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コラム

「恐れながら社長マーケティングの本当の話をします。」ディレクターズカット

『恐れながら社長マーケティングの本当の話をします。』刊行記念/これからの広告エージェンシーはどうあるべきか(後編)

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納品してからが本当のスタート

—昔と今のエージェンシーを比較して、ワークスタイルの変化を感じますか。特にデジタル領域は、納品して終わりではなく、仕事がずっと続いていきますよね。

川上:そうですね。僕は総合代理店で20年仕事をしてきて、手離れのいい仕事をしようと教わってきました。でも、これからの時代は納品がスタートになると思っています。ずっと手離れしないということです。

納品物には世の中に対して打ち出したい何らかのプランがあって、打ち出したあとは世の中からリアクションがあり、それを受けて次の一手を考える。クライアントビジネスというのはそういうもので、1日で終わるような付き合いはありません。クライアントの社長なら、自分の会社を何十年も存続させたいと思うのは当たり前なので、そこで永遠に指名されようと思うと、納品して終わりというのはおかしいんです。

小霜:マスと違ってデジタル運用には終わりがないから、精神的なストレスも段違いだと思います。そこに関して言えば、もっとお金を取っていいんじゃないかという気がします。きちんと運用した方が成果は出るとしても、手離れのいい仕事の方が儲かるとすれば提案はしにくくなります。それがいろいろなことを歪ませている。

川上:代理店は、クライアントとずっと付き合っていくために必要なものを逆算する、ということをやってこなかった気がしますね。そのためにいくら必要なのかという話をエージェンシーとクライアントが本音ベースですると、もっと発展的な議論ができるような気がします。

小霜:広告主側にも問題があって、払うべきところで払わず、払わなくていいところで払っているという感じもあるんですよね。だから僕が広告主側にいるときは、こういう払い方、こういう利益の持たせ方が正しいんじゃないですかと言うこともありますね。

これまではテレビCM、新聞広告などと出稿する面があらかじめ決まっていました。なので、パートナーエージェンシーはクリエイティブ力で決めていました。話題にはなっても商品の売上には全然つながらないということが往々にしてあった。今は、どうコミュニケーションをするか設計し、成果につながるように運用していくことが重要という認識に変わってきています。一度コミュニケーション設計をちゃんとするエージェンシーと組んだら、それがきちんと回っていく限りパートナーは変えにくいんですよ。

川上:デジタル広告の技術の進化とともに、さまざまなコミュニケーションの設計図が描けるようになってきました。建築と一緒で、建造物をしっかり建てるには、目に見える肉の部分だけでなく、土台となる骨の部分も計算することが大事です。その土台が永続性をつくり、その上にコンテンツやアイデアといった表現が乗っていく。メディアプランは消費者から見えませんが、社員にはそこをプロとしてきちんと設計しようと言っています。

小霜:今までは肉付け勝負だったけれど、骨格の違いで勝負するということになれば、それができるパートナーを選ぼうという考えになりますよね。

川上:その方が、安心して仕事をお願いできると思うんですよね。これからは、骨たるコミュニケーション設計も、肉たるクリエイティブも、きちんと計算できるプランナーが重宝されていくのだろうと思います。なおかつ表現が強く、その理由が説明できることも大事です。

社内では「クライアントの社長に指名されるような人になれ」という話もしています。クライアントの社長には、悩みを抱えられている方が本当に多い。だから社長が悩んだ時に一番に連絡をもらえて相談されるような、長期的な関係を築ける人は強いです。クライアントの成長と、自社の成長の両方を考えた提案ができる人が増えていくよう、育成計画を立てていく必要がありますね。

【登壇者】

小霜 和也 氏
『恐れながら社長マーケティングの話をします。』著者

1962年兵庫県西宮市生まれ。1986年東京大学法学部卒業。同年博報堂入社。
コピーライター配属。1998年退社。2020 年現在、株式会社小霜オフィス、no problem LLC. 代表。2018年4月より、内閣府政府広報アドバイザー。クリエイティブディレクター/コピーライターとしてマス・Webを統合する広告キャンペーンに携わる一方、幅広い企業のマーケティングアドバイザーとして従事。

 

川上 宗一 氏
電通デジタル 代表取締役社長

1998年 東京大学法学部卒 電通入社。マーケティング・プロモーション局、営業局に所属し、自動車、消費財、情報通信、エンターテインメント企業を担当。2019年から電通デジタルに参画。人を基点としたデータドリブンマーケティング「People Driven Marketing」を推進。執行役員兼アカウントプランニング部門長、アドバンストクリエーティブセンター長を経て、2020年より代表取締役社長執行役員に就任。

 

恐れながら社長マーケティングの本当の話をします。

<目次>

はじめに


第一章 社長、まずはマーケティング部をなくしましょう
・マーケティング=価値の創造
・マーケティングの4P
・総力戦の時代
・マーケティング部を宣伝部に戻す
・貯めるべきもの3つ「直感力、共有知見、データ」
・忖度のない体質がマーケティング体質


第二章 「名物宣伝部長」はどこいった
・管轄外の責任を負わされる宣伝部長
・広告業界の構造的問題
・宣伝部とエージェンシーの深まる溝
・CMOに「4P」全部預けられるのか?
・社長と部長はパートナー


第三章 御社は「ミドル・ファネル」作れますか?
・ミドル・ファネルから作る
・外してならないファネルだけが外れてる
・トップ、ミドルのクリエイティブを寸断させない
・社長は「トータルCPA」を見る
・部門「間」がますます重要に


第四章 やっぱし事件は現場で起きている
・制作現場の実状
・戦略、メディア設計、クリエイティブの順に
・現場の忖度で得体の知れないものができあがる
・社長が「おかしい」と感じたら、何か起きている


第五章 「Vision」の本当の話をします
・時代変動の中で自分は何者か再点検
・Visionを間違うと正しいマーケティングはできない
・Visionの話(つづき)
・Values
・オレのCI


第六章 テクノロジー変わるマーケティング思想変えるビジネスモデル変える
・新たなマーケティング思想、カスタマーサクセス
・競合より顧客の動向を見て成功する
・広告という神話
・顧客を手放さないサブスクリプション
・商品は優れていても、ビジネスモデルで負けていないか
・テクノロジーが新しいビジネスモデルを閃かせる


第七章 不買運動が起きてます!
・SDGsはイケてる
・誰かを変えるCSR、自分を変えるCSV
・ESG投資で変わる企業の戦い方
・Belief Driven
・次世代の動き
・SDGsはこれからの参加資格
・IRで商品Promotionの土壌をつくる


第八章 社長、さっき言いかけたことですが


おわりに