コラム

「ダメ出し」から「ホメ出し」へ コピーライター思考の実践

リーダーシップのある、褒め言葉を贈る。

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佐藤雅彦さんをご存知でしょうか?
ポリンキーなどの大ヒットCMを手がけ、
だんご三兄弟やアルゴリズムたいそう、
ピタゴラスイッチなど
「つい見てしまう」「抗いがたい」
作品の数々を作られてきた方です。

実は社会人三年目のときに
佐藤先生のもとで
一年だけ修行する機会を得たのですが、
このときの経験がその後の
ぼくの人生を変えました。

あるCMの、絵コンテを見せたときのこと。
佐藤先生が
「澤田さんは頭の中で映像が流れていますね」
と言ってくださったんです。
どういうことかというと、
確かにぼくは企画を考えるときに、
頭の中で映像を一回完成させて、
それをコンテという設計図に落としていたんです。
でも、佐藤先生がいうには、
脳内で映像が流れない人の方が多いと。
ぼくはそれを知らなかったんです。

だからその日から、
「この道を極めよう!」と決めて、
映像を脳内で流すことを
意識的に強化しました。

今ぼくは世界ゆるスポーツ協会という団体で
新しいスポーツをつくっているのですが、
アイデアを構想する段階から、
そのスポーツシーンを脳内で流すようにしています。
すると、そのスポーツが、
運動が苦手でも楽しめるかどうか、
笑いに満ちているかどうか、
事前からシミュレーションできるんです。

で、これは、
15年前に佐藤先生に
「澤田さんは頭の中で映像が流れていますね」
と褒めていただいたからこそ、
自分の中で伸ばせた強みなんです。

これは、
「リーダーシップのある褒め言葉」
と言えます。
つまり、佐藤先生は、
その言葉によって僕を
いい未来へと導いてくださったのです。

さて、いつものように、
キャッチコピーを参考にしながら、
この話を掘り下げていきます。

コピーにはいくつかの種類があります。
キャッチコピー、ボディコピー、タグライン。
でもその中には、
人に対して強烈なリーダーシップを
発揮するコピーがあります。
それをぼくは「リーダーシップコビー
と呼んでいます。
例えばこちら。

地図に残る仕事。
(大成建設)

名作中の名作ですね。
このコピーは外向けにも機能しつつも、
インナー(社員・関係者)向けの
コピーともいえます。
今自分がやっている仕事は、
建物を建てているだけではない。
中長期的にこの星にのこる、
地図を更新する仕事をしているんだ。
という大儀が、端的に表現されています。
もしぼくが大成建設の社員だったなら、
この言葉に誇りをもち、
この言葉にリードされる形で
仕事をするはずです。

It’s a SONY.
(SONY)

こちらも、歴史に残る
リーダーシップコピーだなあと思います。
「これはIt’s a SONYだね!」
「確かに!この発想は他社にはない!」
というように、
この言葉が羅針盤となり、
SONY社員や関係者を、
It’s a SONYな未来へと
引っ張ってくれたのではないかと
容易に想像ができます。

最後にひとつ。
圧倒的にリーダーシップのある
コピーをご紹介します。

目の付けどころが
シャープでしょ。
(SHARP)

いやもう完璧…。
すごいですよね。
これこそ会議中に
「目の付けどころがシャープだから、
これでいきましょう!」
「目の付けどころがシャープじゃないから、
もうちょっと考えましょう!」
と、経営や事業や開発を進める上での
完璧なリーダーシップをとれる言葉です。

だからこそ、
SONYのスローガンが「make.believe」、
SHARPのスローガンが「目指してる、未来がちがう。」
に変わったとき、
ぼくは広告界のすみっこから
勿体ないなと思いました。
社の運命を左右するスローガンを変えるからには、
それ相応の理由があったのでしょうし、
言葉を一新したことによる
プラスの効果も多々あったのでしょう。
ただ、抽象度を増した分だけ、
リーダーシップが弱まりそうだなと…。
(偉そうにごめんなさい。それぐらい以前のコピーが好きでした)

さて、ホメ出しの話です。
褒め言葉には多様なパターンがあるのですが、
その中のひとつがここまで説明をしてきた、
リーダーシップのある褒め言葉です。
では、どうやったら、
この言葉を意識的に贈ることができるでしょうか?

