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谷口マサトはやってることが奇天烈で無茶苦茶すぎだ
谷口マサトとは特に仲が良かったわけではない。歳もひとまわりぐらい違うし、一緒に仕事をやっていたわけでもない。ただ、私は彼が好きだった。人柄はよく知らないので人間的にではなく、彼の発想とそれに基づいた仕事が好きだった。でも事務的ながらたくさん言葉を交わした感じからして、人柄もいい人物だったと思う。奇天烈な表現をするのとは反対に、礼儀正しく義理堅い男だった。
多くの人同様、私が彼を認識したのは例の「大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた」だ。今もこのタイトルで検索すると記事が出てくる。2013年5月とあるからもう7年も前。知らない人はいないと思うが念のため説明すると、映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のブルーレイ発売を告知する広告企画だった。それを、熟女ブームなのでと大阪のオバチャンとのデートのレポートとして記事にし、その中で「トラ繋がり」というものすごく強引な文脈で『ライフ・オブ・パイ』の内容を紹介するものだった。
やってることが奇天烈で無茶苦茶すぎだ。これも一種の広告だが、こんなやり方は見たこともなかったので大いに気に入った。何より、手間をかけている。あとで聞いたのだが、大阪のオバチャンをオーディションでちゃんと選び、イケメンを連れて行って大阪ロケを敢行したのだ。バッカじゃないの?と手を叩きながら読ませる感覚が好きだった。
