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【リレー式コラム】これからのコラボのつくり方② そのアイデアが社内を通らないのには理由があった?! — 午後の紅茶×ポッキー流の企画突破術—

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肩書きからの解放、完全宿題制

プロジェクトを進めるにあたり、実はもうひとつやめたことがあります。それは、チーム全員が専門の役割を一旦捨てる、という試みです。ほとんどの会社では名刺の肩書き通りの役割を全うすることが求められていると思います。しかし、立場や役割にとらわれない、もっと自由なものづくりがあってもいいのではないか、と私たちは思うのです。

この考え方を形にしたのが「完全宿題制」というルール。通常だとパッケージデザインはクリエーターとデザイナーが考えるものとされていますし、商品コンセプトはメーカーの社員が企画することが多いと思います。しかしこのプロジェクトでは、全員が自分の役割から一度離れて同じ立場で「宿題」と称された課題に取り組みました。

実際の例をあげてみます。「ターゲット女性(=自分)が幸せを感じる瞬間を5つ」考えてみる。「セットで買うことが一目で伝わるデザインアイデア」を手描きで描いてくる。「食べたらびっくりするような午後ティーとポッキーの味の組み合わせ」を考えてみる。「パッケージに登場する男女の恋物語のシナリオ」を創作する。

こういった課題を会議の終わりに次回までの宿題としてみんなで設定し、持ち寄るのです。ポイントは、マーケターも研究所員もクリエーターも同じフォーマットで取り組むということ。実を言うと、そこにクオリティや実現可能性は求められていません。大切なのは、その場に集まる全員が等しく脳を使って考えを一巡させ、同じフィールドに立って会議を始める、ということ。とにかくこのコラボでは、上司や部下、発注社や受注社という枠を取っ払って、フラットにアイデアの議論をすることを常に心がけました。

その道のプロであるというプライドや専門性が仕事に役立つ局面は多々あるかと思いますが、時にそれはプロジェクトの分業化や、“私が考えるのはここからここまで”と、自分で限界を設定してしまうことにもつながります。もしかしたら、思いもよらないアイデアが生まれる機会を逃しているかもしれないのです。

この話をきいて、デザイナーでもない自分がパッケージに口出しするなんて…と遠慮してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、そういった「素人の視点」が、停滞した状況をブレイクするきっかけになったりするものです。

実際に私も、当コラボ開発中は、味覚のプロを相手に「このフレーバーは甘すぎるor美味しくない」だの「もっとこんなことできないんですか」だの、かなり好き勝手に意見を述べていました(笑)。工場の生産ラインの事情も知らないくせに…と研究所メンバーは内心イライラしていたかもしれませんが(笑)、このようにあえて異なるバックボーンを持つメンバーのアイデアをぶつけ合うことで、刺激を感じながら、全員でブラッシュアップを重ねていったからこそ、このコラボ商品は生まれたのです。

私自身、このコラボプロジェクトでの「完全宿題制」を経験してからは、新入社員や他部署の人のアイデアこそ、自分の凝り固まった考えに予想外の気づきを与えてくれる貴重な意見だと捉えられるようになり、今ではスタッフィングの際に、あえて違うバックグラウンドの人とプロジェクトチームを組むことを心がけたりもしています。

さてここまで、企画を練り上げて通す上でのプレゼンや宿題の仕組みをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。もし今これを読んでいるあなたが、いいアイデアを思いついたのに社内を突破できないことでお悩みなら、目の前のその上司を説得することに時間を割くべきではないのかもしれません。少し視点を変えて、会議そのもののやりかたや、役割分担を変えてみる。一見、遠回りに見えるやり方が実は近道だった、なんてこともあるものです。

次回は、私たちのコラボ商品の顔でもある「パッケージ」に込めた様々な仕掛けを、余すことなく大解剖する予定です。ご期待ください。


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