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プロジェクトは発酵させよ!「発酵文化人類学」の著者が語るその意外な共通点とは

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エンジニアリング型とブリコラージュ型

小倉:『発酵文化人類学』の中で、エンジニアリングとブリコラージュという話をしているんですが、前田さんの本を読んで「これ、プロジェクトも一緒だな」と思って。

前田:はい。

小倉:プロジェクトにもエンジニアリング型と、ブリコラージュ型があると思って。僕はいま地方住んでいて、いろいろわけわかんないことやってるんですけど(笑)、考えてみると全部ブリコラージュ型のプロジェクト進行なんですよね。

前田:ブリコラージュ型、というのは端的に言うとどういう・・・?

小倉:やりながら考えるというスタイルです。つまり、グランドデザインがない。
全体から逆算していくエンジニアリング型のプロジェクトに対して、目の前にある細部(ディティール)を詰めていって、そこで考えたことを次のステップの足掛かりにしていくのがブリコラージュ型のプロジェクトの進め方。私が地方でやってるプロジェクトは全部そう。
実例でいうと、僕いまラボを建ててるんですけど、これってプロジェクトじゃないですか。でも設計図を作ってないんですよ。

前田:設計図無しで作れるものなんですか?

小倉:もともとあったのは、「僕が住んでいるところの半径2キロメートル以内から新しい菌を発見する」というプロジェクトでした。そのための研究できる施設をDIYで作ることになりました。当然、いままで自分で実際にラボを作ったことはないので、調べながら作り、作りながら調べることになります。
その時に、最初から建築士や工務店に頼んで、「この日までにこういうタスクがあります」みたいな仕事の進め方じゃなくて、全部自分でまずやってみて、やってみてから考えるという進め方をしているんです。
僕がやってる町おこしのプロジェクトも、いい転がり方をする時ってエンジニアリング型からブリコラージュ型に切り替わるタイミングが必ずあります。今日は前田さんに、ブリコラージュ型のプロジェクトってどうよ、というのを聞こうと思っていました。

前田:本書で扱っているプロジェクトでも、システム開発のような「決められた機能、決められた仕様のものを決められた納期までに納品する」というエンジニアリング型のプロジェクトもあるんですけど、新規事業系は…

小倉:絶対ブリコラージュ型になるでしょ!

前田:そうそう。

小倉:新規事業って、不確定要素に満ちていてどんなインパクトが出るかわかりませんよね。で不確定要素に挑む時って「選択と集中」ができないじゃないですか。だって何に集中すればいいのかわからないから。僕はそういうプロジェクトの進め方でずっとやってるから、それってどうなんだ、っていうのをプロジェクト管理のプロに聞きたいわけ(笑)。

前田:ありがとうございます(笑)
私にとっては、書籍の出版、というのも一つのプロジェクトでした。書籍をスケジュール通りに出すということを考えると、打つ手は少ないほうがいいですよね。でも、たくさん売るとか、この本でいろんな人のプロジェクトがうまく行く、ということを勝利条件に置くと、やるべきことと選択肢はすごく増える。
そうしているうちに、小倉さんの言うエンジニアリング型にこだわると逆にうまく行かなくなってきてしまって。最終的にはエンジニアリング型とブリコラージュ型の合体系のような形で進めていきましたね。

小倉:新しいものを作るとか、今までやったことのないことをやる時って、そもそものゴールが決まっていないから「選択と集中」ができないですよね。だから、「何をやってもいい」というスタンスの方が勝てる確率は高まりますよね。
ただ、全くのフリーハンドというのも逆に何をしたらいいのかわからなくなっちゃう時があって。地域で何かをやる時って、そこの土地、コミュニティ、産業とかっていう制約が否応なく入ってくるんですよね。その「制約がある状態の中での一番いい選択」を取り続けていくのが、ひょっとしたらうまく行くコツかもしれないですね。

次ページ 「制約がクリエイティブを生む」へ続く