2019年のカンヌ勝者は「ビジョン・アクティビスト」
〜“Dream Crazy”に少しだけ足りなかったもの〜

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こんにちは、電通CDCの嶋野です。

普段はクリエーティブとPRをベースにした仕事をしています。

今年でカンヌは4回目。

毎年、カンヌの会場で受賞作のリールを見るのが大好きで、滞在期間中は地下に引きこもってモニターの前で過ごしていました。

※余談ですが今年はPCの台数が大幅に減りました。来年快適なリールライフを目指す方は、マイ・イヤフォン、「JINS SCREEN」、「ユニクロ」のダウンを持参して朝からご覧になることをオススメします。

今回は、主要10部門の色付き受賞作(部門内外の被り無しで500-600作程度)を網羅した中から、特に気になったトレンドを1つご紹介します。

2017年からの進化 “ビジョン・アクティビスト (Vision Activist)”

最初にお断りすると、1年単位でトレンドが大きく変わることはありません。

ただ、大本命だったNIKE“Dream Crazy”※が「思ったほどの影響力を示せなかった」という視点で全体を見直すことで、今年の進化が少し見えてきます。

※昨年最も議論を起こしたキャンペーン。国歌斉唱で起立しなかった元NFLのコリン・キャパニック選手を起用し、信じる道を進む勇気を応援する、まさに“Just do it”な広告。

 

一時代を築いた「ソーシャルグッド」はその企業である必然性(Brand Relevancy)が薄いことがありました。
2017年のカンヌを席巻した「Fearless Girl」は問題提起に止まる施策でした。
そんな中、今年の受賞作は、まず企業や団体ならではの強い意思(Vision)があり、さらに賛同する人を増やし・巻き込むような仕組み (Activation)まで設計することで大きな成果をあげました。まさに彼らこそ「ビジョン・アクティビスト」と呼ぶのにふさわしい存在です。

いくつか事例をごらんください。

 

A : IKEA “ThisAbles”
※Health&Wellness部門グランプリなど、多数受賞

IKEAが障がいを持った方向けに3Dデータで提供した、家具のカスタマイズツール。ランプのボタンを肘で押せたり、ソファの高さを上げたり、それぞれの個性に合わせて、IKEAの家具を自由に調整できるようになりました。

 

B : The Tampon Book
※PR部門グランプリなど、多数受賞

ドイツにおいては日用消費財の税率は7%なのに、タンポンは高級材と同じく19%であるという事実に着目し、タンポンを書籍の中にいれて販売(本の税率は7%で済む)。ロビイング型の施策。

 

C : Burger King “Whopper Detour”
※Titanium / Mobile / Direct部門グランプリ

バーガーキングのアプリを使ってマクドナルド(の半径600ft以内)に行くとWhopperが1セントでもらえるキャンペーン。マクドナルドを常にライバル視(揶揄)するバーガーキングならではの話題作りで、アプリ1位に。オンライン注文も大きく拡張した。

 

これら受賞作の共通点は

1.その企業・団体が目指す未来である “ビジョン”が明確にあり、
2.人々が広げやすい「コンセプトワード」が真ん中に置かれ、さらに、
3.人々がその仕組みに参加し、周りにその運動をつなげていくための手段が用意されている

の3つだと思います。

この共通点の話を、もう少し詳しく解説すると、

“ThisAbles”の場合には、「すべての人に使いやすい家具を提供したい」というIKEAの明確な信念を、3Dデータとしてアジャスターを提供するという手段によって、世界中の誰もが参加し・利用できる仕組みをつくっています。

“The Tampon Book”にも女性の不平等を解決するという明確な意思、そして展示のみのコンセプト本ではなく、実際に賛同者に1万冊も販売してユーザーの参加導線を用意したことでSNSでの同時多発的ジャックを起こし、社会を動かしました。

“Whopper Detour”は「マクドナルドに勝つ」という永遠のテーマ設定に対して、シンプルで強力な誘引装置を、しかもバーガーキングらしい手段で実行した点が素晴らしいです。技術的には決して新しくないこのキャンペーンが3部門のグランプリを獲ったのは、ネット注文時代を見据えたインフラ設計さえも成し遂げたという将来のactivation設計も評価されたのかなと思います。

(日本だとPayPayが100億円キャンペーンでやったようなインフラアプリの普及を、1セントのハンバーガーだけで実現したようなもの。)

つまり「その企業ならではの強いビジョン」でまずは吸引し、そこに「人々を巻き込む仕組み」を組み込むことでコミュニケーションを機能させた仕事が今年は評価されたと思います。

今年の圧倒的本命だったNIKEの“Dream Crazy”。
各部門で手堅くGOLDをとるものの、現地では思ったほどの熱狂がなかったのは、その手法があくまでも2年前の“Fearless Girl”と同じメイクカンバセーション型であり、ユーザーの行動を促す仕掛けが足りなかったのが理由なのかもしれません。
(とはいえ、グランプリを2個受賞しているから十分すごいのですが。)

長くなりましたが、今年のカンヌレポートは以上です。日本にとって厳しい年であったことは間違いないのですが、その一番の理由は「社会問題の小ささ」ではなく、「ヴィジョンの弱さ」だなと感じます(ideaやactivationは悪くないのですが)。ブロンズ以下まで丁寧に目を通せば、社会問題がなくとも受賞したVisionaryな仕事がたくさんありました。

今年のカンヌはひさびさに「広告として」おもしろい事例がたくさんありました。
それらもどこかの機会でまとめたいと思います。

嶋野裕介
電通 CDC クリエーティブディレクター/PRプランナー

1980年生まれ。東京大学卒業後、電通へ。マーケティング局、営業局、デジタル局、シンガポール勤務などを経て、3回目の転局試験でようやくクリエーティブ局へ。デジタル&PR を中心にした統合ディレクターとして「BOSS|ゴジラ 顔の映らない主役」「3cmMarket」「TOYOTA #金曜日の新垣さん」「グリーンバックアイドル Mika+Rika」などを制作。SPIKES ASIA, NY Festivals、ヤングカンヌなどの審査員。

 

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