もう「嵐」を超えるグループは登場しない? “CMキング”嵐が広告界に与えた影響

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「ポスト嵐」は出てくるのか

こうした「『関係性の快楽』戦略」について、ジャニーズ事務所は時代ごとに進化したアイドルを送り出してきたといえる。

まず、アイドルを単体ではなくグループで売り出す点においては、1980年代以降に注力し始めた。例えば光GENJIに代表されるグループアイドルを登場させ、グループ内における個別メンバーのファン同士の交流を活発化させてきたのだ。

ただ、当時は、グループごとに親衛隊が存在し、その間では交流が乏しかった。それが、1990年代後半から2000年代になると、先に述べたSMAPが積極的に「先輩」としての役割を担い、グループ間での「タテの関係性(先輩後輩関係)」をつなげていったのである。

そして嵐においては、むしろ役割分担を明確化しない、フラットな「ヨコの関係性」の「わちゃわちゃ感」を楽しむ段階へと至ったという点で、まさにその「完成形」に到達したといえるだろう。

嵐は「関係性の快楽」戦略の完成形

こうした「『関係性の快楽』戦略」は、端的に言えば、芸能人同士が仲良くすればそのファン同士も仲良くし、その分だけマーケットの拡大が期待できるというもの。今日では、ジャニーズ事務所のアイドルに限らず、CMにおいても多く見ることのできる手法となっている(男女複数の人気俳優が登場するJRAのCMなどもその好例である)。

論理的には、マーケットを無限に拡大できそうにも思える戦略だが、果たして今後はどうなっていくのだろうか。本当に、無限にファン層は拡大していくのか、それともどこかで分断が生じてくるのだろうか。

この点において、嵐をその「完成形」と評したのは、実はその戦略にも転換がみられつつあるからである。

2020年1月にデビューしたジャニーズ事務所の新しいアイドルグループ、Snow ManとSixTONESの売り出し方にはその点が色濃く表れており、同じタイミングで登場したからこそ、両者の間で注目されているのは、「わちゃわちゃ感」のあるハーモニーというよりむしろ、さまざまな指標(MVの再生回数やCDの売り上げなど)における「バトル」となっている。

またそのビジュアル面においても、あたかもK-POP歌手のように、親しみやすさというよりも“完成度の高さ”を追求しつつあるようにも見える。その点も相まって、「バトル化」が激しさを増しているように思われる。

「嵐の前にSMAPあり」、でも「嵐の後には嵐なし」

このように考えてみると、嵐が広告界に与えた影響として、CMに複数の芸能人が登場するような「『関係性の快楽』戦略」については、その組み合わせ方のバージョンの違いはあれ、広く長く定着していくものと思われるし、今後もそのようなCMを我々は数多く目にすることとなるだろう。

だが一方で、アイドルの変遷を考えた場合に、「『関係性の快楽』戦略の完成形」に到達してしまったならば、嵐を超える「ポスト嵐」としてのアイドルグループはもはや登場しないのかもしれない。その点においては、「嵐の前にSMAPあり」だが「嵐の後には嵐なし」なのかもしれない。

撮影/工藤博司

辻 泉(つじ・いずみ)
中央大学 文学部 人文社会学科 社会情報学専攻教授

専門は、文化社会学とメディア論。各種ファン文化のフィールドワークと、メディア利用の実態についての調査を継続中。
主著に、『鉄道少年たちの時代―想像力の社会史』(2018年、勁草書房)、『メディア社会論』(共編、2018年、有斐閣)他多数。

 
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