やっぱり、
相手を惚れレンズ越し徹底観察する
ことが一番の近道なのですが、
そのときポイントになるのが、
相手の中に「道」を見出すということです。
剣道、花道、柔道、
などに代表される「道」のことです。
どういうことでしょうか。

ある結果に向かって進むとき、
人は、その人らしい、
プロセスを踏みます。
それが「道」というものです。

例えばぼくはCMをつくるという結果に向かって
「頭の中に映像を流す」プロセスを踏みますが
「象徴的なワンシーンをつくる」人もいれば、
「映像ではなく言葉で組み立てる」人もいます。
それぞれの道があるわけです。
ある種の「癖」ともいえます。

で、リーダーシップのあるホメ言葉とは、
その道に光を当て、
成長を促すものなのです。

リーダーシップコピーがあったからこそ、
大成建設の社員の皆様は
「地図に残る仕事道」を極めているし、
SHARPの社員の皆様はかつて
「目の付けどころがシャープでしょ道」を
極めていたわけです。

例えば子どもがサッカーでシュートを決めたときに
「結果」にだけ注目すると、
「いいシュートだったね!」と褒めることになります。
もちろんそれもいいですが、そこで満足して、
成長が止まってしまう場合があります。

できれば、何故そのシュートにいたったのか、
にスポットライトを当てるべきなのです。
「だれよりも遅くまで練習を繰り返した」など、
そこには何らかの「道」が必ずあります。
流派があります。
そのスタイルを、褒めるのです。

「だれよりも遅くまで練習するのは、中々できることじゃないよ」
そうすると、褒められた子は、
その道をさらに極めようとするでしょう。

そして、その道が、
相手が自分では気づいていないけれど
伸びしろがありそうであればあるほど、
褒めるべきなのです。
道とは、本人がその上を歩いていることを
自覚してこそ一層追求できる
のです。
それは、いつだって分かりやすい道とは限りません。
未舗装の場合だってあります。
だけど、その先に綺麗な道が伸びていく
イメージをあなたがもてれば、
「あ、そこに道ができはじめてるよ!」
と褒めてあげるべきなのです。

すると、その言葉によって、
相手がその道を認識し、
意識的にその上を歩こうとするようになる。
相手を導いていくからこそ、
リーダーシップのある褒め言葉なのです。

ですから、目の前の相手を褒めるときに、
この方は何の道の、プロなんだろう
という目線で観察することが大切になります。
どんな結果を積み重ねてきたのか。
(試験で一番になったとか、バイトを三年休まず続けた、など)
そこに至るまでに、どのような過程があったか。
癖が働いたか。
ぼくがこれまで観察してきた限りだと、
人は3歳ぐらいから、何らかの道を発揮すると
感じています。
道は、すべての人の中にあるんです。

そして、今から大切なことをいいますが、
そのときにあなたの「ホメ経験」が効いてきます。

コピーライターは、
様々な企業や商品を見つめてきているからこそ、
他社にはない魅力としての
「地図に残る仕事」を抽出できるのです。

佐藤先生は、
数多くのコピーライター やCMプランナーを知っているからこそ、
「澤田さんは頭の中で映像が流れていますね」
という小さな実績(外れ値)に気づいてくださったのです。

そう、ホメ経験値が上がれば上がるほど、
相対的に目の前の相手を観察できるので、
「道」をズバッと探しあてることができるのです。

つまり、リーダーシップのある言葉を
相手に贈るためには、
だれもが「ホメ道」を極める必要があるのです。
でも、どうやって?
そのためにこの連載があるのです。
はい。(宣伝)

この連載もいよいよ折り返しです。
次回は、より具体的に、
ホメ出しの表現についてお話します。
また来週!

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