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「面白い」を決めるは誰?【芸人・五明拓弥 × マーケター・井上大輔 対談】前編

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お笑いトリオ「グランジ」の五明拓弥さんは、東京ガスのラジオCMを機に広告制作に携わり、同作でTCC新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞・メディア部門ラジオ最優秀賞など数々の広告賞を受賞し、昨年には、『全米は、泣かない。』(あさ出版)が出版されました。
今回は『たとえる力で人生は変わる』の著者 井上大輔さんとの対談を敢行。芸人である五明さんとマーケターである井上さん、それぞれが広告業界について感じていることを語り合ってもらいました。

左)井上大輔 氏
右)五明拓弥 氏

コピーもネタもAIが作る時代が来る……?

『全米は、泣かない』

井上:五明さんの『全米は、泣かない。』(あさ出版)を読みましたけど、素晴らしいコピーを書かれていますね。「故人の感想です。」とか、すごく面白い。あのコピーを著名な先生が添削していましたけど、添削される前の方が好き、という意見もあるんじゃないでしょうか。。

いつも疑問に思うんですけど、コピーにしてもCMのクリエイティブにしても、「これはいい」とか「これはダメ」とかを決めるってすごく難しいですよね。誰が何をもって正解とするのかと。お笑いにもそういうことはありますか?

五明:芸人がそれを最初に食らうのは、1年目とか2年目の時です。事務所でネタ見せのライブ出演へのオーディションがあるのですが、それを審査するよくわからないおじさんがいるんです (笑)。

つたない若手芸人でも、その人のダメ出しが的を射ていないことは確実にわかるんです。「好き嫌いで言ってないか?」みたいな。結局ふたを開けたら、「全部あんたの好みかよ」と思いましたね。全員ではなく、ごくごく一部ですが。

井上:広告の世界でも当てはまることはありそうです。いま広告の世界では、クリエイティブの評価の仕方が変わってきています。簡単に言えば、売上にどれくらい寄与したのかを数字ではじき出し、その数字でクリエイティブの評価を出す、ということが試行錯誤されています。クリック率や反応率の高い言葉を選んでコピーを作るAIも出てきました。

アメリカのバーガーキングはAIのコピーでキャンペーン展開して話題になりました。あえてシュールな感じで。「チキンはサンドイッチになるため道を渡った」とか。

五明:おもしろい! 何か深い意味がありそうですね(笑)。 そういえば、ちゃんと面白い回答ができるAIの大喜利マシーンができたそうです。でも、そうなってくると、怖いなあ……。

井上:評価でAIを使うのはどうですか。よくわからないおじさんが好みでライブに出す出さないを決めているのを、AIがデータをもとにこれが面白いと客観的に判断して決めるというのは。

五明:そのオーディションはすごくシュールでしょうね。AIに向かってコントをするんでしょう? むしろ、その様子を俯瞰から撮った絵が一番面白いかもしれない。怒ってAIを殴る芸人がいるかもしれないですし。

井上:アハハハハ。たしかに。広告界では、上司や担当者の主観で評価していたものを、科学的な分析に基づいてシステマチックに評価するということが盛んに研究されています。

五明:いいコピーかどうか、パーセンテージで出るんですよね?でもそれって、いい思いをする人と嫌な思いをする人がいそうですね。

井上:それこそ昨年、西野カナさんが楽曲を作る時に、どの言葉に共感するか、事前にアンケートをとっていることをテレビ番組で話して、批判が集まっていましたよね。マーケターからすると、調査をすることが消費者に寄り添うことだと思っているので、西野さんは「顧客志向」でイケてるな、進んでるな、と思うわけです。

五明:たしかに、受け手の意見を反映した歌詞なわけですから、お互いハッピーですよね。それが正解かどうかはわかりませんが、送り手と受け手に確かにメリットはあるわけで。

お笑いに当てはまるかどうかは、なんとも言えませんけど……(笑)。

次ページ 「マーケティングでネタ作りは成立するのか」へ続く