時間軸の違う「企業」と「研究者」のつながりの場
近山:僕は広告業界にずっといるので、スパンの捉え方が例えば大学の研究室とはずいぶん異なるのではないかと感じることがあります。当然ですがプロモーションを起点とする場合、ビジネス成果が早い段階から常に問われる。そういった背景の中でACCがクリエイティブイノベーション部門を設立したことに、大きな意味があると思うんです。
暦本:イノベーションのいろいろな立ち位置の人がいていいと思うんですね。もしかしたら、(製品となるまでの)上流下流まで全部ひとりでやる必要はないかもしれない。お互いに、「こういうのがあるんだな」「こっちではこうなってるんだな」と見えてくることのあるつながりの場になったらいいかなと思います。
近山:暦本先生にとって、「理論はずいぶん前からあったけれど、ようやく世の中に普及し始めたな」「やっと具体的な変化が起こり始めたな」という時間的なギャップは、一般的にどれくらいあると感じていますか。
暦本:研究から製品までの期間は、もちろん個別に違うわけですけれど、多分10年というのは一つの単位だなと思っています。我々がやっていて、もっと早く出るつもりのものもあるんですけど、振り返ってみれば10年くらいは経っている。
鈴木:COGYはまさに10年ですね。
一同:笑
鈴木:起業してすぐに出る、と思ったのですが(笑)。先生のおっしゃる通り、ちょうど10年。大学の研究のスピードと事業化のスピードとの兼ね合いが、大学ベンチャーという立ち位置になるとまた微妙になりまして。研究中の物が製品になるのには、けっこうデリケートなところがあります。研究中のどのあたりまで事業化していいのかとか、製品にしていいのかとか。東北大学にも使われていない特許技術が山のようにあるのですが、そういうものもどんどんチャレンジをして、世の中に認めていただけるチャンスがここにできたんだなと。
今、研究や特許で終わってしまっているものが日本には相当数大学で埋もれているので、それらに「社会を変えていける可能性があると感じられる場になると思うんです。本当に、自分たちの研究が世の中に認められるって、ありそうでなかなかないですから。ACC賞という大きい場で、研究中のものを評価してもらえるというのはすごく素晴らしいと思います。
近山:正直言って、昨年初めて参加して、実際に最終審査会のプレゼンが始まるまでは怖かったんですよ。ACCのように歴史と権威のある賞のイノベーション部門って、いったいどんな審査がされるんだろうと(笑)。ところが、ふたを開けてみたら審査委員には暦本先生をはじめとしたすごいスペシャリストたちが集まっていて、オープンで風通しのいい雰囲気を感じました。上から否定されたり押し付けられるような感じは一切なく、審査されているみなさんからは“これから新しい時代を拓いていこう”という感じがすごい伝わってきました。今応募するかどうか迷っている人、カテゴリーが合っているだろうかと不安な人がたくさんいると思うんですけど、じゃんじゃん出した方がいいと思います。暦本先生は優しいです(笑)。
「「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】」バックナンバー
- 「広告のフロンティア拡張は今」 小杉幸一さん×ラフォーレ原宿「LAFORET HARAJUKU GRAND BAZAR 2017 SUMMER」チーム座談会 — 2018ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Dカテ(デザイン)シルバー受賞作品(2019/7/04)
- ACC賞審査委員長対談 多田琢氏(フィルム部門)×菅野薫氏(ブランデッド・コミュニケーション部門)(2019/6/26)
- 「広告のフロンティア拡張は今」 保持壮太郎さん×マクドナルド「ヘーホンホヘホハイ」チーム座談会 -2018 ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Bカテ(プロモーション/アクティベーション) ブロンズ受賞作品(2019/6/25)
- ACCメディアクリエイティブ部門 箭内道彦審査委員長×村本美知さん×大澤あつみさん 座談会『メディアのチャレンジ、それはメディア×アイデアの総力戦!』(2019/6/19)
- 「広告のフロンティア拡張は今」中村勇吾さん×三菱自動車工業「雲海出現NAVI」チーム座談会 - 2018ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Aカテ(デジタル・エクスペリエンス)シルバー受賞作品(2019/6/17)
- 「広告のフロンティア拡張は今」 橋田和明さん×原野守弘さん対談。 -2018 ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Cカテ(PR) シルバー受賞作品:GODIVA「日本は、義理チョコをやめよう。」-(2019/6/14)
- 辺境の異種格闘技。ACC賞「ブランデッド・コミュニケーション部門 」審査委員座談会<Part2>(2018/6/12)
- なぜACC賞にデザインのカテゴリーをつくったのか。 「ブランデッド・コミュニケーション」部門 審査委員座談会Part1(2018/6/06)
新着CM
-
販売促進
ファンタジー好きに訴求するグミ カンロ、空想の果実をイメージした新商品
-
販売促進
横須賀市、メタバースで観光誘致 AIアバターの実証も開始
-
AD
宣伝会議
【広報部対象】旭化成のグローバル社内イベント成功事例を紹介
-
コラム
サムライマックのCMに「ありがとう」と言いたい(遠山大輔)【前編】
-
AD
Bigdata × Technology 未来の価値を創造する データソリューシ...
-
クリエイティブ (コラム)
アイデアが苦し紛れにくっつく瞬間がある――「KINCHO」ラジオCM制作の裏側
-
特集
はじめに/あとがき/解説でざっくりわかる 宣伝会議のこの本、どんな本?
-
販売促進
ベビー用品の速達デリバリー 日本トイザらス、30分以内におむつやミルクを配達
-
販売促進
「認知獲得」「販促」の両方使えるリテールメディア特性がメーカーの混乱を招く