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コラム

陰気なアラサーが世界を回す

自分らしさが決められないアラサーの私たちには、「迷子案内ビジネス」が効く

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わからないから、「外部委託」をはじめよう

それを象徴するように、最近は迷子の案内をしてくれる「外部委託」サービスが人気になってきているのではないだろうか。

例えば、最近コスメ市場においては、「分析〜提案型」のサービスが多くなってきたように思う。先日原宿では1人ひとりの肌を「分析」し、オススメのアイテムを「提案」するSK-Ⅱの期間限定ストアが設置されていた。一方で、資生堂は「肌パシャ」アプリを公開し、手軽な「肌診断」ができるサービスをユーザーに提供している。私たちが何もわからない迷子でも、とりあえず診断してもらえれば、プロの視点から適切なアイテムをリコメンドしてもらえるのだ。

ファッションにおいても、ZOZOのおまかせ定期便は、プロのコーディネーターが自分のなんとなくの好みからその人にぴったりのファッションアイテムを「分析」し「提案」してくれるシステムである。ZARAには、パーソナルスタイリングサービスというのが2015年ごろから本格スタートしており、徐々にいろんなメディアで取り上げられるようになっている。その他、airClosetという、サブスクリプションとスタイリストによるコーディネートを組み合わせたサービスも存在している。

日常的に身につけるべきファッションやコスメという領域に関して、「何を選んだらいいかわからない。プロの専門家に見てもらって、勝手に選んでほしい」というニーズは確かに存在しているのだ。

時代の迷子たちを導く「迷子案内ビジネス」が加速する

大人になればなるほど、「その歳でそんな服着る?」が怖くなる。「この場所でこれ着る?」が怖くなる。自分の好きなように好きな服を着るようでは通用しなくなっていくのだ。

しかし、現代は流行もカリスマもいない無法地帯。「とりあえずこれで」も通用せずに、「あした、なに着て生きていく?」と問われる時代だ。それほどファッションに興味はないし、気づけば私たちはどこに行くべきかわからない「迷子」になっているのである。

音楽も今夜見る映画も今日食べるお店もレコメンドされる現代に、毎日の服を選ぶことはいささか難しすぎる。だからこそ、これからはどんどん専門家に「外部委託」するサービスが増えていくのではないだろうか。

画像認識システムやレコメンドのアルゴリズムの精度は日々上がっているからこそ、私たちの「判断力」は、専門家だけではなく、機械に外部委託できるようにもなっていくだろう。

テクノロジーによって造られた、過剰に情報過多な環境によって、興味も文化も細かく分断された現代で「迷子」となる私たちを救うのは、これまたテクノロジーによって造られたレコメンドサービスの数々なのではないだろうか。自分のアイデンティティをファッションという手段をもって表現する手法を見いだせない自分もまた、興味があること以外はできるだけ「全部誰かに決めてもらう」という時代を渇望している人間のうちの1人だ。

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。SNSに自撮りをアップし続ける「自撮り女子」として注目を浴びる。現在では、自撮りのみならず、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。