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コラム

『ガラスの仮面』に学ぶマーケティング

『ガラスの仮面』に学ぶマーケターのヒント⑤「完成イメージを固めてから取り掛かる」篇

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完成してからの「なんか違う」を起こさない!“絵を見る”ことの3つのメリット

この『逃げた小鳥』のエピソードは、まさに私が大切にしている“絵を見る”ことのメリットを伝えているのではないかと思うのです。私は“絵を見る”ことのメリットを次のように考えています。

【1】共通の“絵を見る”ことで、制作時の食い違いが少なくなる

CMでもWebでも、制作時に生じてほしくないトラブルのひとつが、依頼内容と大きく食い違ったものが出来上がってくることではないでしょうか。この原因は、依頼時に発注側と制作側が共通の完成イメージを描けなかったこと、制作側が制作時にチーム内でそのイメージを共有しきれなかったこと、それによってさまざまな点で小さな食い違いが起こり、最終的に大きなひずみを生んでしまったことにあると思います。つまりそれを避けるためには、制作前に共通の“絵を見る”ことが非常に大切だと思います。

【2】“絵を見る”ことで、逆に見えない部分も見えてくる。

昨今は特にデジタル面やデータ連携面などで専門性が高くなってきてしまい、完成イメージを描こうとしても、自分だけの力ではどうしようもない部分が多くなってきました。そんな不得意な点が出た際に、分からないことを隠して曖昧に制作・企画進行させたりすると、思いもよらないところでトラブルが発生するものです。それを避けるためにも、できない点・分からない点を早めに明確にして、その点を得意とする人に助けを請うほうがスムーズに進むようになります。むしろその人がジョインすることで、自分の見えていた絵が発展することもあります。自分のできない点を明確にするためにも、自分が見える範囲でしっかりと“絵を見る”ことが大切だと思います。

ところで、パントマイム『逃げた小鳥』において、北島マヤが捕まえられなかった小鳥を姫川亜弓はどう捕まえたのか、気になりませんか。
姫川亜弓は、小鳥が手乗りできるよう指を出して呼びよせ、舞い戻ってきた小鳥を愛でながら、そのままスムーズにカゴに戻したのでした。

出典:美内すずえ『ガラスの仮面』第1巻(白泉社)

そんな単純なやり方!?とツッコミたくなるのですが、マヤと亜弓が初めて演技で競い合うというドラマチックなこのシーン。何回、読んでも興奮します。と同時に、今回読み返してみて、“絵を見る”ことの3つめのメリットがあることに気づきました。それは……。

【3】“絵を見る”と、解決策はとてもシンプルになることがある

企画時や制作時などにおいて命題の解決策を考える際に、ターゲット・インサイトやこれまでの施策分析結果、様々なデータを複雑に考えすぎて、ニッチもサッチもいかなくなることはありませんか。そんな時は一度冷静になり、整理して改めて問題を見直してみると、シンプルな解決策に気づくことがあります。まるで姫川亜弓が小鳥を捕まえた時のように。

何十回読んだ後でも、読み直してみるとこのように新しい発見がある、それが『ガラスの仮面』の魅力でもあるのです。どこかに存在しているであろう新しいプロモーションのアイデアや新製品のキャッチコピーよ。私のもとに降りてきておくれ。私の指にとまっておくれ。そう藁をもすがる想いで日々仕事しているのですが、逃げた小鳥の姿がまだ見えていない私には、小鳥は戻ってきてくれそうにありません(涙)。

【このシーンの背景】

学芸会で芝居の楽しさを知った北島マヤは、本気で演劇を学びたいと、研究生を募集している劇団「オンディーヌ」を訪れる。しかし入団には試験の上に入学金、月謝もかかることを知り、諦めざるを得ない。窓の外にぶら下がり、なんとか劇団の練習を覗き見ようとするマヤに劇団員はドーベルマンを放ち、ドーベルマンに襲わせるのであった。そんなマヤを救ったのは、ちょうど劇団を訪問していた速水真澄と同劇団員の若手有望俳優の桜小路優。さらに真澄はマヤが見学できるように取り計らうのであった。

■登場人物の紹介

桜小路優
劇団「オンディーヌ」所属の俳優。マヤより2歳上。劇団「オンディーヌ」の入団試験を受けに来たマヤに一目惚れし、彼女のためには見返りを求めずにいろいろと世話を焼く、“いいひと”の代表のような青年。麻生舞という彼女がいたが、舞台『忘れられた荒野』でのマヤと共演を機に彼女への恋心を再燃させる。マヤにお揃いのイルカのペンダントをプレゼントして、自分の気持ちを伝えようとすることもあるが、いつでもマヤの気持ちを優先してあげるという、本当に“いいひと”なのである。