コロリド初の長編映画が今夏公開

『ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017』の大賞を受賞。
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA ／「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

弭間さんが今年宣伝を担当するのが、長編アニメーション映画『ペンギン・ハイウェイ』である。この作品は、『夜は短し歩けよ乙女』で知られる作家 森見登美彦さんが2010年に発表した小説で、第31回日本SF大賞を受賞した。

主人公は、小学校4年生の「アオヤマ君」。ある日、通学の途中の空き地でペンギンの群れを見つける。「僕らの街になぜペンギンがいるのか」。その出来事をきっかけに、アオヤマ君はペンギンにまつわる謎を研究し始める。森見ファンの間では「異色」と言われるこの作品が、今夏、アニメーション映画として公開される。

アニメーション制作を手がけるのは、スタジオコロリド。第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞ほか数々の賞を受賞した『フミコの告白』で話題を集めた石田祐康さん、スタジオジブリ出身の新井陽次郎さんなど、20代を中心とした若手クリエイターが多数在籍する、2011年に設立されたスタジオだ。

最近では劇場作品のみならず、YKKがグローバルで展開するアニメーション動画やマクドナルドのCM「未来のワタシ」シリーズなどを手がけている。

コロリドはこれまでに『陽なたのアオシグレ』『台風のノルダ』などオリジナル短編を発表しているが、原作のある長編は今回が初めてとなる。『台風のノルダ』の宣伝を担当した弭間さんは、コロリドの魅力を次のように語る。

「コロリドらしさは、なんといっても躍動感のある動きとダイナミックなカメラアングル。これは20代が中心のコロリドだからこそ生まれてくる表現だと、私は思っています。それからCMに彼らのアニメが使われる理由のひとつであると思いますが、キャラクターのかわいらしさと明るい色使いもコロリドならでは。年齢や性別を問わず、幅広い層に受け入れやすい絵柄と柔らかさが、魅力です」。

さまざまな期待が寄せられる『ペンギン・ハイウェイ』では公開に合わせて、この映画とコラボレーションする企業を募集する。

『ペンギン・ハイウェイ』というアニメ作品の映像を使うことのメリットや価値はどんなところにあるのだろうか。「洋画、邦画においても、いまや企業とコラボレーションし、CMなどで映像を一部活用してもらうことは特別なことではなくなっています。

ただ実写ではできないけれど、アニメだから可能になることは、その商品やブランドに合わせて“キャラクターを動かせる”、つまり新たに作画ができるということです。

例えば主人公に商品を手にしてもらい、それを飲むシーンを、その映画の世界観の中で描くことができます。すでにある物語に企業のメッセージを自然な形で載せていくことができると考えています。『ペンギン・ハイウェイ』はファンタジーでもありますが、舞台はある街で起こる話なので、いろいろな商品で活用していただけるのではないかと思います」。

日本のアニメ界において、ジブリに続く次世代のアニメスタジオとして注目されているコロリド。アニメ界やアニメファンからは、その将来性に期待が寄せられている。

「コロリドが描く世界観はアニメファンを超えて、多くの人に受け入れられるでしょう。私たち宣伝チームもその将来性と可能性にかけているので、彼らの魅力を最大限に伝えていきたいと考えています」。

弭間友子（はずま・ともこ）

映画宣伝会社レオ・エンタープライズ、20世紀フォックス映画宣伝部、マンハッタンピープルを経て、2012年東宝入社。主にアニメ映画を中心に宣伝戦略を立案。映画 『君の名は。』、『夜は短し歩けよ乙女』などを手がける。