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客観視とマインドセットで“当たり前”を共感ストーリーに変える②

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日本文化の本質的な魅力を世界に発信する「ハリズリー」

土屋:当社がフラクタにECサイトの制作サポートをお願いしてから、はや8年ほどになります。河野さんとお会いするうち、「日本の文化を正しく、楽しく世界に広めたい」という思いが共通していることがわかり、「株式会社ハリズリー」という、日本のブランドビジネスを支援する会社を立ち上げることになりました。

労働集約型産業の宿命でコスト競争にさらされ、衰退産業へと姿を変えてしまった日本のものづくりに、自信と誇りを取り戻してもらい、独自の価値観と神秘性を武器に、世界で勝負できる“本質的な”ブランドをつくることが目標。いわゆる“クールジャパン”の発信とは少し違います。

河野:クライアントとして土屋鞄とおつきあいしていく中で、経営者がマーケティング・コミュニケーションについて理解を深め、ちゃんとした技術と工夫を積み重ねていけば、表層的なテクニックに走らなくてもブランド力を高めていけると確信しました。しかも、社長である土屋さんだけが卓越した力を発揮しているのではなく、職人、それを伝える人、支える人、すべての社員たちによるコンビネーションでシナジー効果を上げているという点は、他の企業がすぐにトレースできる成功パターンとも言えるでしょう。

一方で、ひとつの会社の成功だけで「日本のブランドを世界に広めていく」という大きな目標は実現できないとも思いました。だから「ハリズリー」で、他業種のものづくり企業も巻き込んでいきたいのです。

土屋:鞄だけでなく、お酒、お茶、伝統工芸など、日本には世界に誇れる素晴らしいものづくりがあります。ただ残念なことに、その価値を伝える力が欠けていたり、お客様のニーズに合った商品づくりに苦労している企業が多いのです。その不足を補うために、弊社がフラクタと一緒に培ってきたデジタルテクノロジーやノウハウを惜しみなく投入していくつもりです。

河野:土屋鞄は、すでに台湾に店舗を、香港にショールームを持っていますし、インバウンド需要で国内の売上も伸ばしておられます。最近の社員さんたちの様子を見ていると、過去の成功に甘えることなく、次のステージに向けてブランド力を高めよう、より良い商品をつくろうという願望を持ち始めているように見えます。経営者層だけではなく、現場レベルにまでムーブメントが浸透しているところに、頼もしさを感じますね。

土屋:私たちよりもデジタルコミュニケーションに強みをもつフラクタが助けてくださっているおかげです。テクノロジーの発展で、どこにいてもスマホひとつで商品を売れる時代が来ました。

これを、競争が激しくて大変だと捉えるのではなく、日本のものづくり企業にもチャンスが巡ってきたと捉えれば、未来は大きく変わります。ワインが売れるなら日本酒も売れる、フランスのクリスタルが評されるなら江戸切子の魅力も世界に伝わるはず……と考えています。自分が良いと感じるもの、後世にも残したいものがきちんと評価される市場をつくっていきたいですね。

河野:さらなる高みにもっていくという課題に熱意を持って取り組み、足場を固めてからカテゴリーを広げ、日本のものづくりをどんどん世界に売り込んでいきましょう。

土屋鞄製造所神田オフィス(東京都千代田区)は、社員同士の交流がしやすいよう、十分なスペースを設けている。写真は屋上のフリースペース。

土屋成範(つちや・まさのり)氏

土屋鞄製造所代表取締役社長。同社創業者であるランドセル職人土屋國男の長男として、創業者の背中を見て育つ。海外生活の経験を経て1994 年に土屋鞄製造所へ入社。2017年より現職。2018年に第35回優秀経営者顕彰最優秀経営者賞(日刊工業新聞社)を受賞した。

 

河野貴伸(こうの・たかのぶ)氏

フラクタ代表取締役、土屋鞄製造所取締役。企業のブランディングを推進するサービス・テクノロジーを提供するフラクタを2013年設立。EC-CUBEエバンジェリスト、Shopifyエバンジェリスト。2011年より土屋鞄製造所のブランディングとデジタルコミュニケーションをサポート。