デジタル時代の「心を動かす」コミュニケーション DM活用の最先端事例を共有

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全日本DM大賞グランプリ作品から学ぶアナログメディアの重要性

一般社団法人 日本ダイレクトメール協会 椎名昌彦氏。

グーフ 岡本幸憲氏。

第3部は、引き続き石川氏と、日本ダイレクトメール協会の椎名昌彦氏、グーフの岡本幸憲氏を加えて「心を動かすタイミングのパーソナライズ」と題して展開した。岡本氏は、全日本DM大賞のグランプリを受賞したディノス・セシールの事例で、オンデマンド印刷の実現をサポートしており、セッションはこの事例を振り返る形で進行した。

前述のグランプリ作品は、消費者がカートに入れたまま購入へ進んでいない商品をハガキに印刷し、DMとして送る「カート落ちDM」と、過去の購入商品を軸にしたコーディネートを提案する小冊子DMがある。石川氏はそれぞれについてその意図や制作背景を解説し、カート落ちDMは、カートに入れて放置された場合、30分以内に何らかのアクションを起こすことが有効であるというECのシナリオを紙に延長したもので、いずれも、購買行動の過程における意思決定のタイミングを狙った施策と話す。

「パーソナライズカタログDM」の反応として「ロイヤリティのセグメントをダイヤモンド、プラチナ、ゴールド、シルバーと分けてデータを見ると、カタログに慣れた上位層のレスポンスは当然高く、以降下がっていくと思っていました。しかし実際は、普段からカタログやDMに反応せず、自ら調べてECで購入するゴールドやシルバーといった層で反応が出ました」と振り返った。

つまり、従来からカタログで頻度高く購入する消費者はDMの有無は購買行動に影響することは少ないが、ECに慣れた消費者はパーソナライズされたDMによって態度が変容する可能性が大きい。

こうした結果を受けて石川氏は「紙をデジタルでリプレイスするのではなく、私たちがつくる紙のコンテンツをどうしたらより楽しんでもらえるかという発想でやりました。普段は紙でのコミュニケーションを好まない人でも、タイミングとコンテンツが合えば喜んでくださる。この方向性が、いま課題としているカタログ通販の未来に対するひとつのピースになりうると考えています」と話した。

岡本氏は、ディノス・セシールの事例でMAからデータを送り込み、特定のシナリオに合う対象に対して、最寄りの印刷所でDMを制作し、送るというオペレーションを紹介。紙を使ったアナログのメディアでも、デジタルと同等のスピード感で実行できることを伝えた。

また印刷メディアのアドバンテージは形状や紙質、配送方法など多様な表現手段を実現できることにあると指摘。適切なタイミングに、適切なメディアで、適切なオファーを届けることを前提に「適切なコネクションも重要です。届けたあとに何が起きるかも考えて、紙独自の機能性を意識したクリエイティブで丁寧につくることが大事」と話した。

石川氏はアナログメディアを使う意義について「一番わかりやすいのはリーチ。例えばDMは、投函でも同梱でも、結果捨てられてしまうとしても必ず手に触れる。今日届いているeメールを見る人は多くないでしょうが、DMは必ず目に触れる。そう考えると活用の間口は広いと思います」と話した。

コストがかかるからこそ丁寧に デジアナで広がるDMの可能性

JP メディアダイレクト 谷口良信氏。

第4部では恩藏氏、椎名氏、田中氏、岡本氏、奥谷氏、大角氏にJPメディアダイレクトの谷口良信氏を加え、大木氏をモデレーターにパネルディスカッションを行った。

各セッションを通しての感想を問われた恩藏氏は「全日本DM大賞の審査でも、これまでは素材やクリエイティブの良さは、一目見ればわかるものが多かった。中国の軍事思想家である孫子は、戦術は見てわかるが、戦略は容易にはわからないと言っています。ディノス・セシールのDMは見ただけでは驚きはありませんでしたが、背景を聞いてこれはすごいと感じました。ディノス・セシールの作品は、DMが明確な戦略発想のもとに展開されており、新たなステージに入ったことを感じさせてくれるものでした」と話した。

椎名氏も「今後は単発のDMだけではなく、複数のもの、Webサイトやメールとの組み合わせなど、背後にあるシナリオも勝負を分けていくのではないか」と続けた。

田中氏は「デジタルとアナログがマージしたとき、どこまで消費者に寄り添うか、そこで温度感がうまく合致したときに消費者の心が動く情報を届けることができる。その一線を見極める力が問われる」と話した。

デジタルとの比較でDMなどアナログの手法はコストがかかるという話題について大角氏は、「ハガキは1枚63円、場合によってはもっとかかります。そこでいかに予算を獲得するのか。オイシックスさんの春日部駅の事例のように、プロモーションをトータルで考えて、一部をアナログの分野に回す。テストマーケティングを重ねてベストシナリオを見つけることが大事」と指摘した。

奥谷氏は「定量的にDMを送ることで得られる効果や、ロイヤリティの高い人に限って送るなどの戦略がないまま『DMを使おう』と呼びかけるだけでは難しい。この点はデジタルから学び、論理的に説明できる環境づくりが大事」と話した。

谷口氏はDMがEメールと比較して反応率が高いというテスト事例を紹介しながら「ダイレクトメールは開封率が高く、テスト事例ではROASも高く出ている。デジタルメディアでの成果と比較しても、ダイレクトメールにトライする価値は十分にある」と話した。

セミナーを締めくくった、日本郵便 浅見加奈子氏。

大角氏からは、デジタルネイティブと言われる現代の若者にとってDMのようなアナログメディアは逆に新鮮な体験になっているという指摘もあった。また、DMに挑戦しようとする企業のマーケターへ向けて、奥谷氏からは「コミュニケーションをフラットに考え、顧客データを持っているなら、利益率の高い商品やLTVの高い顧客に絞ってトライするのが良いのではないか。丁寧にコミュニケーションをつくりこめばリターンはある。岡本さんや谷口さんなどサポートする会社もあるのでわからないことは相談すればいい」とメッセージが送られた。


お問い合わせ
日本郵便「デジタル×アナログ」プロジェクト事務局

E-mail:info_dm.ii@jp-post.jp

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