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ビジネスのチャンスは常に人々の“隠れ不満”の中にある

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2020年1月20日に『ほんとうの欲求は、ほとんど無自覚』出版記念イベントを開催。その中で、著者の大松孝弘氏が書籍の内容について講演を行った。本記事ではその内容の一部をレポートする。

「ほんとうの欲求は、ほとんど無自覚」
著:大松孝弘、波田浩之
発行:宣伝会議

本日は、書籍のエッセンスを少し、お話したいと思っています。

書籍のタイトルが『ほんとうの欲求は、ほとんど無自覚』ですが、これはつまりインサイトのこと。インサイトとは”人を動かす隠れた心理“です。

「こういう商品どうかな?」と問われる、あるいは実際の商品やサービスを目の前に見せられると、「そうそう! こういうのが前から欲しいと思ってたんだよね」という反応になる時には、多くの場合、本人は自分がそういったものが欲しいとは自覚していません。目の前に現れると「前からほしいと思っていた!」と言うけれど、もともとは気づいてないような欲求、それがインサイトなのです。

 
書籍で紹介した、そんなインサイトの事例から、ひとつ紹介します。
マクドナルドの『サラダマック』についてです。

これはもう10年位前になりますね。当時マクドナルドの業績が悪かった時にマーケティングリサーチが行われて、「どういう商品があればマクドナルドに来てくれますか?」「どうしてマクドナルドに来てくれないんですか?」を聞いたところ、「サラダみたいなものがあれば」「いい歳してマックなんて行かなくなった」などの意見が出ました。

こうした意見を参考に、野菜を使ったヘルシーな『サラダマック』をつくりました。テレビCMなどプロモーションも大規模に行いましたが、これが不振に終わってしまいます。

「ヘルシーなものが食べたいからマクドナルドに行かない!」という不満に対して『サラダマック』をつくったけれどうまくいかなかった。それとは反対に、その後に発売された、ヘルシーとは真逆の『クオーターパウンダー』『メガマック』はヒットしました。

後ほど説明しますが、実は「たまには食べ応えのあるハンバーガーにかぶりつきたくてマクドナルドに行っているのに、マックにはそういうメニューはない」という不満が消費者には隠れていたのです。

この事例から何が分かるか。それは不満というものには「表面的な不満」と「無自覚な不満」という2種類があって、本当の欲求というのは、この「無自覚な不満」だということです。

 
表面的な不満を解消したところで、消費者は喜びません。なぜなら、それは本当には欲していないことだからです。そのため、無自覚な不満をどうやって捉えていくかが重要になります。

無自覚な不満を導くにはどうすればよいのか。『サラダマック』の例からも、ただ「あなたの不満は何か?」と聞いても表面的な答えしか返ってきません。ですから、商品を離れて「人間を見に行こう」という姿勢が重要になります。

「人間を見に行こう」と、具体的にはどうするのかというと、ターゲットの興味・関心に寄り添うということです。ターゲットの興味・関心に寄り添うということは、つまりはお気に入りを探すということになります。

「お気に入りの理由から、無自覚な不満を導き出す」。これこそ本当に人が求めているものを明らかにするエッセンスです。最終的に見つけたいのは不満なのですが、お気に入りに感じている価値を理解することが、逆説的のようですが、本当の不満を見つけることにつながります。

マクドナルドのことを何とかしたい状況なので、ついマクドナルドの人はマクドナルドのことを聞いてしまう。しかし、そこから一旦離れて、ターゲットの興味・関心は何だろうと考えてみるのです。

マクドナルドに興味はないけど、食生活に興味ない人はあまりいない。では、いま食生活の中でお気に入りのものがあるのか、を探っていくのです。

さっきの例になぞらえると、普段は健康に気を遣った食生活をしているけど、たまに死ぬほど肉料理を貪るということが、調査の中のある1人の方のお気に入りのことだった。その理由を深っていくと、ヘルシーな食生活で溜まったストレスを思いっきり発散できるからと言うのです。

そのストレス発散の価値から見たときに、「今のマクドナルドってどんな感じでいまいちなのか?」と聞いたときに出てきた不満がこれです。“たまには食べ応えのあるハンバーガーにかぶりつきたいのに、マックにはそういうメニューはないですよね?”。このインサイトにたどり着けたからこそ、『クオーターパウンダー』『メガマック』はうまくいったのです。

企業は消費者インタビュー参加者に謝礼などを支払うので、消費者は気を使っていろいろと答えてくれます。しかし、その企業・商品に対して興味がない人にインタビューをするというのは、企業の姿勢としてとても傲慢なこと。興味ないけど、根掘り葉掘り聞かれる。だけど、謝礼をもらえるので頑張って表面的な不満を答える。

これではインサイトにたどり着けません。

ターゲットの興味・関心に寄り添うということで、ターゲット側の嬉しいことに、企業側から寄り添っていかなければ、本当に人が求めていることなんてわからないのです。

マクドナルドを離れてターゲットの食生活のお気に入りの理由を明らかにし、明らかにした理由から不満を導きだすという流れ、これがとても重要です。整理するとこんな感じになります。

 
今、多くの企業で行われているマーケティングというのは左側です。こういったことが多く行われていて、非常にもったいないなと思います。右側のように、お気に入りのことから、その理由を明らかにして、まずは価値を明らかにしていく。この流れが重要なのです。

〈目次〉

序章 いま“ほんとうの欲求”は、本人も自覚できていない
第1章 みんな“見当違いの欲求”に応えようとしている
第2章 “ほんとうの欲求”の見つけ方はシンプル
第3章 4つの窓から見えてくる“ほんとうの欲求”
第4章 なぜ“ほんとうの欲求は、ほとんど無自覚”なのか
第5章 “本人も気づいていない、ほんとうの欲求” それがインサイト
第6章 インサイトを明らかにする手法
第7章 インサイトからヒットを生み出す方法論


書籍案内
新刊『ほんとうの欲求は、ほとんど無自覚


チャンスは常に人々の「隠れ不満」の中にある。いま「ほんとうに欲しいもの」は、消費者本人も自覚できていません。社会が成熟した現代に重要なのは、「本人も無自覚な不満」を理解することです。本書では、この「無自覚な不満」を起点にして、「ほんとうに欲しいもの」を見つけるシンプルなフレームワークを紹介します。