業種を超えた「ごった煮」からマッチングを生みたい
暦本:研究の萌芽的なものは大学にいっぱいあるんですよね。技術はいろいろとあるのだけど、結局マッチングだと思います。技術の萌芽的なものを、どういう製品に、どういうところに使うか、どういう社会に役立つかというマッチング。いいマッチングは大きくスパークすることがあるけれど、ひとりで研究だけをしていると、そのマッチングのところまでなかなか出ていけない。
鈴木:そうですよね。私たちの車いすも、近山さんに出会うまでは病院の中だけ。しかも病院の中でも、リハビリに関わる方だけにずーっと留まっていた。
暦本:特殊用途ですよね。
鈴木:本当に閉ざされた中にいて、でもそのためにつくったんだというところで固まっていたんです。それをバッと取り去っていただいた。
鈴木:お医者さんが考える、とにかく転倒することがなく、安全に自分の力で移動してもらうということを突き詰めてこういう姿になったんです。それは偶然だったんですよね。ただどの大学にもあると思うのですが、実験から出られない、殻を破れていないアイデアが山ほどあります。近山さんがそういう現場に行ってみたらきっと「これってこういうものとつながるんじゃないか」と思われるのではないでしょうか。
近山:職種がまるで違うこの3人がACCについて対談をするということ自体、ここ数年考えられなかったことじゃないですか。よく考えればみんなやっていることは一緒じゃん、という時代になってきている気がする。
いろいろなところにクリエイティブが必要で、あるいはクリエイティブの現場に技術やデータが必要だというように、すごくシームレスな状態になっている。おもろいことをやっている人ならとにかく集まれ、といったいい意味でのごった煮の時代なのかなと。
暦本:この賞がつながりやマッチングのきっかけになればいいですよね。
鈴木:私たちは本当にたまたま目にとめていただいたので。この部門にチャレンジしていくことが出会いの場になるんじゃないですかね。多職種他分野の方々がシームレスに集まってひとつのところを目指すという場が、ありそうでなかったですから。私にとってはここしかこういう場はありませんからね。
近山:僕としては、「いいものができたので、いいコピー書いてください」というやり方もいいんですが、「ものとしてすでにメチャクチャおもしろい
、あるいは「みんながおもしろくなる可能性を感じられるもの
、そういうものを一緒に作れるようになるともっと可能性が広がると思います。これは一体誰のためにつくるのか、世の中にどう役立つのか、という初期段階でみんなが一緒くたになった方がよりおもしろいものができるんじゃないかと思うんです。
「「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】」バックナンバー
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