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山田ズーニー氏「書くことが、未来を創る」

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「編集・ライター養成講座」での山田ズーニー氏による表現力を育成するワークショップは、「自分が本当に伝えたいことを見つめるきっかけとなった」と、毎期多くの受講生から支持を得ています。同講座の修了生でありライターに転身しておよそ1カ月のニシブマリエさんが、ズーニー氏の“プロフェッショナルたる所以”についてインタビューしました。  Text:ニシブマリエ

—ベネッセで「小論文編集長」として高校生に文章表現を教える立場から、自らが「書き手」として独立されたきっかけは何でしたか。

山田ズーニー氏

高校生の考える力と書く力を伸ばすことをひたすら考え続けて16年。人事異動がありました。会社員なので当然のことと頭では理解していたものの、長年愛情を持ってやってきた仕事と別れるという喪失感に、体がついていけなくて。

書く力を伸ばす仕事は私のすべてだったことに初めて気付くんですね。だったら次は、自分の意志で始められて、自分で幕を引けるように、会社員はこれでおしまいにしようと決意しました。

フリーの編集者としてやっていくぞと思っていたとき、糸井重里さんから「書くことについてのコラムを書いてほしい」とのお話をいただきます。2000年当時、インターネットが普及してビジネスでもプライベートでも「書く」シーンが増えている中で、大人も文章表現に困っていると。

それが現在まで17年続いている『ほぼ日刊イトイ新聞』の「おとなの小論文教室。」の始まりです。これがなければ、編集者から著者への転身も、会社員からフリーランスへの転身もなかったと思います。

—情熱を注いだ編集者の仕事。高校生にとっての、どのような存在を目指していましたか。

高校生に響く教材をつくるため、彼らが生まれた年からの年表を作ったり、高校生の流行に身を投じてみたりと、顧客を知って知って、自分の感性を高校生に近付けるよう努めました。

すると、表紙からテーマまで彼らの好みが自ずと理解できるようになり、社長や本部長も驚くほど利用率や満足度が上がったんです。

でも、このやり方になって初めて行き詰まりを感じるようになりました。結局のところ、33歳が17歳にすり寄って、言わば大人の私を消し去って、高校生から嫌われることを全部排除していくうちに、自分がどんどん透明になっていくのです。

だったら、究極は高校生を編集長にしてしまえばいい。そこに33歳である大人の私が関わる意味を忘れていました。高校生の生活圏の中では開けられない新たな引き出しを開け、新たな境地に読者を誘うことが編集者の役割だと気付きました。

流行の言葉で言うと、「嫌われる勇気」を持つということですね。

—「編集者」から「書き手」になり、見える世界はどのように変わったのでしょうか。

とにかく書くのが辛かったです。5日かけてようやく1本、というスピードでした。16年間編集者として生きてきた私は、著者にダメ出しをする立場だったんですね。

編集者からライターに転向した人はみんな経験していると思いますが、よちよち歩きの書き手「山田ズーニー」に対して、もう一人の「編集者の山田」が思いっきりダメ出しをして叩き潰すんです。

それでも2年の歳月をかけて書き上げた著書『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』を出版することができました。ただ実は、この本が出る前よりも、出た後のほうがキツかったです。

今でこそ超ロングセラーなどと言っていただけますが、出版当初は重版もかからず、自分の世界はなんにも変わらない。あんなに全身全霊でこれ以上書けないものを書いたつもりだったのに、です。私はどんどんへこんでいったんですね。

独立して3年、もう辞めようと思ったとき、『日本語文章がわかる。』(アエラムック)が書店で目に入りました。

辞める自分への見せしめのためにこれを買い、帰りの小田急線の中でパラパラと読んでいると、「日本語文章がわかるブックガイドリスト50」に、谷崎潤一郎さんたちと名を連ねて、無名の新人「山田ズーニー」が載っているんですよ。

手が震えて、涙がボロボロ出ました。まだ頑張れ、もうちょっと頑張れ、と言われたような気がしました。

『伝わる・揺さぶる!文章を書く』第48刷をはじめ、2017年に重版された本。ロングセラーを多数著述。

—ズーニーさんの文章表現ワークショップでは、過去を丁寧に掘り下げていくことから始まります。この方法はどのようにして編み出されたのでしょうか。

高校生には、書く前にまずは「考える」ことから始めようと伝えてきました。自分自身が何者かを知るには、過去を掘り下げるしかありません。過去を振り返るとき、大切なのは「自分自身への問い」。

一番輝いていたと思えるのはいつか、あのとき決断をしたのはなぜか。生まれたときからの自分の主旋律を辿るワークは、明日の自分が見えずにアイデンティティがぐらぐらする中で、私自身を支えた術でもあるんです。

二人一組になって、私が作成した質問リストに沿って、根本思想を引き出す質問を投げ合うという講座を設計しました。

「問い」を立てる習慣はワークショップの中だけでなく、生活の中でも役立ちます。まったく未知のことが起こっても、時間や空間を広げながら問いに向かっていくと、自分で何とか進めていくことができます。

—とにかく一般論ではなく「自分の言葉」で伝えているところに、私も含め、憧れているライターは多いと思います。ズーニーさんの言葉はなぜ読者の心に届くのでしょうか。

……続きは『編集会議』最新号をご覧ください。

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