省していました。今回、それができるかどうかは別ですが…。やってみます。
二十数年前、私が電通の新入社員として配属された4CD局に、岡さんはいました。局の新人5人の能力開発総責任者だった岡さんに初めて挨拶したところ、
「おまえ、ラグビーやってたんだって?」と、その週の土曜には岡さんが主将の社会人タッチフットボールチーム『東京リベンジャーズ』の練習に連れて行かれ、有無を言わさず入部させられました。
経験者でない方、興味がない方には、「似ている」と言われますが、アメフトとラグビーは、ボールが楕円形であること、屋外でやること以外は共通点がないというくらい全く違う種類のスポーツです。
いろんな会社から集まった社会人のメンバーが日本一を目指しているチームだったので、“余暇の楽しみ”とは思えないくらい練習がハードでした。また、アメフトのミニ版であるタッチフットボールに身体がまったく馴染めなかったこともあって、しばらくして「辞めようと思ってます」と申し出たら、「考え直せよ」でも、「やめるなよ」でもなく、「あれ? おまえ、クリエイティブ局に残りたくないの?」と微笑みを浮かべながら岡さんは言ったのです。
もちろんジョークなのですが、新人のクリエイティブ適性を見極める役職の人の言葉ですから、ある種の脅しにも聞こえます。でも、「おまえの査定を下げて局外に出すこともできるのだよ」とまでは明言していない。とても巧みです。余白を残し、相手に想像させる効く言葉遣いは、岡さんとの日頃の会話の中で幾度となく体験することができました。それは、岡さんの書く広告コピーや文章にも表れています。