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“SNSとは、人である。” 想像力とソーシャルメディアマーケティング

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宣伝会議では、マーケティング・コミュニケーション活動におけるメディアに焦点を当て、その活用方法についてまとめた『新・メディアの教科書2020』を4月30日に刊行する。本記事では、その中の一部を掲載。ソーシャルメディアを活用する企画を多く行ってきたTBWA\HAKUHODOの荒井信洋氏が、SNSの特徴、活用方法について解説する。

SNSは、広告枠ではない
SNSは、企業のモノではない。

はじめに、ソーシャルメディアマーケティングにおいて、絶対に意識しなければならないことがあります。それは、「SNSとは誰の場所であるか?」ということ。

結論から言えば、SNSは宣伝に携わる私たちや企業の場所ではありません。「人」の場所です。単なる「メディア」という枠ではないのです。

その長い歴史から、広告がインサートされることが文化として根付いているマスメディアと異なり、SNSにとって企業はいわば植民地化を狙う開拓者。

その投稿は、広告だろうがオーガニック投稿だろうが関係なく、好きなことを話題にし、コミュニケーションを楽しむ自分たちのタイムラインを脅かす存在なのです。脅かすという表現すらも、まだ甘いかもしれません。タイムラインを眺めるユーザーを脅かす以前に、一瞬で部外者と判断され、その存在を画面の外に追いやられてしまうというのが現実です。

そんなSNSと上手に付き合うには、まず広告枠としてではなく、「人」としてこの新しいメディアを捉えるべき。コミュニケーションの相手を想像することがソーシャルメディアマーケティングの基礎であるとも言えます。

ただ、一点誤解して欲しくないのは、ここでいう「人」とは、決して単なるデモグラフィック属性で捉えたプロフィール情報ではないということ。無数のコミュニティーが存在し、シェアされる情報も、趣味趣向も、そもそもSNSの使い方すらも異なる人々。そこでの行動や生活をしっかりと見極め、広告主からの投稿にどんな気持ちになるか、想像し尽くすことで初めて上手に付き合える存在といえます。

当記事では、SNS上のコミュニケーションにおいて、誤解しやすい点について説明していきたいと思っています。

SNS動画は5秒が勝負
その鉄則、間違いです

デジタルビデオというマーケティング手法の普及に伴い、あらゆるプレゼンで登場するキラーフレーズが誕生しました。「デジタルビデオは冒頭5秒が勝負です」。

確かにオープニングから視聴者の興味を喚起して、スキップされないためにテレビCMと考え方やつくり方を変えることは、当然機能するテクニックです。しかし、私はそんなテクニック論に疑問も持っています。なぜなら、SNSでは5秒すら楽観的だと考えているからです。その理由は、SNSのユニークな性質にあります。

SNSというソーシャルメディアとテレビやYouTubeなどの動画メディアの大きな違いは、速度です。テレビもYouTubeも動画のためのメディアであり、そこは1秒に1秒分の情報が再生されます。しかしSNSは、全く異なる時間軸の特性を持っています。それは、情報の速度がユーザーの指に委ねられているということです。

自分がTwitterを眺める時を想像してください。4つ程度の投稿が表示される画面を、物凄いスピードでスクロールしていることでしょう。時には、あまりの速さで過ぎ去り、思わず気になった投稿へとタイムラインを遡ることもあると思います。動画をSKIPするまでの実際の時間は、メディアで規定されておらず、すべてユーザー次第。そんな中、冒頭5秒で戦うというデジタルビデオの鉄則は甘いと思いませんか?

5秒なんて余裕はなく、勝負は限りなく0秒に近い1秒目。私はそんな悲観的な視点で、企画に当たるようにしています。

興味を持つか持たないか以前に、1秒目を見るか見ないかという厳しい戦いが待っており、そこで敗れれば、テレビCM中にお手洗いに行くといったお茶の間の行動より、もっと残酷な広告に対する態度がSNSには待っているのです。強制視聴型ビデオ広告のSKIP機能なんてなくても、指1本で全てがSKIPされてしまう。それがSNS。だからこそ、SNSとは人であると冒頭で書いたように、1秒目で無意識のうちに見たいと思わせる直感的な気持ちづくりが全てだと考えています。

※本記事の続き、他のメディアについての記事に関心がある方は、ぜひ『新・メディアの教科書2020』をご覧ください。

TBWA\HAKUHODO
クリエイティブディレクター
荒井信洋氏

SNSのエンゲージメント企画からキャリアを開始したソーシャルネイティブ・クリエイティブディレクター。
“体験をコピーライティングする”企画力を武器に、国内外140以上の広告賞を受賞。2019年クリエイターオブザイヤー メダリスト。