シェアすることは正義だろうか?
劇中で描かれる、ザ・サークル社の中で大切にされているモットーがあります。それは、
Sharing is Caring
というものです。自分の現状をシェアすることは、相手のためになること。相手を大切にしていることの証。ひいては、自分がいるコミュニティへの貢献でもあると。まさに“絶対善”なのです。
逆に言えば、シェアしないのは自分自身に問題があるから。現にエマが「サークル」にあまり自分のことをシェアしなかったとき、社のカウンセラーから「それは問題ですね。もしかするとシェアが少ないのは自己評価が低いからかもしれません。一緒に改善していきましょう」と診断されてしまうのです。
冷徹で極端ですが、分からなくもない立論ではあります。やはりシェアという行為は、承認欲求と深く結びついているし、それは自己評価をどのように捉えているかという問題と密接にリンクしているからです。
また、こうした考え方を示す、もう一つの強烈なフレーズが「秘密はウソ」であるというもの。これはエマ自身が述べる台詞です。
秘密にしているということは、公にはできないこと、やましいこと、真実ではないことが含まれているから。だからこそ、シェアすべきであると結論付けられます。この立場は強烈ですね。いわゆる「裏アカ」などというものは全否定されてしまいます(笑)。
言ってしまえば、究極のオープン主義、透明主義だと言えるでしょうか。ガラス張りにして、オープンであること、シェアすることが絶対的な正義なのです。
作品では、イーモンがどうしてこのような考え方に傾倒していったのか、その理由についても明かされています(もう少し掘り下げる余地はあったようにも感じましたが)。そしてそれは、納得できる考え方でもあるように思いました。
実はイーモンは社員から陰で「高等オタク」と呼ばれているのですが、技術や人間への信頼性をポジティブに思考し続ければ、このような境地に至るのも一方では自然なことだと言わざるを得ません。“高等”という言葉にあらわれているように、意識高く考えるとこのような視点になってしまうものなのです。究極のオープン主義は、究極の性善説の裏面だと言えましょう(このような考え方は、シリコンバレーのビジョナリーなIT経営者との親和性が高いです)。
物語が進むにつれてエマは、こうした思想は「形を変えた支配ではないのか?」──と問題意識を感じるようになっていきます。そしてこれが物語の変曲点となるのですが、そんなエマに共感しながら、私たち自身もシェアというものが持つメリットとデメリットについて考え直さざるを得なくなるはずです。
そして拙著『シェアしたがる心理』では、こうしたテーマを考えるための思考の補助線を実は提起していたのでした。
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